ギルドマスター登場
「げっ」
思わず変な声を上げてしまう俺だった。
ブリッシュさんが戻ってきたのはいいんだが……なぜか冒険者ギルドのマスター・ギルスさんも一緒だったのだ。俺にとっては副業(最近顔出せてない)の上司みたいな感じ?
あと、ギルスさんの後ろにも何人か冒険者がついてきているな。なんだこれ?
「えーっと、ブリッシュさん。冒険者登録はできたっすか?」
「うむ。ギルスが手伝ってくれたのでな。順調に終わった。……そこでだ、」
どうやら俺が質問するまでもなくこの状況を説明してくれるらしい。できる大人だ。
「アークのところで魔物狩りをすると話したら、ギルスたちが興味を抱いたようなのでな。こいつらも連れて行くことは可能だろうか?」
「魔の森までっすか?」
「うむ。森の近くに冒険者ギルドの支所ができれば素材の買い取りなども楽になるし、こちらとしてもいい話だと思うのだが」
え? 冒険者ギルドの支所ができるって話になってるの? あの短時間でそこまで話を進めているとは……さすがはブリッシュさん。仕事が早いぜ。
と、俺が素直に尊敬の念を抱いていると、
「……なぁんか、ボクたちよりブリッシュさんに対する評価の方が高くないですか? こんなにも優秀なボクなのに」
ラタトスクが寝言をほざいていた。起きながら寝言を口にするとは器用なヤツだ。うける。
「うけ狙いじゃないんですけどね!? 本気なんですけどね!?」
はいはい。
ラタトスクとボケツッコミをしていると夜が明けるのでこの辺にして、と。
冒険者ギルドの支所。
俺としては大賛成だし、そもそも反対する立場にはない。ギルドは国から独立した組織だしな。
たしか魔の森近くの寒村には元々冒険者ギルドの支所があったという話だし、それを再開させるつもりなのだろう。きっと。
「それは分かりましたが、なんで魔の森までついてくるんです?」
「うむ。支所を作るにしても、現在の魔物の強さだとか、かつて魔の森開拓を諦める原因となった白いドラゴンがいなくなったのかどうか確かめたいそうだ」
「あー……」
それ、確かシルシュのことだよな?
で、魔の森がドラゴンのせいで開拓できなくなったあと、『元勇者』である師匠が戦いを挑み、シルシュの背中に聖剣を突き刺したんだっけ。
よく考えなくても、神代竜の背中に剣を突き刺せる師匠っておかしいよな。いくら聖剣装備だからといって。
「ツッコミ待ちっすか?」
ツッコミなら師匠にするべきじゃないか?
ラタトスクのボケはスルーして。そういうことならと俺は剣を引き抜き、魔の森へと繋がるよう空間を切り裂いたのだった。
……お? なんか今までの剣と比べると空間を引き裂きやすいな。レバンティンだからな?
俺としては感動しているというのに、フレズとラタトスクはなぜか呆れ顔だ。
『……今さらですけど、剣で空間を引き裂くのってどういう理屈なんですか? 人間なのに』
「ははは、フレズさんは遅れてるっすね~。ボクはもう『アークさんだから』とすべてを納得することにしましたよ」
『……これからは、私もそうしますか』
うんうんと頷くフレズだった。よく分からんが、フレズが納得できたならよかったよかった。




