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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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巻き込まれたくないでござる




 こうして誕生したのが首:クーマ。胴体:ボンキュッボン。であった。


 奇妙奇っ怪。

 奇奇怪怪。

 もう妖怪とかそっち方面なんだよなぁ。


 じぃ、っと。自分たちが起こした惨状を見つめるシャルロット、メイス、ミラ。


「……さすがにない」


「ないですね」


「ん」


 うんうんと頷くポンコツ三人娘だった。よく考えてから行動しましょう。


「……やはり顔も美少女にするべきだね」


 そういう問題か?


「ミラさん、できますか?」


 突っ込もうぜメイスさんよぉ。


「ん。顔の造形を変えるのはできる。でも、美少女顔を作るのは難しい」


 変えてやるなよ。クーマのアイデンティティが……。


 俺のツッコミはもう間に合わない。


「粘土細工で美少女のマスクを作るようなものだからねぇ」


「顔だけは私たちで作りますか」


「ん。粘土は……この辺にある」


 探知魔法で粘土層でも見つけたのか、ゴーレムを使って地面を掘り始めるミラだった。


 え? 今から粘土を採掘して、顔を作るの?


 時間掛かりそうだなぁおい。


『土人形作りか。懐かしいのぉ』


 ちょっとウキウキしながらポンコツ三人娘に合流するシルシュだった。あいつの場合人類が土偶やハニワを作っていた頃を懐かしがっていても不思議じゃないんだよな……。


「……とりあえず、こっちは真面目な話をするか」


 三人組+ドラゴンについて行けてない俺、ラック、エリザベス嬢、そして師匠が地面に座って顔を合わせる。


「師匠は王太子とケンカしてクビになったって話ですが、本当ですか?」


「ははは、嘘に決まっているだろう?」


 まぁさすがにないか。ケンカになったら今ごろ王太子のクビと胴体は『スパーン』だからな。


「……何でまたそんな嘘を?」


「そりゃあもう、ご令嬢たちはただでさえ追放されて心労が溜まっているのだから、さらに心配させる必要もないだろう? 上位貴族なのだから家族が政争に巻き込まれるのも確定的だしな」


「あー……」


 シャルロットも妹さんのことを心配していたものな。師匠なりに気を使ってくれたのか。


 ……この場には追放された側であるエリザベス嬢もいるのだが、いいのだろうか? まともそうだから話しても大丈夫という判断か?


 うむ、と師匠が頷く。


「一応情報共有をしておくか。――あのアホ太子が政変を起こしたみたいでな。国王陛下は軟禁。近衛騎士団も王城から閉め出され、今は第一騎士団が王城の警備に当たっているらしい」


「へぇ」


 と、感心したような声を上げたのはラックだ。


「俺とアークを魔の森まで追いやったのは偶然だとしても、その状況を利用して団長まで王都から離れさせたのは見事な手腕ですね。団長と俺たちがいなければ、近衛騎士団もさほどの抵抗はできないでしょう。……まさか、あの王太子や取り巻き共がそこまでの計略を?」


 それはないだろうなぁ偶然だろうなぁという顔をするラック。そんな彼からの確認を受けて、師匠はなぜか微妙そうな顔をした。


「うーむ……。それなんだが、例の『ヒロイン』が怪しいと私は踏んでいるんだ」


「ヒロイン……。男爵令嬢のアリスでしたか」


 ちら、っとエリザベス嬢を横目で見るラック。エリザベス嬢はアリスって子に婚約者を寝取られた形になるからな。気を使うのも分かる。


 おっと、まだ寝たとは限らないのか。


 だがあの王太子だからなぁ。貴族の常識を丸っと無視して婚前交渉をしていても不思議じゃないよなぁ。


 アリス。


 俺がシナリオを書いたゲームのヒロイン。もちろん彼女も生きている人間なので、ゲームの人格そのままなんてことはないだろう。


 ただ、見た目は原作ゲームそっくりだったな。ふわふわした金髪に、クリクリとした瞳。白い肌。まるで西洋人形のような外見だが、逆に特徴がないとも言えるかもしれないな。


 この世界のアリスと直接話したことはないが……悪い子には見えなかったがなぁ。


 と、いうのは原作者による贔屓目かね?


「……浮気の気配がするな」


 じっとーっとした目で見られてしまった。師匠から。


 師匠って心読めましたっけ?

 浮気って。いつ俺と師匠が恋仲になったので?


 というツッコミをしようと思ったが……そういえば「結婚しよう!」と宣言されていたな。せっかく『なぁなぁ』になったのだから、藪を突いて蛇を出す必要はないか。


「いやぁ、はっはっはっ」


 とりあえず、笑って誤魔化しておく俺だった。


「まぁ、アークの女たらしはいつものこととしまして」


 いつものことにされるのも心外なんだが、まぁ話題を転換してくれるなら助かるな。


「近衛騎士団は大丈夫なんですか?」


「まぁ、副騎士団長(フリオラ)がいるからな。何とかするだろう」


「「あー……」」


 あの人なら上手く立ち回りそうだよなと納得する俺とラックだった。


 フリオラさんも苦労性というか苦労が向こうの方からやって来る人だよなーっと心底同情してしまう俺だった。


「で? 国王陛下は何を企んでいるんです?」


 確信を込めた問いかけをするラックだった。その声色からは「あの人が大人しくしているはずがねぇ」という全幅の信頼が透けて見える。ま、腹黒は腹黒を知るのだろう。


「分からん。分からんが、あの御方のことだ。何か企んでいるだろう」


「でしょうね。まったく、こっちが巻き込まれないことを願うばかりです」


 おいおいラックよ。

 そういうことを言うと巻き込まれるんだぞ? オレ、シッテル。



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