ミラって魔法のことになると早口になるよね
さて。魔の森へと帰ることになったのだが。
俺としては練習も兼ねてもう一度空間を切り裂いて戻ろうとした。しかし、ミラとフレズに「検証も不十分なのに使うのは危ない」『そうですよ』と反対されたので、集団転移を使うことになった。
ちなみに。シルシュに頭を殴られた影響かフレズの言葉も理解できるようになっていた。
ついでに言うとフレズの声は女性のものだった。しかもかなりの美声。声だけで美人と分かるレベル。……いや、まぁ、見た目は鷲なんだから「美人声だからどうしたよ?」って話なんだがな。
フレズの声にはまだ慣れないが、まぁそのうち順応するだろう。なんか知らないが一緒に行動する気満々っぽいし。
というわけで。俺たちに加えてレディとクルス、さらにはキングゴブリンも加えての集団転移となったのだが……ミラは平気な顔をして実行してみせた。もはやいつものことになりつつなる『ぐわん』とした感覚と共に、転移。次の瞬間には魔の森の開けた場所に到着していた。
いくら魔法に疎い俺でも、ミラがとんでもないことをしたのは理解できる。なにせ生き残ったゴブリンたちも含めれば50人はいそうなほどなのだ。それを一度に転移させるって……。
「なんか、凄くないかミラ?」
「ん。わたし凄い」
ドヤッとした顔をしてからミラが説明してくれた。
「シルシュの魔力に順応した」
「シルシュの魔力?」
「今まではシルシュの血を浴びたことによって異質な魔力が身体の中に混じっていたのだけど、それを使いこなせるようになった。さすがドラゴンの魔力。強力な上に使いやすい」
珍しく長文で喋るミラだった。それだけ興奮しているということだろうか?
しかし……え? シルシュの魔力が混じってるの? 体内に? 一度血を浴びただけでそんな状態になるって、どんだけだよ。
その理屈で言うと俺も強力な魔法が使えるようになるのだろうか? 攻撃魔法とか、転移魔法みたいな。
「ん。お兄ちゃんは元々内向型なので攻撃魔法は難しい」
「内向型?」
「魔法の資質――いわゆる才能には大きく分けて二つある。それが外向型と内向型。外向型は魔力を外に出すことを得意としていて、主に攻撃魔法や他者への治癒魔法などが得意分野となる。それに対して内向型は自らの体内で魔力を扱うことに長けている。例を挙げるなら身体強化とか、自己に対する回復魔法とか」
得意分野であるせいか口が回っているミラだった。
内向型ねぇ? まぁ俺も攻撃魔法より身体強化の方が遥かに得意だからな。その話には納得できなくもない。
となると、俺もシルシュの魔力を使いこなせるようになればもっと強くなれるのだろうか? 具体的には今より強力な身体強化が使えるようになったり。
「…………」
なぜか白けたような目を向けられてしまう俺。
「むしろ、お兄ちゃんは使いこなしていなかったの?」
「? どういうことだ?」
「ドラゴン・ブレスの上を走ったり、キングゴブリンに圧勝したり……。普通の人間の身体強化ではまずあり得ない」
「あり得ないって……」
シルシュの血を浴びる前からこんな感じだったんだがなぁ?
あ、でもレディは身体強化を使ってもキングゴブリンの肉を斬れなかったんだっけ? ……いやそれは単にレディの修行不足じゃないか?
「……やっぱりバケモノ枠」
『ですね』
うんうんと頷き合うミラとフレズだった。お前さんたち意外と仲いいのか?




