たのしい〇〇のお時間
※ちょっと残酷な描写あり。苦手な方は「魔族を尋問して情報を得たんだなー」くらいの認識で読み飛ばしてO.K.です。
『がぁあああぁああっ!』
剣で腹を刺された魔族は絶叫していた。まぁそれはそうだ。いくら魔族が頑丈とはいえ限度がある。
しかし同情はしない俺。なにせ初っぱなから攻撃魔法を放とうとしてきたからな。しかも女性陣がいるというのに。
そもそも人類にとって魔族は『敵』なのだ。
ま、それを言うとヴィナも魔族だし、攻撃魔法をバンバン放ってきたのだが、あれは誘拐されていたからしょうがないだろう。
ともあれ。ここから先の展開は婦女子に見せるようなものじゃない。
「シルシュ。お嬢さん方を安全な場所に退避させてくれ」
『――うむ、そうだな。安全な、声も届かない場所に移動させておこう』
察しのいいシルシュに頷いてから、まずは師匠の元へ歩み寄る。
「師匠。いきなり腹を刺したら尋問どころじゃないっすよ?」
「なに、魔族はこの程度では死にはせん」
どうやら魔族との戦闘経験も豊富らしい。さすがは元勇者だぜ。
「それにな、魔族にはこの辺りに『器官』があるのだ」
「きかん?」
「うむ。どうやらその器官で魔力を全身にめぐらせているらしい。そこを剣で突くと、魔族は上手く魔法が使えなくなる」
「へー」
「まぁ、普通に叩き切った方が早いのだがな。今は尋問を重視しなければなるまい」
「なるほど」
師匠も色々と考えているらしい。てっきりトドメを刺したものとばかり……。
師匠にも『尋問するためには生かしておかなければならない』という知識はあったらしい。なぁんて考えていると、
『ぐっ、この――がッ!?』
魔族が何か喋ろうとしたので、アゴを蹴り上げる。舌を噛んだみたいだが、噛み切らない程度には手加減したつもりだ。そのまま穏やかな笑みを男に向ける。
「O.K.、ミスター。楽しい尋問のお時間だ。ここに来た経緯と、誰の差し金か答えてもらおうか。素直に喋れば早く楽になれるし、喋らなければ苦しみが長く続くぞ? こちらとしても素直になってくれた方が手間が掛からなくていい」
『ぐ、舐める――ぐぅううぅううっ!?』
素直に喋る気がなさそうなようなので、踵で魔族の腹を踏みつける。ちなみに場所は師匠が剣を突き刺した付近だ。なんという不幸な事故だろう。
「まぁ、まぁ、落ち着け。今はまだ混乱しているだけだ。心を落ち着ければ素直に喋りたくなるだろう」
『ふ、ふざける――なぁ!?』
クラウ・ソラスを抜き、男の手の甲を地面に縫い付ける。そのままレバンティンも抜き、男の人差し指第一関節に刃を添えた。
「さて、もう一度聞こうか。ここに来た経緯と、誰の差し金なのか」
『だ、誰が卑しい人間族になど――がぁああぁああっ!?』
なんとも学ばない魔族の指を落とす。とはいえ人差し指の第一関節からの切断なのでまだまだ長さはある。なんて優しい俺だろう。
「ミスター、安心してくれ。人間と魔族も、指の関節の数は同じらしい。なんとまだ右手だけで13回もお楽しみが残っているんだ。あぁ、安心してくれ。右手の指がなくなったら次は左手だ。――それに、うちには回復魔法が得意な人間がいるからな。全部なくなったら最初からやり直しだ」
『――くっ』
魔法も使えず。腹と右手に剣を突き刺され、抵抗することも逃げることもできないというのに。まだまだ元気そうな魔族の男だった。
さぁて、あとどれくらい持つかな?




