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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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閑話 魔族の少女


 魔族の少女・ヴィナはいわゆる王族であった。


 とはいえ、現在の魔族は力あるものが『魔王』となるしきたりなので、魔王の制度が整う前に王族であったというだけなのだが。


 それでも血筋というものは重視されるようであり。現在の魔王とヴィナの間に婚約話が持ち上がるのは自然な流れと言えた。……それだけ現魔王の力が微妙であり、血筋という後ろ盾がないとひっくり返される(・・・・・・・・)可能性があるという意味でもあるのだが。


 ともかく。ヴィナとしては『道具』としての自分の運命を受け入れていた。たとえ抵抗したところで魔王と四天王に力で勝つことはできないからだ。


 そうしてそろそろ婚約発表かというタイミングで――ヴィナは誘拐されてしまった。


 信頼するメイドが淹れてくれたお茶。おそらくはその中に睡眠薬が混ぜられていたのだろう。メイドが裏切ったのか、あるいは他の誰かがやったのかは分からないが、事実などどうでも良かった。これで望まない結婚をしなくてもいいかもしれないと考えたからだ。


 ヴィナを売った(・・・)のが誰かは分からない。魔王と対立する公爵かもしれないし、魔王と公爵の仲を険悪にするためにどこかの勢力が公爵の仕業に見せかけて――という可能性もあるからだ。


 どちらにせよ、ヴィナのやることは変わらない。隙をみて脱出、あとはどこかに逃げればいいだけなのだから。


 ……問題は、魔法封じの首枷はそう簡単に外されないであろうことと、『人類の敵』っである魔族がどこで生活するかということなのだが。それはとりあえず逃げてから考えようと決めたヴィナだった。とにかく逃げなければ何も始まらないのだから。


 そうしてヴィナが時機を待っていると、その機会がやって来た。いかにも悪党じみた顔をした男が貴族らしい女と共にやってきて、ティナの首枷を外したのだ。


 貴族の女が何を言っているかは分からなかったが、自らを『騎士』だと名乗った男の言葉は不思議と理解できるヴィナ。今の彼女は魔法封じの首枷をされているので翻訳の魔法も使えないため不思議だったが……どうでもいいことだった。


 おそらくは海賊退治に来た騎士と、他に攫われていた貴族の女といったところだろうと判断したティナは――首枷が外された瞬間に攻撃魔法を発動した。


 助けてくれたことに感謝しているが、しょせん人間は敵。まずは無力化し、そのあと飛行魔法で逃げようと考えたのだ。


 騎士を近づかせないため初級魔法を連発するヴィナ。


 だがおかしい。

 魔法が当たらないのだ。別に結界で防御しているわけではないというのに。


 しかも騎士を名乗る男は剣を抜き、魔法を斬って(・・・・・・)しまったのだ。


(は、はぁああああぁああぁあっ!?)


 王族としての誇りから、すんでの所で叫ばなかったヴィナ。だが目元には涙が浮かんでいる。


 もはや誇りの問題で魔法を連発するヴィナ。魔法使いが、魔族が、ただの剣士に負けることなど許されないのだ。


 だが、しかし。


「首ぃー、よこせぇー」


『ぎゃああぁああああぁあああっ!?』


 雷をものともせず。

 悪役顔を稲光で照らしながら。

 一歩、一歩と近づいてくる男が――怖くて怖くてしょうがないヴィラであった。




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