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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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ヤバい絵面


 クーマの美少女化。TSって奴か? いやTSって呼んでいいのかこれ?


 なんかツッコミどころしかないのだが、戦いたいというのなら戦おうじゃないか。元々クーマを鍛えるという約束だったしな。


 俺の獲物はもちろん剣。クーマは……せっかく人型になったというのに、武器を使わないようだった。女性っぽい見た目の指先から、クマのような爪が伸びている。


 いや、だからさぁ。せっかくの美人なんだからさぁ。もうちょっとこだわろうぜ色々と。


 美人からあんな爪が生えているのはもう怪物とかモンスターといったジャンルなんだよなぁ。萌えやときめきより恐怖やら違和感やらが先行するぜ。


 しかし制作者たちにその自覚はないようで。


「よーし! やってしまえクーマ君!」


「面白そうな情報(データ)が取れそうですよね」


「ん。女たらしに天罰を」


 ノリノリで囃し立てるシャルロット、メイス、ミラだった。一人も俺の応援をしてくれない辺りに人徳のなさが透けて見えるよな。やっぱり俺が『国王』とか無理じゃね?


 まぁそんな感じでバトル開始。ぐだぐだな流れの中で。とはいえクーマを鍛えるという目的があるからな。真面目にやらないといけないだろう。


 と、俺は気合いを入れているというのに。


『……あはーん』


 くねっ。と、前世のグラビアアイドルみたいなポーズをするクーマ(見た目は美女)だった。どうせシャルロットの入れ知恵だろうな。


『うふーん』


 くねっ。と、さらに悩殺ポーズ(?)をするクーマだった。


「ふっ! これでアーク君は攻撃できまい!」


「女に甘い女たらしですからね」


「ん」


 自信満々なポンコツたちだった。


「……真面目にやれ」


 クーマに対し、一閃。


 ちょっと本気で剣を横に()ぐ俺だった。


『ぐげらぼらっ!?』


 俺が攻撃しないと本気で思っていたのか、無防備に一撃を食らうクーマだった。


 斬った感触としては、やはり人より岩に近い。


 目にもとまらぬ速さで横に吹っ飛んだクーマは、上半身と下半身がサヨウナラしながら飛翔を続け、大木の幹に激突。バラバラになってやっと止まったのだった。


「うわぁ……」


「うわぁ……」


「うわぁ……」


 ドン引きするポンコツ三人娘だった。


「い、いやアーク君。容赦なさ過ぎでは?」


 こっちは真面目に鍛えようとしているのに、ふざけるのが悪い。なんだ『うっふーん、あっはーん』って。


「ま、まさか手加減無しとは……これは情報(データ)を更新しませんと……」


 そのデータ、一回破棄した方がいいんじゃないか?


「ん。鬼畜」


 いや鬼畜って。むしろ美女相手なら手加減すると思われていたのがビックリなんだが? それなら美女(師匠)との真剣勝負なんてできないだろうが。


「……むふふ」


 なんか奇っ怪な笑い声を上げる師匠だった。こわい。





「ん。核は無事。これなら治る」


 クーマが激突した木の幹周辺に移動したミラが、クーマの生首(美女)を持って戻ってきた。うーんグロテスク。なのにコメディチック……。


「おぉクーマ君、変わり果てた姿になって……」


 演劇っぽく『よよよ……』と泣き崩れるシャルロットだった。こっちもコメディチックだな。


 そもそもお前さんたちが悪乗りした結果なんだが、その辺の自覚あるか?


「でも、クーマ君もノリノリだったし」


「こちらも貴重なデータが取れましたし」


「ん」


「……そうじゃなくて、まずはクーマに無茶をさせてごめんなさいと謝らなきゃだろう?」


「「「……調子に乗りすぎました。真に申しわけございまいません」」」


 クーマの首(美少女)を地面の上に置き、ぺこりと頭を下げる三人だった。


 高貴な貴族令嬢なのに頭を下げられるのは素晴らしいことなんだが……対象が生首なんだよなぁ……。正直、どっかの新興宗教っぽい光景だった。




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