顔 > 邪神
『――ん』
「おっ」
ちょうど俺が魔族の少女の顔を覗き込んでいるタイミングで、少女が目を覚ました。
まだ意識がハッキリしないのか、焦点の合わない目をしている少女。
そんな少女を見下ろす俺。
『……ぎゃああぁああああぁあああっ!? バッケモノぉおおおおおおおぉおおおおぉお!?』
どうやらまだ意識が混乱しているらしいな。可哀想に。
「いやいや正常な反応だよ」
と、シャルロット。なんでやねん。
「アーク様は顔が怖いですからね」
と、メイス。なんでやねん。
「ん」
ミラさん、その「ん」はどういう意味ですか?
「この顔の凶悪さならドラゴンも逃げ出すじゃろ」
と、シルシュ。どんだけやねん。
「狂戦士としては最適なのだがな」
と、師匠。バーサーカーって。弟子をなんだと思っているんすか?
「……こほん」
わざとらしい咳払いをしてから視線を逸らすソフィーだった。
「王女殿下。ここは『顔が怖い』と言ってあげることが優しさかと」
ベラさん、ベラさん、それは決して優しさではないですよ?
「だ、大丈夫です! 人間、顔じゃなくて中身です!」
真っ直ぐな顔でフォローしてくれるアリスだった。顔はダメらしい。
≪なっ!≫
人間の顔はよく分からん! という感じの声を上げるナッちゃんだった。フォローになってねぇ……。
「アークの顔は昔からアレでしたからねぇ」
アレってなんですかリースさん?
「高位貴族の跡取りでありながら、中々婚約者候補が決まらないのは好都合でしたわ」
グッ、と親指を立てるリースだった。俺、そろそろ泣いていいんじゃないか?
そんなことを考えていると、魔族の少女はまた気絶していた。え? 俺の顔面って少女を気絶させるほど?
◇
『ぎゃあぁあああぁあああぁあああっ!?』
再び目を覚ました少女は再び絶叫していた。絶叫芸?
ちなみに俺は少女に気を使って遠くに退避していたので、今回の絶叫は俺のせいではない。はずだ。
『な、なぜこんなところに古代竜がぁああああぁああぁああ!?』
お、今度の原因はシルシュらしい。やったぜ。
そして今のシルシュは人間形態なのだが、それでもドラゴンと分かるらしい。すごいな魔族。
『ぎゃあぁあああぁあああ!? 神ぃいいいぃいいいいいっ!?』
そしてラタトスクやフレズを見てまたまた絶叫する少女だった。そろそろ可哀想になってきた――いや、面白さの方が勝るか?
しかしまぁ古代竜やら神様やら、ここってバラエティ豊かな人材が揃っているよなーっと今さらながら俺が感心していると、
≪なっ!≫
いつの間にか俺の肩から降りていたナッちゃんが、片手を上げて少女に挨拶した。
『――――、じゃしーん……』
泡を吹いて倒れる少女だった。これは完全に可哀想だな。
ちなみにナッちゃんはさっきまで俺の肩に乗っていたんだが……俺の顔、ナッちゃんに気づかないくらい怖かったの?




