鷲?
「――ん?」
ミラやメイスと協力し、ニワトリっぽい魔物を土魔法で封印している最中。
なにやら気配を感じた俺は空を見上げた。先ほどまでは魔物らしき影はなかったんだが……。
「鷲か?」
猛禽類っぽい生き物が俺たちの上空を旋回しているな。俺たちを獲物にしようとしているのか、それともニワトリの魔物の肉を狙っているのか……。
『――ピィイーッ!』
猛禽類独特の鳴き声を上げながら、鷲が地面に降りてきた。……敵意はなさそうだな。
そうして鷲は舞い降りたのだが――デカいな。体長は俺の身長と同じくらいじゃないか?
『ピィイ!』
俺を一瞥してから、ニワトリっぽい魔物の肉をついばんでいく鷲。いや魔物?
そのニワトリ、不死身というか回復するんだが、食べて大丈夫か? 胃の中でくっついて大暴れするのでは?
『ピィイ』
心配するな、とばかりに一鳴きする鷲。いやまぁ平気ならいいんだが。
「むっ! これはマズいよアーク君! ボクたちも肉を確保しておかないと!」
慌ててニワトリの残骸に駆け寄り、尻部分(尾羽付き)を確保。空間収納に突っ込もうとするシャルロットだった。
「なんだ? 食べるのか?」
「食べないよ! これは貴重な素材かもしれないからね! 全部食べられる前に取っておかないと!」
「素材って」
なんか冒険者みたいなことを言っているな? ……いや冒険者やっている令嬢もいるにはいるが。
「むぅ! 入りきらないね!」
さすがに『銀髪持ち』の空間収納にも限界があるのか、空間収納にしまってあるものを次々に取り出しスペースを確保するシャルロットだった。テントに、乾燥食料に、水が入っていそうな瓶に、下着を含めた着替えに――いや下着って。
まずはラックの頭を掴んで横を向かせ、俺も下着から視線を逸らす。
「ぬおぉ……グギッて、首がグギッて……」
しゃがみこむラックだが、まぁ下着から目を逸らせたから別にいいか。
「ちょ、ちょっとシャルロット様! さすがに下着を放り出すのは!」
「ん。下品」
見かねたのかメイスとミラが慌てて近づき、シャルロットの代わりに空間収納に色々収納してやるのだった。
ちなみにエリザベス嬢はというと、首がグギッとなったラックに回復魔法を掛けてやっていた。それはまぁ俺も悪いんだが、「温かい……エリザベス様の心のようですね……」「まぁ、ラック様ったら……」とすかさずイチャイチャする二人だった。爆発しろ。
『ピィイ』
そうだそうだとばかりに一鳴きする鷲だった。




