おもしれー男
まぁシャルロットとミラも冗談半分だったのかそれ以上責められることはなかった。……諦められたわけではない、と思う。
「この船、帆柱を直せばまだまだ使えますわね」
そんなリースの言葉に従い、船を回収することにした。元の船員は全員ぶち殺――じゃなくて、正当防衛したので文句を言うヤツもいないだろう。
「魔王」
心を読んだミラのツッコミに言い訳していると、リースが魔力の糸を陸地まで伸ばしてくれた。そのままシルシュが(人間状態のまま)どんどん魔力の糸を引っ張ってくれる。
この糸、人の首を刎ねられるくらい切れ味がいいはずなのだが……シルシュに痛がっている様子はないな。さすがドラゴン。
「ドラゴンには通じませんか……」
ちょっと悔しそうなリースだった。あなたドラゴンと戦う予定がおありで?
「アークの妻であればいつ巻き込まれるか分かりませんし」
いくら俺でもドラゴンと戦う予定はないが? 嫁(?)にする予定は立てられているが。戦ったのはキングゴブリンと邪神くらいのものだし。
「十分ですわ、十分」
やーれやれと肩をすくめられてしまった。
そんなやり取りをしていると陸地に到着。とはいえまだ港湾設備はないので接岸はできない。座礁しないくらいの場所に係留しておくことになった。帆柱を修理するならドックを作ってもいいかもしれんな。
ちなみに係留した船からシャルロットとミラは飛行して移動。リースは糸を使ってスパイ〇ーマンのように飛んでいった。うちの女性陣、行動力(?)がありすぎるな。
なんとも一芸に秀でていることだと思いつつ、俺は魔族の少女を小脇に抱えて跳躍。陸地に戻ったのだった。
「うわぁ、ただの跳躍で戻ってきた」
「バケモノみたいな運動神経」
「違いますわミラ様。そのままずばりバケモノですわ」
なぜか白けたような目を向けてくるシャルロット・ミラ・リースだった。なんでだよ? 師匠に比べれば平凡な跳躍じゃないか。
まったく大げさだなーっと思いつつ、小脇に抱えていた少女を地面に横たえる。
「――ほうほう、これは珍しいですね」
興味深そうな顔をして近づいて来たのはラタトスク。また何か暗躍したのか?
「まず暗躍を疑うってどういうことですか!?」
「日頃の行いだ、しょうがない」
「なら仕方ないですね! ガッデム!」
相も変わらず騒がしいリスだった。
「このボクを未だにリス扱いするとは……おもしれー男……」
はいはい。
「で? 何か知っているのか?」
「もちろん。この娘はたぶん魔族の姫ですね」
「魔族の姫? 魔王の娘ってことか?」
「いえ、魔王が統治する前に存在した王族の娘ですね。今では名誉職というかそんな感じで」
「ほー」
よく分からんが、実権がないとはいえ王族の娘が海賊に攫われるってヤバい状況なのでは?
「そりゃもうヤバいですね。この娘、たしか今の魔王との婚約が噂されていたはずですし」
なんでそんなことまで知っているんだよ、というツッコミは今さらか。
「しっかしまぁ、よくぞここまでトラブルを引き寄せられますね……。よっ! おもしれー男!」
やんややんやと煽ってくるラタトスクだった。そろそろ首刎ねていいかな?




