正妻(制裁)
「しかし、また大勢引き連れてきたじゃないかアーク君」
シャルロットから呆れ顔を向けられてしまった。なんだか敗北感が凄いな。
「うーん、王女殿下を攫ってくるくらいなら想定していたのだけど……」
くらいって。王女を攫うとか大事件じゃねぇか。ただの魔の森観光だよ。
「……え? それ、本気で信じてるのかい……?」
いや本気も何も、ソフィーがそう言ったのだから……。
「――アーク!」
うお、ビックリした。背後でいきなりソフィーが叫んだようだ。なんだなんだ、どうしたよ?
「わたくしはもう、アークしか頼れる人が!」
なんかメッチャ演技っぽい口調だな。隣に控えるメイド長・ベラさんは頼れない判定でいいのか? メッチャ強いぞ?
「お労しや王女様!」
よよよ、と泣き崩れるベラさんだった。こっちは楽しんでますね?
あと、お労しいの理由は「アークなんかに頼るしかないなんて! 可哀想!」って意味じゃないですよね?
なんかこう……ソフィーの状況は同情に値するのだが、急に寸劇が始まると白けるよな。いや白けちゃいけないとは分かっているんだが。
「実はわたくし! 軟禁されていたのです!」
「おう」
そりゃあまぁ知っているが? 軟禁先の別宮にまで会いに行ったんだから。
「わたくしがいなくても国は回っていて!」
ドンマイ。
「なんと! 無理やり他国に嫁がされようとしているのです!」
あれ? それ知っているんだっけ? ……ラタトスクあたりが教えたかな?
「というわけで! 助けてください!」
いや「というわけで」って。もうちょっと言い方ないの? ポジティブな解釈をすれば男へのおねだりに慣れていない、ってところか。
「……まぁ、助けてほしいなら助けるけどな」
こっちだって何度も護衛をした間柄で、十分情は湧いているんだし。
「……よし、やはりチョロい」
さすがに聞こえてるぞ?
「やはり女の泣き落としが効果抜群でしたね」
聞こえてるっすよ?
「で? 具体的に何をすればいいんだ? 王太子の首でも取ってくるか?」
あの程度の警備なら比較的簡単だな。今ならブリッシュさんもこっちに付いたし。
「いえ、まずはわたくしを正妻にしていただきましょう」
いやいや、『まずは』のハードルが高すぎるわ。富士山のようにそそり立ってるわ。
『審議』
と、割り込んできたのはシルシュ。
「審議」
「審議」
「ん」
「審議」
ぞろぞろとソフィーの元に集まるシャルロット、メイス、ミラ、アリスだった。うっわ、美人&美少女ばかりだから凄い圧。
「な、なんですか!? わたくし王女ですよ!? 偉いですよ!?」
ここで身分を笠に着るの、敗北フラグじゃね?




