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【受賞・書籍化】悪役騎士、俺。 ~悪役令嬢を助けたら、なぜか国を建てることになった件~  作者: 九條葉月


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なんという邪竜



 世界樹は健やかに成長し、もうここからは先端が見えなくなった。たぶんダンジョンの外まで到達したんじゃないか?


 魔術師のミラが興味深そうにニーズヘッグの素材を検分している中。この騒動の原因(?)であるポンコツ四人組は正座をさせられていた。


 彼女たちの目の前で腕を組むのは、宝物庫を勝手にダンジョンに改造されたシルシュだ。


 怒っているというか不機嫌そう。なのだが、シルシュって未だにメイド服を着ているからな。ちょっとシリアスさんが裸足で逃げ出すというか何というか……。


『おぬしら、我が宝物を勝手に使うとは、一体どういう了見じゃ?』


 ひぃい! と恐怖に震える四人組。メイド服のシリアスキラーも被告人には効果がないようだ。


『す、全てはあの蛇が悪いのです!』

『蛇のくせにドラゴンを気取っちゃって!』

『しかもせっかく生えてきた世界樹まで噛み始めましたし!』

『何とかしなきゃいけなかったんです!』


 まぁ世界樹を守りたいという気持ちは理解できないでもない。たぶん世界にとっても重要なはずだし。……いやシルシュの口ぶりだと何本もあって、一本くらいなくても平気なんだっけ?


 ちなみに原作ゲームだと……何回か話題には上がったかもしれないが、細かい設定は作っていなかったはずだ。なんか凄くて神聖な樹、って感じ。


『先代の世界樹が残した種がやっと芽吹きまして!』

『途中までは健やかに成長していたんです!』

『でも、どこからかあの蛇が飛んできまして!』

『蛇なのに飛ぶなって話ですよね!』


 シルシュの詰問&四人組の言い訳はまだまだ続きそうだったので、俺は師匠に話しかけた。


「いや、師匠、助かりました。さすがにドラゴン退治は荷が重かったので」


「そうか? アークならば何だかんだで勝てそうだがな」


「……いや、俺を何だと思っているんですか……」


そういう男(・・・・・)だよ」


 どういう男っすか?


「……そういえば、師匠って転移魔法を使えないんじゃなかったでしたっけ? 空間を裂いて登場しましたけど」


 そもそも転移魔法って空間を引き裂く系だったっけ? なんでできるの?


「うむ。なんかできた」


「なんかできた、って……」


 まぁ師匠だしな。ノリと直感で転移魔法を習得したり空間を引き裂いたりしても不思議じゃないか。だって師匠だし。


「ふふふ、アークの助けを求める声が聞こえたからな。これが愛の力(きらりーん)というものだろう」


「あ、はぁ?」


 いきなり『愛の力(きらりーん)』とか言われて真顔になってしまう俺だった。普段からのキャラを考えてくれません? ……いや普段からこんな感じか?


「――愛の力と言われては!」

「だ、黙って聞いているわけにはいきません!」

「ん!」


 なにやら謎のポーズを決めるシャルロット・メイス・ミラだった。メイスはちょっと恥ずかしがっているので、まだ人の心が残っているのだろう。


「……この天然ハーレム野郎が」


 師匠から舌打ちされてしまった。ちょっとキャラ違いません?


 そんなやり取りをしているうちに、四人組からの説明は終了した。


 世界樹がニーズヘッグに噛まれてヤバい! となったところで『予言』を受け、勇者の到来を待つことにしたらしい。シルシュの宝物庫にあった『迷宮王の指輪(アステロペイテス)』を使い、シルシュの残した魔力を元にしてダンジョンを作成。勇者として世界樹の元に招くに相応しいかどうかテストしていたのだと。


 で。実力はあるけど世界樹ごと薙ぎ倒しそうな師匠とシルシュは不合格。強制的に退場(転移)させられてしまったと。


「その予言ってのはなんなんだ?」


『さぁ?』

『私たちにもよく分かりませんが……』

『こう、頭の中に声が降ってくるのです』

『それに従えば、万事上手く行きます』


「そんなテキトーな……」


 いやしかし、四人同時に同じ『声』を聞くなら、予言とかの超常的な現象なのだろうか?


『そ、そうでした』

迷宮王の指輪(アステロペイテス)をお返しします』

『ほんとすみませんでした』

『マジすみませんでした』


 いやだから、女神っぽい存在が『マジ』とかさぁ……。まぁいいか。


『ふむ……』


 受け取った指輪を持ち上げ、太陽に透かすようにして見るシルシュ。どうした? どこか傷でも付いていたか?


『いや……』


 にんまりと。

 イタズラを思いついた男子小学生のような顔をするシルシュ。


『ほれ、アーク』


 シルシュが指輪を持った手を差し出してきたので、思わず両手を伸ばして受け取る体勢を取る。


 すると、シルシュは目にもとまらぬ速さで俺の左手を掴み――薬指に、指輪を押し込んだ。


『結婚指輪~♪』


 いやいや、おいおい。なにをしているのか。ちょっと冗談にしては笑えない――ぬぉお!?


 背後から尋常じゃない殺気を受けて冷や汗だくだくな俺だった。師匠に、シャルロットに、メイスにミラ。振り返らなくても分かる。分かってしまう。今彼女たちはものすごい顔をしているだろう。


 そんな皆の反応を楽しみ、けらけらと笑うシルシュ。悪魔だ。コイツこそ邪竜として討伐するべきなのでは?



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