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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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エピローグ・1 戦い終わって


「キミたちは! ボクの扱いが悪すぎる!」


 師匠との戦いが一息ついたあと。「むがー!」と抗議したのはシャルロットだった。


 なんでも、一生懸命身体強化(ミュスクル)をしていたらメイスとミラが水蒸気爆発を発生させ、また吹き飛ばされてしまったらしい。


 身体強化(ミュスクル)を掛け続けて周りを見る余裕がなかったシャルロット。


 俺を支援するため急いで水蒸気爆発を起こしたメイスとミラ。


 正直、どっちの立場も分かる俺であった。


 うん、ここは実害を受けたシャルロットをまずは慰めるか。


「いや、シャルロット。助かったぜ。お前さんの身体強化(ミュスクル)がなければ確実に負けていただろう。さすがだな」


「っ! ふっふーん! そうだろうそうだろう! やはり分かっているじゃないかアーク君! もっと褒め称えたまえよ!」


「凄いぞシャルロット!」


「うんうん!」


「格好いいぞシャルロット!」


「格好――レディに対してそれはどうかな……?」


「じゃあ、可愛いぞシャルロット!」


「――ぐっふ!」


 なにやら『ふにゃふにゃ』しながらその場にしゃがみ込むシャルロットだった。おもしれー女。


「女たらし」


「女たらし」


「相変わらずの女たらし」


 メイス、ミラ、そしてなぜか師匠からもなじられてしまう俺だった。なぜだ?


 ちなみに師匠は俺に投げ飛ばされた態勢のまま。いい加減起きませんか……?





「アークぅ、考え直さないか~?」


 地面に叩きつけられた態勢のまま、俺のズボンの裾を引っ張る師匠だった。なんだこの「だら~ん」とした感じ? ほんとに師匠か? まさか頭もぶつけたか?


 ……なにやら副団長が「その人、素はそんな感じですよ。頑張ってください」とため息をついた気がする。もちろん気のせいだろう。


「ええい! 諦めるって約束したでしょうが!」


「うむ! 連れて帰るのは諦めた! だから改めてスカウトしよう! 近衛師団に入らないか!?」


「無しです! 無し! そんなの無し! 潔く諦めてください!」


「そんなぁ」


 俺のズボンの裾を掴んだまま『だら~ん』と伸びる師匠だった。これ、割と近衛師団の恥じゃね? というか皆は『元勇者』だって知っているんだろ? どうなんだこれ?


 皆に視線を向けると、誰も彼もがサッと視線を逸らした。関わりたくない、何も見ていないとその横顔に書いてある。


 そんな皆の態度を師匠も見たらしい。


「――ふっ、どうやら交渉は決裂か」


 すくっと立ち上がり、キリッとした顔をする師匠だった。手遅れっす。


「仕方がない。アホ太子には私の方から上手いこと伝えておこう」


 アホ太子って。王太子をアホって。まぁアホだが。


「騎士アークと騎士ラック、そしてご令嬢方は魔の森のドラゴンに襲われて死亡。という筋書きで構わないか?」


「えぇ、それでお願いします」


「ふむ、魔の森の入り口にはドラゴンの爪痕が残されているからな。疑われることはまずないだろう。……あとは、ドラゴンの討伐軍が編成され、こちらにやって来る可能性もあるが……」


「へ? ドラゴンを、討伐っすか?」


 にわかには信じがたい話だ。一国の軍隊程度でどうにかなる存在ではないのだドラゴンは。というか王都まで飛んでいって、ドラゴンブレスを吐かれるだけで国が滅びかねないし。


「普通ならばあり得ないがな。普通じゃない馬鹿がいるのでな」


「……あー」


 あのバカか。じゃなかった。王太子か。それならあり得るよな。


 納得するしかない俺だった。






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