いつものノリで、王都へ
「なんで裸なんだよ!?」
『むしろなぜ鷲が服を着ていると?』
「そりゃそうだけどさぁ! シルシュにも言われたけどさぁ!」
はいはいドラゴンが服を着ているはずがないし鷲が服を着ているはずがありませんね! この世界では人型になるとき裸になる! 俺覚えた!
「とにかく服だ。服を何とかしてくれ」
鋼の精神力で褐色美人の裸から目を逸らしつつ、そんな要求をする俺だった。偉くね?
「服ですか……。では、こんな感じで」
またもやフレズの身体が光り輝き、その後に現れたのは……メイド服を身に纏ったフレズの姿だった。
「……なんでメイド服?」
「? シルシュ様が着ておられるのですから、神格者が着るに相応しいのでは?」
むしろ下働きの人が着る服ですね。
とは、即座に答えられなかった。
なぜならメイドさんだ。
褐色メイドさんだ。
元々が鷲だからかちょっと吊り目の、クール系メイドさんだ。
しかもシルシュとおそろいだから、めっちゃ雰囲気がある。うんうん、やはり同じ型のメイド服を着た人が複数人いると一気に『お屋敷感』が出てくるよな――
「――てぇい!」
「そぉい!」
「ん!」
シャルロット、メイス、ミラから次々に尻を蹴られてしまう俺だった。まぁ痛くないからいいんだが。
というかメイスさん? 「そぉい!」っていう掛け声はいかがなものかと思いますよ? あなたおもしれー女の中ではまともな方なんですから。
それはともかく。王都に行くならメイド服も目立ちすぎる。フレズだけじゃなくシルシュもメイド服だからな。
――いやしかし、こんな美人二人にメイド服から着替えてもらうのは惜しいのでは?
「」
「」
「」
もはや言葉すらなく尻を蹴られる俺だった。なんかミラ以外も心読んでない? 気のせい? ……俺が分かり易いだけ? さいですか……。
「なるほど、ここはこのボクもメイド服を着るべきでは?」
キラリーンと目を輝かせるラタトスクだった。ややこしくなるから止めろって。
「……ここは美☆少☆女! であるボクもメイドになることを喜ぶ場面では!? 五体投地で感激を表現するべきなのでは!?」
「お前さんは萌えより胡散臭さが勝る」
「……解せぬ」
悔しそうに地面に手を突くラタトスクだった。おもしれー女。
「……ま、まぁいいでしょう! ここはボクが転移魔法で王都までご案内しましょう!」
やる気満々なラタトスクと、
「え~……」
まるで乗り気にならない俺だった。
「なぜ!?」
「胡散臭い存在に転移なんて任せられるか。どこに飛ばされるか分かったもんじゃねぇ」
「くっ! 否定できませんね!」
「いやしろよ」
「ほらボクって正直者なので!」
「本当の正直者はわざわざ『正直者』とは自己申告しねぇよ。正直であることが普通なんだから」
「容赦ない!? くっ! 今代の真王は中々のツッコミ役ですね!」
「というわけでシルシュ、ちょっと王都まで転移させてくれ――」
「ストーップ! 待ってくださいここでボク以外に任せられたらボクのプライドに関わります!」
「吹聴屋に沽券も何もないだろう?」
「情報屋です! ……ほら! あれです! ボクなら王都の拠点に転移できますし! やはり転移後って無防備で危険ですよね! しかし拠点の中に転移するなら急に襲われる心配もありません!」
「転移直後に誰が襲いかかってくるんだよ? まさか転移する時間と場所を事前に察知されるとでも?」
「それができそうなバケモノに心当たりあるでしょう!?」
「師匠は王都じゃなくてここにいるよ。――はっ!?」
しまった! ついノリと勢いで師匠を『バケモノ』って呼んじまった! 口に出して!
「……アーク? 誰がバケモノだと?」
あんたです。
と、返せるはずもなく。
「よし! 逃げるぞラタトスク!」
「逃げても怒られるのが後回しになるだけだと思いますが……いいでしょう! 転☆移☆魔☆法!」
――こうして。
なんとも簡単に俺たちは王都へと転移したのだった。




