またまた
――立てた。
自分を信じた結果、俺は海の上に立つことができたのだった。なーんだ意外と簡単だったじゃないか。やっぱり常識に縛られているとダメだよな。
「ふっ、よくぞ至ったアークよ。これぞアークの真の力、管理者権限、発動だ!」
腕を組んで後方師匠顔をする師匠だった。まぁ師匠なんだから師匠顔するのが当たり前なんだが。
ちなみに師匠は鑑定眼を使えないので俺のスキルを知りようがない。なのできっとテキトーにそれっぽいことを喋っているのだと思う。
『いやいやいや、何でじゃ。どういう理屈じゃ』
呆れ顔でツッコミを入れてきたのはシルシュ。わざわざ人型に戻ってのツッコミだ。
なんだーぁ、知らないのかシルシューぅ? 自分を信じると海の上にも立てるんだぞーぉ?
『うっわムカつく。ムカつく顔しとるなぁおい』
けっ、と吐き捨てているが、シルシュだって海の上に立っている。人のこと言えないじゃないか。
『ドラゴンなのじゃから海の上にも立てるじゃろう』
いやドラゴンでも海の上に立てるとは限らないのでは?
『ドラゴンは立てるが、人間は立てん』
断言されてしまった。じゃあ俺と師匠は何なんだよ?
『人外』
ドラゴンから人外扱いされてしまった。ちょくちょく人とドラゴンの姿を行き来して、空を飛んで、ドラゴン・ブレスを吐くお前さんから人外扱いされるのは……うーん……師匠なら人外扱いも納得できるのだが……。
『二人とも人外じゃ人外』
はんっ、と吐き捨てられてしまった。なぜだ……。
シルシュの認識は改めたいが、しかし海上では落ち着いて長話もできない。いつ大波が来るか分からないからな。
「えーっと、どうするよ? 何だかんだで止まったんだし、いい機会だからこのまま引き返さないか?」
『えー』
いやそんな不服そうな顔をされても……。
『古代竜である我が、わざわざここまで飛んできたのじゃぞ? 何の成果もなしに引き返すというのも……』
「……そもそも、古代竜が食事を邪魔されたくらいでブチ切れるのもどうなん?」
前々から思っていたことをポロッと口にしてしまう俺だった。ついつい。悪気なく。いいかげんにせいって感じで。
『わ、我の器が小さいと!?』
「そこまでは言ってないが……」
まぁ、人によっては小さいなぁと思うんじゃないか? うん、誰とは言わないが。俺の心境は語らないが。
『なん……じゃと……?』
ショックを受けているっぽいシルシュだった。まぁ、このままの流れなら引き返してくれそうだからいいか。
と、せっかく丸く収まろうとしていたのに。
『――なんだお前たちは!?』
またまた。
空から声が降ってきたのだった。なんかもうテンプレだな。
一応見上げると、やはり魔族が空を飛んでいた。また一人だけだな。
あれか? 魔族が二人も連続で行方不明になったからさらなる人員を派遣してきたか? だったらそろそろ部隊を派遣してもいいと思うのだが……いや、もしかしたら人間のような部隊編成とか軍編成になっていない可能性もあるか? 魔族って個々の活躍を重視すると聞いたことがあるし。




