しゃー!
なんとかシャルロットとアリスを宥めたあと。
「海底の土を動かせるなら、同時に海底を掘り下げてもいいかもしれませんわね」
そんな提案をするリースだった。
この海岸は遠浅というものだが、あまり浅すぎると大型船が入ってこられないからな。現時点での船なら遠浅でも問題ないが、これからを考えると掘り下げてしまった方がいい。
というわけで。
海底の掘り下げも兼ねて、桟橋は三本作ることになった。正直過剰だが、使わないなら使わないで放置しておけばいいだけだからな。
もちろん一気に作ってはミラの負担が大きすぎるので、長期的には三本にするという程度の話だ。
あとは灯台も作っておくか? 遭難した船が来るかもしれないし。
いや、それよりも先に船渠だな。鹵獲した海賊船の修理をしないといけないし。
こういうときに頼りになるメイスに質問する。
「この世界のドッグ――いや、船渠ってどんな感じなんだ?」
騎士としてずっと陸地で生活していたから海関連はよく分かっていないのだ。
「そうですね。小型船であれば海岸に直接乗り上げさせてしまうのが一般的です。しかし、鹵獲したあの海賊船は大きいですからちゃんとした船渠を作った方がいいでしょう」
「陸地を長方形に掘ってある、あの感じか?」
「あの感じですね」
「船を入れたあと、水を抜くのはどうやるんだ?」
「満潮の時に船を入れ、引き潮で自然と水が出ていくのを待ちます。水がなくなったら扉を閉めると」
「ほー」
じゃあドッグの建設予定地を決める前に満ち潮と引き潮の観測をしなきゃいけない感じか。
……いや、魔法がある世界なのだから水魔法で水を抜いてしまうのもありか?
いやいやそれだとやはりミラへの負担が大きすぎる。ダメダメ。働かせすぎ、よくない。
あとは……。
「そうだ、サイホンの原理を使うのはどうだ?」
「興味深いですね」
キラリーンと眼鏡を煌めかせるメイスだった。知識欲を刺激しちゃったっぽい。
「いやそんな難しいものではないんだがな……高低差を利用して水を移動させる方法だ」
テキトーな枝を拾い、地面に図を書いて説明する。高いところにあるバケツからー、低いところにあるバケツへー、ホースを使って水を移してー、っと。
「なるほど、原理事態はこちらの世界にもありますね」
「ま、それはそうだよな」
「しかし、船渠に使うほど大型の設備は例がなかったはずです。そもそもホースをどう用意するか……。かなり大型でないといけませんし、太さもないと時間が掛かって仕方ありません」
「それはまぁ……なんか、巨大な生物の大腸を使うとか?」
この世界には巨大な生物が多いし。ドラゴンとか。ドラゴンとか。ドラゴンとか。
「なるほど状態保存の魔法を掛ければ長持ちしますし……大きさで言えばドラゴンとかですか」
メイスも同じ結論に至ったらしく、二人して自然とシルシュの方を見てしまうのだった。
『こっち見んな』
犬歯をむき出して威喝されてしまった。いや竜歯か。すまんすまん、ついつい、な。




