どういうことやねん
「――ん。まるで理解できない」
『ピィイィイ……』
なんか諸々が一段落したあと。
ミラとフレズが唸るというか呆れるというか、とにかく微妙な反応をしていた。
その視線の先にあるのは、俺が切り裂いた空間だ。
そういえば、あれ、元に戻るのか?
「ん。空間の裂け目なんてものが維持されるわけがないから、自然と修復されるはず」
「そうか、それならいいんだが」
「よくない」
『ピィイ』
ぴしゃりとミラに断言され、フレズからも『そうだそうだ』みたいな反応をされてしまった。なんで?
「一体どういう理屈で空間を斬ることができるのか。その空間の裂け目がどうして望む場所に繋がるのか。まるで理解できない」
『ピィイ』
そうだそうだと以下略。
えーっと? この国一番の魔術師とされているミラと、神話に登場するようなフレズが揃って分からないと?
じっとー、っと。
一人と一羽から説明を求められている気がする。無言の圧力として。
とは言ってもなぁ。
「なんかできた」
「……なんかできた、って」
『ピィイ……』
じとじっとーっという目を向けられてしまう俺。
「いや待ってくれ。俺はあくまで師匠の真似をしたらできただけなんだ。つまり凄いのは師匠であって、呆れられるべきなのも師匠なんだ」
「見ただけで真似できるのもおかしい」
『ピィイ』
そうか? お手本がすぐ目の前にあったんだからできて当たり前じゃないか?
「ん。そういうところ」
『ピィイ』
どういうところだよ?
なんだか話が平行線になりそうだったので一旦ミラたちから距離を取り、キングオークの元へ。
「さて。抵抗しないってことは、降伏したってことでいいんだよな?」
『オォオ……』
『ゲゲッ』
俺は人間なのでゴブリンたちの言葉は理解できない。
だが、なんとなく『その通りです、我らが王』とか『俺たちはキングに付いていくだけなんで』と言っている気がする。たぶん気のせいだが。
『いや、気のせいでもあるまい』
と、そんなことを口にしたのはシルシュ。どういうことだ?
『うむ。おぬしは転生者だからな。しかも『資格』もあり。ならば転生特典として『自動翻訳』の力を持っていても何の不思議もないじゃろう』
「う゛ぁーせっと?」
『うむ。転生者の定番じゃな』
「そんなゲームやラノベじゃないんだから……いや、」
この世界もゲームだったか。いやまぁ登場人物の言動からして原作ゲームとはかけ離れているんだが……。ゲームの世界なら、転生特典ってヤツがあっても不思議じゃないのか?
……いやいや無理だろう。自分で自分を誤魔化せない。いくらなんでも転生しただけでそんな便利スキルをゲットできるはずがない。
『そもそも転生すること自体が奇跡に奇跡を重ねた産物なのじゃがな? そこのところ理解しておるか?』
なるほど。
たしかに自分が政策に関わったゲーム世界へ転生することに比べれば、自動翻訳のスキルを持っているくらい何の不思議も……だから無理だって。自分で自分を誤魔化せないって。
『変なところで生真面目というか、融通が利かない男じゃのぉ』
やれやれと肩をすくめられてしまう俺だった。




