容赦ない
「さて、剣を回収するか」
普段使いの剣は師匠に叩き折られたし、今使っているのは予備。あと俺の空間収納には短刀くらいしか入っていないのだ。
(そろそろ別の剣を買いに行かないとな。やはり王都か……?)
そんなことを考えながらニワトリっぽい魔物に近づくと、
『――ケケーッ!』
「おおう!?」
頭に剣が突き刺さったまま。落下の衝撃で首が折れたまま。なんとなんと立ち上がってみせたニワトリだった。
ごぎり、と。嫌な音を立てながらニワトリの首が元の位置に戻る。
地面で見るとかなりデカいな。前世のダチョウより一回りか二回りくらい大きいかもしれない。
いやしかし、やはり注目すべきはまだ動いているということだ。
「不死身系か、超回復持ちか?」
『ケケーッ!』
俺を敵と狙い定めたのか、ニワトリが突っ込んでくる。が、単調な動きだ。
俺は難なく跳躍し、ニワトリの突進を回避。そのままニワトリの胴体に跨がり――頭に突き刺さった剣を抜き、首を落とした。
力なく倒れるニワトリ。
だが、死ななかった。
『ケケーッ!』
どこから声が出ているのか、首だけの状態で叫ぶニワトリ。そして暴れる本体。
首と本体がそれぞれ近づくように動き――接合。何事もなかったかのように復活した。
「おぉっ、なんだこれ気持ち悪いな?」
ニワトリが火炎放射をしようとするが、待ってやる義理はない。
もう一度首を落とし、今度は胴体もブツ切りにしていく。
「……うへぇ、まだ生きているのかよ」
肉片がモゾモゾと動く様はもはやホラーだな。
また接合しそうだったのでテキトーに蹴り飛ばして距離を取らせる。さてどうするかな? あまり強くないから放置して先に進んでもいいんだが。倒せるなら倒してしまった方がいい。
「……おっ、そうだ。クーマ、さっきみたいに巨大化してコイツを踏みつぶしてみてくれないか?」
『うげぇ』
嫌そうな顔をするクーマ。まぁ誰だって自分の足で『ブチュッ』とはしたくないか。
「そうなると……そうだ。土魔法で小さな箱を作って、その中に肉片を入れておくのはどうだ?」
露天風呂の周りを土の壁で覆えたのだから、そのくらいはできるんじゃないか?
俺がそう提案すると、メイスが賛同してくれた。
「いい考えかと。土魔法なら完全に密閉することもできますし。この魔物も首だけでは火炎放射ができないようですから、できる抵抗とすれば体当たりくらいでしょう。土魔法で作った箱を破壊するのは不可能かと」
肉片だとモゾモゾするだけだからな。何かを壊すことはできないだろう。
「そうと決まれば――」
念のために肉片のいくつかをぞれぞれべつの方角にぶん投げてから、ミラに頼んで土魔法の箱を作成。肉片を密閉してしまう。まずは試しに一つ。
「……とりあえず、大丈夫そうだな。あとは他の魔物に壊されなきゃいいが……」
「どうやら他に魔物はいないようですし、問題ないかと」
「……よく考えれば、この鳥以外には魔物もいなさそうだな」
というわけで。
ニワトリっぽい魔物は土魔法で封印することになったのだった。
と、なぜか顔をつきあわせるシャルロット、エリザベス嬢、ラック。
「……なんか、やってることがえげつないよねぇ」
「そうですわねぇ」
「アークは色々とズレていますので」
「「あぁ……」」
深々と頷くシャルロットとエリザベス嬢だった。なんでだよ?




