泣くぞ?
ガルさんとギルスさんが話し合いをしていた。どうせまた腹黒いことを考えているんだろうな。近づかんとこ。
ちなみに、いがみ合っていた(?)シャルロットとアリスはというと、
「いいかい? アーク君は優しい人間なんだよ。顔は悪役だけど」
「分かります。勘違いばかりされてきた私を偏見無しで見てくださいましたし。顔は悪役ですけど」
「そもそもボクたちのことなんて放っておいて王都に帰っても良かったのに、付き合ってくれてね。悪役顔のくせに」
「持ち上げられすぎてどうしようもなかった私のことも救いだしてくださいましたし。悪役顔なのに」
「悪役」
「悪役」
「顔怖い」
「顔怖い」
「まぁ顔目当てでは他の女も寄ってこないだろうからね」
「生半可な覚悟では泣いて逃げ出しますしね」
「結果オーライ」
「結果オーライ」
グッ、と握手するシャルロットとアリスだった。そろそろ泣くぞ?
「まぁいいや。ギルスさんたちはどうします? もう夜中ですけど」
「そうだなぁ。とりあえず今日はこの辺にテントを張って、細かいところは明日だな。ダンジョンがあるなら案内してくれや」
「へーい。なんか儲かりそうなんで上手いことやってください」
「そうやって丸投げするからこっちが苦労して――あぁもういいや。どうせ言っても理解しないんだし」
なぜか諦められてしまった。なぜだ。
「うっし、とにかく寝床だな。お前ら、テントを張って――」
「ん。必要ない」
とてとてと近づいて来たのはミラ。この前土魔法で作ったデカい家に泊まらせるのか? でもあそこは女性陣が泊まるんだろう?
「今から作ればいい」
ミラが指を鳴らすと、森の方からワラワラと土人形が近づいて来た。いやゴーレムか? 数は百を優に超えるだろう。え? 俺が王都に出かけてから一日経ってないけど、いつの間にこんなに作ったんだ?
「ん」
ミラが号令(?)すると、ゴーレムたちが身を寄せ合い、合体し、壁になっていった。その壁の上にさらにゴーレムが登り、合体し、壁が高くなる。
そのままゴーレムは登って合体を繰り返し……あっという間にドーム状の住居が完成してしまった。
「ん。これなら屋根を別に作る必要もない」
ドヤッとした顔をするミラだった。おー凄いぞー、さすがミラだな!
ミラの頭を撫でながら、ふと思う。これ、城壁なんかも簡単に作れそうだなと。
何がヤバいって、元はゴーレムだから……敵が壁に登ろうとした途端にゴーレムに戻り、襲いかかるって手も使えることだ。
あとは壁が壊されても残骸からすぐに直すことができるし。最高の城壁じゃないか。
…………。
ミラが敵じゃなくて良かった良かった。うん。




