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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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防御施設


「そういうことを言っていると、巻き込まれるんだぜ?」


 ラックの野郎に苦言を呈する俺だった。


「まぁ、だろうな」


「うむ、だろうな」


 なぜか深々と頷くラックと師匠だった。え? 王都での政変なのにこっちが巻き込まれるのは確定なの?


「そりゃお前、ここには近衛騎士団長とアークがいるんだぜ?」


「しかも私やアークだけではなく、『軍師』として名を馳せたラックもいる。王都からしてみれば厄介この上ないだろうな」


 いやいや、そんな厄介なんてこともないのでは? 俺たちは兵を率いているわけでもないのだし。王都からすれば不穏分子にすらならないはずだ。


「自覚のねぇ奴だな。団長はテキトーに放り込んでおけば騎士団一つ軽々と潰せるし、アークは考えながら投入すれば騎士団一つくらい潰せるだろう」


 騎士団って。いやいや騎士団って。


「お前は俺を何だと思っているんだ?」


「バケモノに育てられた、バケモノ」


「ひでぇ言いぐさだ」


「事実は時に残酷なものなのさ」


「エリザベス嬢とイチャイチャしすぎて冷静な判断ができなくなったんじゃないか?」


「その理屈だと、アークは女をたらしすぎて冷静な判断ができなくなったんだな」


「俺がいつ女をたらしたよ?」


「呼吸をするように」


「呼吸をするように!?」


 俺とラックがいつものアホなやり取りをしていると、師匠が呆れたようにため息をついた。


「私たちはもちろんのこと、エリザベス嬢たちも向こうからすれば厄介だろう。血筋は間違いなくこの国の上位貴族で、エリザベス嬢などは王家の血を色濃く継いでいる。万が一他国に流れてしまえば大変だ。もし生きていると知られれば騎士団を派遣しても不思議はない」


 そんな血筋のご令嬢方を追放して野放しにした王太子、率直に言ってアホなのでは?


「はぁ、騎士団ですか……」


 騎士団が来ても師匠が突撃すれば勝てるんじゃないっすか? という指摘は飲み込んだ俺である。さすがに面と向かってバケモノ扱いする蛮勇は持っていないのだ。


「騎士団が来るなら、防御施設くらい作った方が良さそうですねー」


 当たり障りのない提案をしてお茶を濁す俺だった。師匠はともかく、他の女性陣が避難する施設は必要だからな。師匠はともかく。


「うむ、防御施設か。それはそれでありだな。騎士団はもちろんのこと、いつ魔物が襲撃してくるかも分からないのだから」


「あー……」


 魔物たちはシルシュのドラゴン・ブレスが残した濃密な魔力を忌避してこの辺には近づいてこないらしい。が、その効果がいつまで続くかは分からないからな。魔物の襲撃に耐えられる防御施設を作っておくのは悪くないな。自分の提案を褒めるのもアレだが。


 魔物が襲撃しても俺や師匠がいるのだから問題はない。……とは、言い切れない。なにせ魔の森で生き抜けるほどの魔物だからな。俺や師匠を別の場所に引き寄せている間に――みたいな『狩り』を仕掛けてきても不思議ではないのだ。


「防御施設を作るなら……あの岩山ですかね」


 かつてシルシュが寝床にしていたという、横に長い岩山。嘘かほんとか倒れた世界樹が石化したものらしい。


「うむ。高いところに陣取るのは定番だな」


 高所であれば敵の動きを読みやすいし、弓矢も遠くまで飛ばすことができる。それに敵が攻め込んできたとしても登山を強制する形になるからな。勢いは落ちるし、動きも鈍るので狙い撃ちやすくなる。ついでに言えば湧き水があるので水利も問題ない。


 ちなみに騎士の武器は剣がメインだが、遠距離攻撃の手段として弓矢の訓練も欠かしてはいない。


(あ、でも弓がないか)


 これが遠征とかならちゃんと準備してあるのだが、急に決まった追放と魔の森への送迎だからな。さすがに弓は持ってきていないのだ。師匠なら空間収納(ストレージ)に突っ込んであるかもしれないが。俺とラックには弓矢を収納しておくほどの余裕はない。


 あとは「こんなこともあろうかと!」シャルロットが持ってきた可能性は――いくらなんでもないか。それにもしも空間収納(ストレージ)に入っていたとしても、武器の素人が持ってきた弓をどれだけ信頼できるのかという問題もある。なにせ支柱無しのケープテントを買っちゃうような子だし。


「師匠は弓を持ってきてますか?」


「常在戦場だからな。自分の弓は空間収納(ストレージ)に入っているさ。だが、アークたちの分はないし、軍勢を相手にするとなると矢の数が心ともないな。幸いここは森なのだし、あとで自分たちで作るとしよう」


「ま、そうなりますか」


 騎士学校では訓練の一環として弓矢の自作方法も習得させられたし、近衛師団に配属されてからも予算の都合で矢を製作することは多かった。さすがに弓本体を作製したのは騎士学校だけだが……完全な未経験よりは使える弓矢を作れるはずだ。


(……あ、竹があれば和弓を作ることもできるか?)


 前世でも本当に自作したことはないが、知識として和弓の作り方は知っている。


 いずれは食糧確保のため森に入らなきゃいけないし、ついでに竹っぽい植物がないか探してみるとするかね?






ちょっと執筆できない環境に行くので、二日ほど更新お休みします

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