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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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おもしれー女……


 なんやかんやの一騒動が終わったあと。


「あっ、ああーっ!?」


 やっとシルシュの正体に気づいたのか、『シナリオ』の知識があるシャルロットが叫んだ。シルシュを指差しながら。


「ちょ、ちょっとアーク君!」


 俺の腕を引き、皆とは少し離れた場所に移動するシャルロット。そのまま小声で話しかけてくる。


(あれ! シルシュだよね! 邪竜のお助けキャラ! なんで乙女ゲームなのに男じゃないのか攻略対象じゃないのかと話題になった!)


(その話題は初耳だが……。そうだな。シルシュっぽいな)


(聖剣は!?)


(これか?)


 空間収納(ストレージ)から、シルシュに突き刺さっていた聖剣(?)を取り出す。シャルロットほどではないが俺も剣を収納できるくらいの空間収納(ストレージ)は持っているのだ。


 そういえば、これってゲームの聖剣と同じものなのか? いや俺も聖剣のビジュアルは見たことがあるはずだが……正直、聖剣のデザインなんてどんなゲームでも似たり寄ったりだからなぁ。


 お? なんか聖剣が震えたような? まさか怒ったとか? いやいやまさか。そんなまさか。


 なぁんて、俺が一人ツッコミをしていると、


(――原作シナリオ大崩壊!)


 むがー! っと、頭をかきむしるシャルロットだった。小声はちゃんと維持したまま。おもしれー女。


(いやあのヒロイン(クソ女)が世界を救った聖女になるよりかはマシだけど! どうなるのさこれ!? もうゲーム知識が役に立たないのでは!?)


 クソ女って。まぁ気持ちは分かるけど。


(くっ! でもよく考えてみればそうか! あの湖はイベントの時に表示されていた一枚絵(スチル)と同じ! もっと早く気づくべきだったよ!)


 あー、なんか見覚えがあると思ったら、そういう……。


(いやでもおかしいよ。このイベントは攻略対象との個別ルート入りを知らせるもの。湖へ一緒に行った男性と結ばれるというのがシナリオの大きな流れだ。しかし、今はまだゲーム序盤。なのにもう聖剣を抜いてしまったということは……?)


 なんか鬼気迫る顔でブツブツつぶやくシャルロットだった。こわい。


(……ははーん、分かった。分かったよ。つまり――よくあるヒロイン交代! 悪役令嬢こそがヒロインだった系の物語! すでにアーク君ルートに入ったってことだね! ボクには分かっているんだ!)


 どうやら自分こそが『ヒロイン』だと思うことにしたらしい。おもしれー女。





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