表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/337

戦い


「なるほど。そう来るか」


「えぇ。そうなりますね」


「――ならば、力づくと行くか」


 師匠が剣先を俺に向けてくる。


「私一人に勝てないようでは、『国』には絶対に勝てん。国と敵対して勝てるかどうか。お前たちの『力』を見せてもらうではないか」


 準備運動をするかのように、師匠が何度か剣を振り、その場で軽くジャンプする。


「私が勝ったら、アークには王都に戻り、近衛騎士団長になってもらう」


「なら、俺が勝ったら見逃してもらいましょうか」


「いいだろう。――私に勝てたらな!」


 師匠の姿が、消えた(・・・)。どうやら最初から本気らしい。


 人間の動体視力では捉えられないほどのスピード。もはや目で見て反応することなどできない。


 だが、俺にはこの『力』がある。


 目では何も捕捉できないまま。


 俺は鞘から半分ほど剣を抜き――師匠の動きを感じて(・・・)、背後からの一撃を防いでみせた。


「ぐっ!」


 人間とは思えない腕力。一撃の重さ。柄を握る手がたった一振り受け止めただけで痺れてくる。


「はははっ! やはり見えて(・・・)いるかアーク!」


「残念ですが、見えてはいないんすよ!」


 そのまま鞘から剣を引き抜き、師匠の二撃目、三撃目を受け流す。まともに受けたら剣も腕も壊されるからな。


「世迷い言を! 見えてない人間がこうまで私の攻撃を防げるものか!」


 大上段の一撃を防いだところで、師匠が少し距離を取った。


 たったこれだけ戦っただけなのに、もう腕の痺れのせいで握力が弱まってきてしまう。


「ほんと、師匠ってバケモノっすね!」


「はははっ! その言葉! そっくり返すぞ! 勇者の一撃を平然と受け止める人間がどこにいる!?」


「あいにく、平然とじゃないんですよね!」


 痺れる手を見せつけるように右腕を上げると、師匠は小さく吹き出した。どうやらプルプルはお気に召したようだ。


 お互いに何とも気の抜けた感じだが、ある程度はしょうがない。これはあくまで武力による交渉であり、殺し合いじゃないのだ。重要なのは勝ち負けではなく、お互いが納得する形で決着を付けること。


 そのために。この戦いにはまだ足りないもの(・・・・・・)がある。


「アーク。相変わらず見事な腕だし、愛嬌も素晴らしい。……だが、それはしょせんアーク個人の力だぞ? 支え合うというのなら、ご令嬢方の力も見せてもらわないとなぁ?」


「お、じゃあ遠慮なく。ちょっと待ってもらえます?」


「うむ。全力を出していない状態で叩きのめしても連れて帰れないだろうからな」


 どうやら叩きのめすことは決定事項らしい。怖い人だ。……いや正直『人』判定でいいのか甚だ疑問だがな。


 俺は一旦師匠から目を離し、ご令嬢方に視線を向けた。


『――むぅ! のたのたしているから湯が冷めたではないか! さっさと倒さんかアーク!』


 助力する気など微塵もなさそうなシルシュ(飽きたのか入浴中)はまぁ置いておくとして。まともに協力してくれそうなシャルロット、メイス、ミラにお願いする。


「というわけで、協力してくれるか?」


「もちろんさ!」


「戦闘ではお役に立てませんが……なにかできることを探します!」


「んっ」


 こんなバケモノが近くにいて怖いだろうに頷いてくれる三人だった。


 ちなみに。

 ご令嬢の中でなぜエリザベス嬢を除外したかというと……エリザベス嬢とラック、お互いに支え合うように身を寄せ合っているからだ。あの二人に協力を要請するほど野暮じゃあない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ