表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/337

悪役騎士、俺


 師匠がドラゴンの血を浴びた?


「……マジで?」


「むしろこっちが『マジで?』なんだが……。そりゃそうだろ。ドラゴンを剣で斬りつければ返り血を浴びるだろうし、背中に剣を刺したなら尚更だ。きっと大量の血を浴びただろうよ」


「……シルシュは、普通の人間がドラゴンの血を浴びたら死ぬとか言ってなかったか?」


「団長は勇者だぜ?」


「あぁ……」


「よく考えてみろ、あんな若い女性が普通に年齢通りに鍛えて近衛騎士団長になれるはずがないだろうが。勇者であり、ドラゴンの血を浴びたからこそあの見た目のままあれだけ強くなれたんだよ」


「いや、なれるはずがないとは言うがな……。たしかに師匠はバケモノだが、あり得ないほどじゃないだろ?」


「……そういや、お前も20歳で団長に勝てるバケモノだものな。基準がそもそも狂ってるのか」


「ひでぇ言い方じゃねぇか」


 あと、師匠に勝てたのは最初の戦いで、師匠が油断していたからだからな? 本気でやればとても勝てたもんじゃないからな?


 しかし、師匠が勇者で、ドラゴンの血をねぇ?


 ……まぁ、あの強さなら納得できるか。

 そりゃそうかーっと考えていると、師匠から発せられていた闘気が急激にしぼんだ。


「おっと、オオトカゲ退治はあとにするか」


 師匠がシルシュから視線を外し、こっちに顔を向ける。いやいや後回しでいいっすよ。思う存分シルシュと戦ってください。


「騎士アーク。王太子の命令は完遂しただろう? そろそろ王都に戻るとしようではないか」


「王太子の命令っていうと……」


 ご令嬢方を魔の森に捨ててこいってやつか。


「……残念ですが、その命令は達成できませんね」


「見捨てられないと?」


「もちろん」


「……まぁ、騎士アークであればそう言うとは思っていたが……。このままでは騎士としての身分剥奪だけでなく、王太子の命令に従わなかったとして討伐対象になりかねんぞ?」


「ま、しょうがないんじゃないっすか?」


「……騎士アークであれば、私の代わりに騎士団長になれる。これは説得のための甘言ではなく、事実だ。王太子が私を嫌っている以上、近衛騎士団長には騎士アークに立ってもらおうと思っているからな」


「師匠、一つ訂正してください」


「……なんだ?」


「俺はもう近衛騎士団を辞めるんで。『騎士アーク』って呼び方は止してください」


「騎士を辞め、ご令嬢たちと共に生きると?」


「そうなりますね。無実の罪を着せられ、『悪役令嬢』に仕立て上げられたご令嬢を見捨てられるほど、俺は器用な人間じゃないですから。ま、ご令嬢を守るって意味じゃあ『騎士』のままかもしれませんがね」


「悪役令嬢……。いつだったか王女様がそんな話をしてくださったな。確かに冤罪であれば可哀想だとは思うが……私には、本当に冤罪なのかどうか確かめる手段はない。だからこそ重要なのは、王太子殿下が『悪役令嬢』だと断じ、国王陛下や貴族たちもそれに同調してしまったことだ」


 師匠がそっと目を閉じた。辛い現実から目を背けるように。――あるいは、俺の視線から逃れるかのように。


「……こういう言い方はあまりしたくないが、『悪役令嬢』となった彼女たちに未来はないぞ? 王太子が敵になった以上、もはやこの国で幸せを掴むことはできない。王太子に逆らい、悪役令嬢を守ろうとするなら――お前も『悪役騎士』とされてしまうだろう」


「…………」


「なぁ、アーク。お前は彼女たちを守るつもりだろうが……自分の力で自分を守れない人間は、いずれは淘汰されるのだぞ? お前は強いが、戦うこともできない女性四人を守れるほど強いのか? そのうち力尽き共倒れするだけではないのか?」


「師匠は何か勘違いしているっすね」


「……なに?」


「戦うことだけが全てじゃないでしょう? シャルロットの支援魔法は魔導師団の魔術師すら超えるし、メイスの知識と頭の良さはこれからここで暮らす上で絶対役に立つ。ミラに至っては今までどれだけ助けられたか数えきれないほどだ」


 一度、剣を鞘に納める。戦いたくないと。言葉で納得してくれと願いながら。


 そして、俺は、俺の想いを口にした。


「戦い以外でサポートしてくれるご令嬢方と、戦うことしかできない俺。――悪役令嬢の彼女たちと、悪役騎士、俺。互いに支え合えばいいんじゃないですか?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ