自称一般騎士
『――グガァアアァアアッ!』
「おおう!?」
俺たちを見つけるなり火炎放射してくるドラゴン。おいおい敵意高すぎだろ。……このポンコツ四人組が一緒にいるせいか?
「――結界展開」
一歩前に出たミラが防御結界を展開してくれる。神代竜の火炎放射――ドラゴンブレスなんて人がどうこうできるものじゃないはずなのだが……ミラの張った結界は、ニーズヘッグのブレスを防いでみせた。
「す、凄いじゃないかミラ!」
「ん」
ドヤ顔をするミラ。もういくらでもドヤ顔してくださいって感じだ。
『……ガァア』
ニーズヘッグが驚きの表情を浮かべている、気がする。いやさすがに爬虫類(?)の表情変化はよく分からないが。
続けてドラゴンブレスを放たないのはミラを警戒しているのか、あるいは連発はできないのか……。
「さて、どうするか?」
ポンコツ四人組は腰を抜かしているので役に立ちそうもない。ここは『軍師様』の意見を聞くとしよう。
というわけでラックに視線を向ける俺。
「逃げるしかない――と言いたいところだが、ここは見晴らしが良すぎるからな。逃げるのは難しいだろう」
「ドラゴンなら空も飛べるしな」
「あとはそこの四人組に頼んで転移するって手もあるが……」
「あー……」
ダンジョン内で転移はできないらしいが、この四人組は師匠とシルシュを強制転移させたからな。たぶんシステム側の存在なので、俺たちを逃がすこともできると思う。
でもなぁ。明らかに冷静さを失っている四人組に転移を任せるのもなぁ。慌てふためいて大失敗とかやりかねない。こいつらなら。なんかこう、シャルロットと同じニオイがプンプンするのだ。
となると戦うしかないが、ミラだってあと何回結界を展開できるか分からないし、なるべく短期決戦でいきたいところ。
う~む、師匠ならブレスの上を走って接近。そのまま『すぱーん』と首を落とせるのだが……。
「……おっ、そうだ」
一つ思いついた俺はミラに視線を向けた。
「俺の足の裏に結界を展開することはできるか?」
「? ん。たぶんできる」
「よし、じゃあ早速やってくれ」
「ん」
ミラが俺の足の裏に結界を展開してくれたので、その場で何度か足踏みを。……動きに支障はなさそうだな。
『――ガァアアァアアッ!』
痺れを切らしたのか、ニーズヘッグがドラゴンブレスを放った。万人がイメージするとおりの、口からの火炎放射だ。
――つまり、ドラゴンブレスの上を走れば、ニーズヘッグの頭部にまで到達できるって寸法だ。
「よっと」
結界の中から飛び出し、身体強化した脚力でドラゴンブレスの上を走る。最初は高温に晒されたが、ミラが追加で俺の身体周辺に結界を張ってくれたのかすぐに温度も感じなくなった。
『ガァアアアァア!?』
ニーズヘッグが驚きの声を上げ、そのせいでブレスも途絶えるが――俺はすでにニーズヘッグの頭部に至っていた。
いくら身体強化をしたところで、普通の剣ではドラゴンの鱗に傷は付けられない。師匠でもなければ。
というわけで。俺は手にした剣をニーズヘッグの右目に突き刺したのだった。
『――ガァアアアァアアア!?』
いくら鱗が硬かろうと、生物である以上は決して強化できない場所はある。
痛みで暴れるドラゴンにしがみつきながら、俺は最後の武器である短刀をドラゴンの左目に突き刺した。よしこれで時間稼ぎできるな
「ん。やっぱりバケモノ枠」




