美少女転生?
「おおぉおおおおぉおい!?」
宙を飛ぶクーマの首。
それを、クーマの腕と胴体(大)を駆け上りながらキャッチする俺。
「やっぱりアークもバケモノだよな」
そんな失礼すぎるラックの発言を聞き流しながら着地。おーい、クーマ。大丈夫か?
『し、し、死ぬかと思ったぜ……』
いや首を刎ねられたら死ぬんじゃないか? まぁゴーレムなんだから平気なのか。
「ん。核は潰されてないので大丈夫」
そんな説明をしてくれる創造主・ミラだった。前の世界だと『額の文字を消すとうんぬん』で消滅するのがゴーレムのお約束だったが、こっちの世界だと核が潰されなきゃ平気なのか?
いやまぁ、文字を消されたくらいで消滅していては役に立たないだろうからな。こっちの世界の方が実用的なのか。
クーマは無事そうなので良かったとして。俺は「とーう!」と着地した師匠に抗議の目を向けた。
「ちょっと師匠。いきなり首を刎ねるのはやり過ぎでしょうが」
「うむ? しかし、生物を仕留めるなら首を刎ねるのが一番手っ取り早いぞ?」
「…………」
この脳筋が。
というツッコミはこっちの首が飛びかねないので自重するとして。
首だけになっても平気なら、またあのぬいぐるみっぽい胴体に縫い付ければ元に戻るのかねぇと俺が考えていると、
パラパラと。
頭上から何かが落ちてきた。
砂? 土?
なんだなんだと俺が上を見上げると。
クーマの胴体(大)が、崩れ落ちてきていた。ひび割れ、土塊となり、次々に。
あー、あの胴体は元々ただの土だものな。クーマの首 = 制御するものがなくなればただの砂に戻って崩れても不思議じゃないのか。
ただの土。
とはいえ、固まりになれば結構な重量となるのでぶつかれば命の危険があるし、生き埋めになる可能性もある。
まぁつまり、いつものだな。
「――に、逃げろ!」
クーマの生首を抱えたまま、一目散に逃げ出す俺だった。
「ボクたちってこんなのばかりじゃないかい!?」
「今回は私たちが半分くらい悪いですね!」
「……ん。お兄ちゃんに見捨てられた」
人聞きの悪いことを言うミラだった。お姫様だっこして逃げなかったことか? クーマの首を抱えているんだからしょうがないだろうが。というか身体強化で俺に匹敵する脚力を発揮しているし。
そんなやり取りをする俺たちの背後で。クーマの(元)胴体は盛大な音と土煙を立てながら崩壊したのだった。
◇
「大きいは危険。シャルロット覚えた」
「過剰は危ない。メイス覚えました」
「ん。ほどほどが大事」
うんうんと頷き合うシャルロット、メイス、ミラだった。反省の色がまったく見えないな……。
『う~む、遊ぶ前に崩れてしまったか』
ちょっと残念そうなシルシュだった。……良かったなぁクーマ。ドラゴン・ブレスを喰らったら核ごと完全消滅していたぞ?
『……まともな人間がいねぇ……』
ガクガクと震えるクーマだった。首だけで。
「というわけで! 作戦会議パート2!」
ひょいっとクーマの首を奪い去り、メイスたちの元へ去って行くシャルロットだった。この、トップオブまともじゃない人間は……。
「周りへの被害を考えれば、人間程度の大きさがいいだろうね」
「大きいのは素晴らしいですが、鈍重なのはいけません」
「ん。ゴーレムだから姿形は自由自在」
三人がこそこそと(丸聞こえな)作戦会議をしていると、シャルロットが『きゅぴーん』と閃いたようだ。
「そうだ、ここはいっそ美少女にしてしまうのはどうかな?」
どうかな、って。シャルロットはアホなんだなぁとしか。
「……なるほど。とにかく女に甘い女たらしを倒すには、美少女の見た目をしていた方が有利ですか」
それ、俺のこと?
「ん。面白そう」
子供らしい好奇心だなー(白目)
シャルロットがクーマの首を地面に置き、土を集めて胴体を作り始めた。
……あれは、あれっぽいな。海水浴に行って胴体を砂に埋められた男が、胴体の上の砂を女体っぽくされてしまうアレ。
「ん」
ミラが魔力を流し込むと――何と何と、土の塊は女体になってしまった!
元が土とは思えぬほどに白い肌。柔らかそうな質感。うちの女性陣には並ぶものがいないほどビッグな胸部装甲。しなやかな四肢にキュッとしたくびれ。
いわゆる、ボン、キュ、ボン。
美人だ。
美人の肉体だ。
……ただし、首から上はクーマのままだったが。
バッランス悪いなぁおい。




