シグルドは正体に気づく
死者の軍勢により敷地内は酷い被害を受けた。その為、ヴァルハラ学園は暫く休校となる。
『________ジークフリートさんと夫婦旅行をするつもりですが、何か問題でも?』
そして新学園長となったヘルは身の丈以上のバックパックを背負い、旅立ちの準備をしていた。
『何をバカなことを........早く仕事に戻ってくれ。学園の復旧作業、それに財政問題の改善と色々として貰わなければならないんだ。』
シグルドにより、行く手を阻まれる。ヘルは「ちっ」と舌打ちをし、逃げるようとするが。
『________ヘル様、行きますよ。』ガシッ
『ガルムッ!!?』
腹心である番犬ガルムにより連行されていく。
『え、まってくだ、え、ジークフリートさん、いや、た、たすけてえええええ』
学園を破壊したことで仕事が山のよう出来上がっている。その為、新しく就任したヘルには頑張って貰わなければならなかった。
「ヘル様、私が誠心誠意サポートしますのでご精進下さいませ。」
「は、働きたくないです........ジークフリートさんに合わせてください。」
「仕事が終わったら好きにして下っていいですよ。さ、始めましょう。」
「え、えぇ!?何ですか、この量は!!」
ジークフリートという名を聞き、眉をピクリと動かすシグルド。
(あれは紛れもなくエギルの兜だ........ジークフリート、ブリュンヒルデの従者の正体はお前だな?)
ジークフリートという名前はありふれた名前である為、見過ごしていたが.......身長、体格、動き方、何よりも形を変えては入るが『エギルの兜』を見間違う訳がない。あれはネーデルラント家にある家宝の内の一つ。
(クリームヒルトの件で助けてやったというのに......挨拶に一度も来ない薄情者め。だけど許そう。私の可愛い弟だからな。)
シグルドは四兄弟の長男であり、ジークフリートを含む二人の弟達と妹を溺愛している。
(ん、待てよ......ブリュンヒルデが狂愛しているという従者というのは.....)
シグルドはフロールフ同様にブリュンヒルデに惚れていた。そしてブリュンヒルデが彼女の従者に入れ込んでいることも周知の情報から知っている。
「ジークフリート.........」
嫉妬はするが同情の感情が先に浮かぶ。弟のジークフリートは昔からその美貌のせいで女難の相に見舞われていた。そして恐らく何かしらの事故がきっかけでブリュンヒルデの従者をすることなったのだろう。
(最近手紙が届かなかったのはそのせいか)
シグルドは笑う。全て辻褄が合うのだから。
「__________安心していいよ、ジークフリート。ブリュンヒルデは私が貰い受けよう。」
ジークフリートの為にも、自分の為にも彼女を落として見せると心の中で誓うシグルドであった。
「なんで勇者は笑っているのでしょう。気味が悪いので、少し席を外します。」
「逃げようとしてもダメですよ、ヘル様。」
学園長室から抜け出そうとするヘルを抑え、再び席へと座らせるガルム。
「そんなぁ!」
涙目になりながら机へ伏せる冥界の女王なのであった。




