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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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顔 > 邪神

『――ん』


「おっ」


 ちょうど俺が魔族の少女の顔を覗き込んでいるタイミングで、少女が目を覚ました。


 まだ意識がハッキリしないのか、焦点の合わない目をしている少女。


 そんな少女を見下ろす俺。


『……ぎゃああぁああああぁあああっ!? バッケモノぉおおおおおおおぉおおおおぉお!?』


 どうやらまだ意識が混乱しているらしいな。可哀想に。


「いやいや正常な反応だよ」


 と、シャルロット。なんでやねん。


「アーク様は顔が怖いですからね」


 と、メイス。なんでやねん。


「ん」


 ミラさん、その「ん」はどういう意味ですか?


「この顔の凶悪さならドラゴンも逃げ出すじゃろ」


 と、シルシュ。どんだけやねん。


狂戦士(バーサーカー)としては最適なのだがな」


 と、師匠。バーサーカーって。弟子をなんだと思っているんすか?


「……こほん」


 わざとらしい咳払いをしてから視線を逸らすソフィーだった。


「王女殿下。ここは『顔が怖い』と言ってあげることが優しさかと」


 ベラさん、ベラさん、それは決して優しさではないですよ?


「だ、大丈夫です! 人間、顔じゃなくて中身です!」


 真っ直ぐな顔でフォローしてくれるアリスだった。顔はダメらしい。


≪なっ!≫


 人間の顔はよく分からん! という感じの声を上げるナッちゃんだった。フォローになってねぇ……。


「アークの顔は昔からアレでしたからねぇ」


 アレってなんですかリースさん?


「高位貴族の跡取りでありながら、中々婚約者候補が決まらないのは好都合でしたわ」


 グッ、と親指を立てるリースだった。俺、そろそろ泣いていいんじゃないか?


 そんなことを考えていると、魔族の少女はまた気絶していた。え? 俺の顔面って少女を気絶させるほど?





『ぎゃあぁあああぁあああぁあああっ!?』


 再び目を覚ました少女は再び絶叫していた。絶叫芸?


 ちなみに俺は少女に気を使って遠くに退避していたので、今回の絶叫は俺のせいではない。はずだ。


『な、なぜこんなところに古代竜がぁああああぁああぁああ!?』


 お、今度の原因はシルシュらしい。やったぜ。


 そして今のシルシュは人間形態なのだが、それでもドラゴンと分かるらしい。すごいな魔族。


『ぎゃあぁあああぁあああ!? 神ぃいいいぃいいいいいっ!?』


 そしてラタトスクやフレズを見てまたまた絶叫する少女だった。そろそろ可哀想になってきた――いや、面白さの方が勝るか?


 しかしまぁ古代竜やら神様やら、ここってバラエティ豊かな人材が揃っているよなーっと今さらながら俺が感心していると、


≪なっ!≫


 いつの間にか俺の肩から降りていたナッちゃんが、片手を上げて少女に挨拶した。


『――――、じゃしーん……』


 泡を吹いて倒れる少女だった。これは完全に可哀想だな。


 ちなみにナッちゃんはさっきまで俺の肩に乗っていたんだが……俺の顔、ナッちゃんに気づかないくらい怖かったの?




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