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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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萌えん


 ※ちょっとR-18G表現あります





 ロキってのはとにかく傍迷惑な神様だ。


 主神オーディンの義兄弟であり、神にとって有利なことをしたかと思えば、不利なこともする。北欧神話随一の悪戯神であり、最後にはやらかしすぎて幽閉されてしまう。


 幽閉されたあとも地震の原因になるし、神々の黄昏(ラグナロク)においては軍勢を率いて神々に反旗を翻す。


 世界を終わらせ、神話を終わらせ――見方によっては新しい世界を作るきっかけとなった神にして巨人……。


 そもそも、『ラタトスク』には可笑しなところが多かった。横文字を使っていることや俺の剣を避けられること以外にも色々と。


 俺たちが王都までやって来るとき、ラタトスクの転移魔法で移動した。その時はなんと無詠唱だったし、腹の底が『ぐわん』とするような感覚もなかった。この国一番の魔法使いであるミラでさえ、長い詠唱を必要とする上に移動者が酔ってしまうというのに。


 さらには、世界を焼き尽くすというレバンティンの炎すら消してみせた水魔法。俺と師匠の戦いの決着方法まで知っていたこと。など、など。ただのリスにしてはおかしすぎることがありすぎるのだ。


 というか。シルシュやフレズでさえ登場したときはドラゴンや鷲の姿だったというのに、ラタトスクは最初から人間だったものな。怪しむなと言う方が無理な話だ。


「なんと、アークさんがそんな頭脳プレイをするだなんて……脳筋のくせに――ぎゃあ!?」


 すぱーん、っと。防御結界ごとラタトスクの首を刎ねる(・・・・・)俺。うむ。やはり斬れたな。


 ラタトスクの首は『ぽーん』と空を飛び、それを首無しの胴体が追いかけ、見事にキャッチした。わぁキモい。


 自分の首を抱えながらラタトスクが文句を付けてくる。


「ひ、ひど縲√ない↑縺?す吶°!?」


「おい文字化け。文字化けしてるぞ」


 えーっと、『ひどくないですか!?』ってところか?


 首と胴体が完全に切り離されているのに喋れるのはどういう理屈なんだろうな?


「おっ翫▲レバンティンΦ繝?ぅ繝ウ縺ォ、譁ャ繧峨のボク→ヤバい縺吶?」


「もはや何言ってるかわかんねぇよ」


 頑張って翻訳してみると……『おっと、レバンティンに斬られては、さすがのボクもヤバいっすね』ってところか?


「莠コの首ョ刎ねr蛻弱、縺ヲ縺翫>言いぐさ縺か°??シ」


 えーっと、『人の首を刎ねておいて、なんて言いぐさですか』かな?


「繧??繧翫ボク縺ィアークさん縺輔s縺ッ心?→心で騾壹§蜷医▲縺ヲ縺?∪縺吶h縺ュ……。縺薙l縺愛……」


 なんかドヤ顔をしながら胴体の切り口の上に自分の首を乗っけるラタトスクだった。うわぁ、『ぬちょ』って音がした……。キモい……。


「自分で斬った縺せ縺ォ!」


 まだ文字化けしていた。おもしれー神。


「くっ、これは一度リセットした方がいい縺ァす吶」


 そう言ったラタトスクの身体が『どろり』と溶けた。灼熱のアスファルトの上で溶けたカラーコーンみたいに。……いやたとえが微妙か。


 そういや、ロキも自分や相手を変身させられるんだっけ。


 一旦どろっと溶けたラタトスクの身体はすぐに再構成。なんというか……何度かラタトスクが言っていた『ボン、キュッ、ボンッ』な美人になった。髪色や顔の雰囲気はラタトスクに似ているが、比べものにならない美しさだ。


 もちろん首は繋がっているし、首の上がクーマの頭になっているなんてこともない。


 だがなぁ。しかしなぁ。


「中身がラタトスクだと、萌えん」


「ひどい!? こんなに美人だというのに!」


 よよよ、っと泣き崩れるラタトスクだった。

 今さらながら呼び方は『ラタトスク』でいいのかねぇ?


「あ、そちらでお願いします。『ロキ』では無駄に騒がれますので」


 まぁ満場一致で首刎ねか監禁を採択されそうだよな。いやこの世界だと『ロキ』の厄介さは知られていないか。


「そんな……監禁だなんて……アークさんにそんな趣味が?」


 …………。


 ロキを知らなくてもいずれギロチンされそうだな。


「ひどい……。みんなボクの首を何だと……。ところで、なんでボクの首を刎ねられたんです? ボク、いくら混血とはいえかなり神格が高いんですけど?」


「防御結界か? さすが神様、一度斬りつけただけじゃ攻略できなかったぜ」


「あーなるほどだから二回目も防げた……いやいや、なんで神格者の張った結界を、たったそれだけで斬れるようになるんですか?」


「二回も斬りつければ『分かる』だろ?」


「普通は分からないですね! このバケモノ!」


 酷い言われようだった。


 ぐぬぬ、っと頭をかきむしるラタトスク。なんかなぁ。見た目はせっかくの美人なのに中身がやっぱりラタトスクなんだよなぁ。萌えん。


 存分にぐぬぬったラタトスクは、気を取り直すように立ち上がり、なんか神々しそうなポーズを取った。


「ま、まぁいいでしょう! ボクの正体を見破り、首まで落としてみせたアークさんには特別に! 極秘情報をお伝えしましょう!」


「極秘情報だぁ?」


「そうですよ! ボクが『ラタトスク』として活動して入手した情報の中でも最上級の! 特大情報です!」


「……いらん」


「そんなこと言わずに! 先っちょだけ! さきっちょだkぶし!?」


 脳天に空手チョップを叩き込むとやっと大人しくなった。うんうん、やはり見た目美人の首を刎ねるのは気が引けるからな。


「この女たらし、どこか間違ってる……。しかし、しょうがないですね! アークさんがそこまでお願いするなら特別にお伝えしましょう!」


 誰も頼んでねぇよ。

 というコテコテのツッコミをする前にラタトスクはその極秘情報とやらを口にした。


「――ボク以外にも暗躍している者がいますので。気をつけてくださいね?」




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