がんばれ
まぁ、アリスとヴィナには慣れてもらうしかないだろう。
ちなみに初見であるはずのソフィーは平然としていた。まぁ、この子って意外と修羅場をくぐり抜けてきたというか、修羅場に自ら首を突っ込むというか、俺をまず突っ込ませるというか……。とにかく、血や内臓にも慣れているのだろう。
……今さらながら、王女がスプラッタに慣れてる国ってどうなの?
「そんな国だからこうなるんじゃないっすか?」
王太子がクーデターを起こして国王を軟禁。うん、ヤバいな。正直もう関わりたくないんだが、きっと向こうから突っ込んでくるんだよなぁ……。面倒くさ。
ま、それはともかく。
シルシュが状態保存の魔法を掛けてくれた大腸はとりあえず置いておくとして。よく考えたら海岸にドッグを掘ってもサイホンの原理は使えないのでは?
だってあれは高いところの水を低いところに移動させるものだし。海の横にドッグがあっても海面と高さが一緒 = 高低差がないし。なんで考えつかないんだろう、俺……。
「迂闊でした……」
と、眉間に皺を寄せるメイスだった。いやいやテキトーなことを言った俺が悪いんだって。
あとはそうだなぁ。排水するならポンプを使うんだが、この世界にポンプなんてあるはずがない。いや魔導具はあるのか? しかしドッグに使えるほどデカい魔導具なんて聞いたことないな。どうしたものか……。
と、頭を悩ませていた俺は見つけた。大腸と一緒に持ってこられたドラゴンの内臓。その中の一つ、心臓を。
……あの心臓をポンプ代わりにすれば、水も排出できるんじゃないか? さっきのデカいゴーレムを使って。心臓を手で握ったり離したりすればポンプ代わりになるはず。こう、心臓マッサージみたいな感じで。
というわけで。
「シルシュー、その心臓、譲ってくれないか?」
『えー……』
ものすっごく嫌そうな顔をされてしまった。神代竜の威厳・ゼロ。
そういえば心臓が美味いとか言っていたっけ。そうなるとこれ以上頼むのも気が引けるな。やはりその辺のドラゴンを狩ってくるしかないのでは?
「ドラゴンはその辺にいません」
メイスさんの冷静な突っ込みだった。
『……お、そうじゃ。たしかここから少し離れた島にドラゴンが一匹住み着いているはず』
ぽん、っと手を叩くシルシュだった。なんかオチが見えたな……。
「……その島ってのは?」
『うむ、今は魔族が住み着いているんじゃなかったか?』
やっぱりかい。
もうどんどん魔族滅亡フラグが積み上がっていくな。がんばれ魔族。




