集結
話が少し長めです。
登場人物意外と多いなと今さらながら気付きました。
これが死者の国ヘルヘルムへと繋がる亀裂、奈落の穴。
「..........冥界の神ヘルはこの世界の裏にいる。」
通説ではヴァルハラに行けなかった一般的な死者が赴く冥府であり、刑罰がある地獄ではない。だがヴァルハラがなき今、全ての死者の魂は冥界の支配者ヘルにより統治されている。
「死者達をある程度一掃した後が深淵へと飛び降りる好機だぞ。」
一説によればヘルは死者を蘇らせる能力を有する唯一の神だと言われる。たとえ神々であっても、彼女の許しと能力がなければ復活することはできない。
(彼女を倒せばアングルボサの呪いは弱まる。)
『死の国の女神ヘル』『大蛇ヨルムンガンド』『大狼フェンリル』はアングルボサとロキとの間に生まれた災いの獣たちだ。一体一体が世界を滅ぼすことが出来る強大な力を有する。アングルボサは死の間際、世界に災いあれと呪いをかけた。子達が死なぬ限り、魔物達の出現は止まらぬようにと。
「どうする、このまま俺たちだけで冥界へと降りるか?」
グローアの言う通り、二人でヘルヘイムへと繋がる亀裂内へと飛び込んでも言いが、無駄死するだろう。地上に出る死者の軍勢の数は多いが、一介の戦士であれば軽く屠れる弱さだ。けれど、冥府内は違う。奥へと進むに連れて死者は生前に近い強さを持つと言われる。
「いいや、待った方がいい.......二人でどうにか出来る次元じゃない。」
(時が経てば経つ程、亀裂は肥大化する。それに比例して死者の力も増していく。性格の悪い仕掛けだ。)
それに恐らくだが、ヘルヘイムにて待ち構えるヘル側にも精鋭の側近がいる筈だ。過去の英雄、もしくは七英雄だったものなど。考えただけでも恐れ多いよ。スローライフ計画のために世界を破滅に導くかも知れない罪悪感に。
「は、冒険家の癖に恐れてるのか?」
「現実主義なんだよ、俺は。確かに未知の領域に冒険するのは心踊ることだろう。だがな、死者の国は別。冒険以前に敵の腹の中だろう。それも巨人スルトにより世界が滅びた世界からも生き延びた前時代の神だ。七英雄の力が必ず必要になる。」
ロキは無事なのだろうか。出来ることならばヘルヘイムへ飛び込む前に合流したい。
「___________グローア、やはりお前も来ていたか。」
背後から声が掛かる。
「ビャルキ、それにフロールヴ先輩も。」
「b」組序列一位ボズヴァル・ビャルキにこの世界のメインヒロインことフロールヴ•クラキ王太子が到着したようだ。
「じぃいいいいいいいいくふりぃいいいいいとおおおおおおお!!!」がば
ドドドドと青い閃光が凄い速度で自分の身体へと直撃する。何とか倒れないように耐え、胸元へと視線を落とすと。
「ブリュンヒルデ!!」
クリームヒルトの狂愛から逃げ、冒険者として辺境でスローライフを満喫出来ていた。が、そのスローライフを破綻させた諸悪の根源ブリュンヒルデがそこにはいた。離れろと引き剥がそうとするが抵抗が凄い。
「イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!」
赤子のように身体へと抱きついて離れない。
「ジークくんしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅき♡」
めちゃくちゃフロールヴ先輩が睨み付けてくる。欲しいなら上げますよ。むしろ貰って下さい。
(その女はお前が面倒を見ろ________)
その横で死者を浄化しながら親指を上げるビャルキがいる。
(____________だが断る)
無性にイラつく表情をしてくるな、こいつ。
「そういえば、お前は聖女の従者だったな。仲がいいのは当たり前か。」
グローアも剣を振り死者を浄化しながら納得した様子でいた。
(仲は良くないと言っておこう。)
※ちなみにではるが話している間もジークフリート達は亀裂から出現する死者達と戦っている。
「___________ジークフリート、何故私を置いて言った。約束をしたばかりでは.......おい聖女、貴様は私のジークフリートに何をしている?」
死者の亡骸が目の前へと飛んでくる。何事かと顔を上げるとクリームヒルトが死者の亡骸の山の上で自分達を見下げていた。
「レディ、クリームヒルト........」
こいつらの登場の仕方がいちいち演出がかっているのは仕様なのだろうか。
「うるさい蝿の音がすると思えばクリームヒルトさんでしたか。目障りなのであっちに行ってて下さい。」
「ほぉ、死にたいと見える。お前も死者の仲間入りするか?」
随分と仲が悪いんだな、この二人。
「ブリュンが今忙しいのが分からないのかなぁ.....頭足りてます?」
原作のブリュンヒルデは元気っ娘で前向きな性格だったけれどどうもこの世界では強気かつ性格が曲がっている気がするのは気のせいだろうか。
「お前のような薄汚れた娼婦よりは出来た頭をしているつもりだぞ、敗北者」
「言いましたね八百長姫......死者の国に行く前に」
ブリュンヒルデはジークフリートから降りると「こっちに下りて来いよ」と挑発をする。クリームヒルトはそれを受け、屍の山から降りる。そしてブリュンヒルデへ近づき互いにガンを飛ばし合う。まるでヤンキー漫画でよく見る喧嘩前ような雰囲気である。
「「お前(貴様)を先に死の国に送ってあげる(やる)!!」」
互いの拳が振るわれる。だが、直ぐにそれは二人の間に現れた「c」組担当教師ベオウルフにより止められた。
「今は生徒間で争っている場合ではありませんよ。」
ベオウルフの覇気に押され、冷や汗を浮かべつつ二人はコクりと頷く。やはりベオウルフ先生はただ者ではない。
「_________流石はベオウルフ先生。ニーズヘッグに並ぶアングルボサの呪い『巨人グレンデル』、そして『炎龍』を単騎で討伐した実力は老いていませんか。」
話しながら男が魔剣を一振すると亀裂周囲にいる死者を全滅させる。その者は美しく長い白髪を靡かせる。そしてヴァルハラ学園生徒会会長だけが羽織ることが許される白色の外套を纏っているいることからそれが誰であるのかが予測できる。
「学園最強と名高いシグルド•ネーデルラント。魔剣グラム=バルムンクの使い手。一戦交えて見たいものだ。」
ビャルキはシグルドの放つ覇気に当てられ、頬がつり上がる。もう一度言うが、登場の仕方がいちいち演出がかっているのは仕様なのだろうか。
(シグルド兄さん........なんかめっちゃ睨まれてるんだけど.....)
実兄であるシグルドが眉間にしわを寄せ此方を見てくる。
「君は確か、「c」組の.........ブリュンヒルデの従者だったね。この戦いが終わったら是非ともお話がしたいな。」
言わずとも分かるだろうがシグルド兄さんも原作同様にブリュンヒルデに惚れこんでいるようだ。
(このちんちくりんのどこがいいんだろうか......)
災いしかもたらさない聖女。引いた目で見ているのだが、ブリュンヒルデは何を勘違いしたのか勝ち誇った顔でクリームヒルトを見ていた。
「っんだよ、俺たちが一番乗りって訳じゃないのか。」
「結構な人が集まってるわね。」
巨大なランスが死者達を吹き飛ばすと多くの生徒達が姿を現す。そしてスケッゴルドとモルドさんを筆頭とし一年生の主力がこの場に集った。
「バルドル辺境伯が息女、ヘズ•バルドル!降臨!!ロキきゅん!ロキきゅんどこぉ!!」
俺も知りたいよ.......ロキきゅんどこぉ?
「今年の一年生が黄金世代だと言われる由縁が理解出来たよ。七英雄のポテンシャルには叶わないだろう。けれどそれを補う戦闘力がある。」
シグルドは感心した様子で到着した一年生達を一望する。
「現在殆どの二年生と三年生をニーズへッグ討伐に向かわせている。それと平行して死者達がウルズの泉を出ないようにルーン魔術による結界も展開させた。すまないが、君達には逃げると言う選択はない。ここが死戦と思ってくれ。」
亀裂付近ではなく学園側から大きな爆音が先程からするのはそのせいか。
(ん、ニーズヘッグ?)
ロキは倒したんじゃないのか。
「ニーズヘッグは死者の魂を好物とする。故に興奮状態にある。亀裂が出現した際にニーズヘッグが地中から這い出てきた。その対応に二年生と三年生の主力を割かせている。」
だから『噂』に聞く上級生達がこの場にいないのか。
「『彼ら』にはもしもの為に、ここにとどまって貰う。故に冥府ヘルヘイムへ行くのはこの場にいる七英雄選定者並びに序列三位以上の者達だ。それ以外の者達はここで死者達を食い止めて貰う。異論は聞かない。」
シグルドの指示に対し不満を感じる者もいるが、反論は出ない。
「それでは参りましょう。時間は限られています。」
ベオウルフ先生が最初に亀裂の中へと飛び込む。それを追うようにシグルドも飛び込んだ。
「ちぇ、モルドの言った通り居残りかよ!」
「私が「b」組に上がった後にでも序列を伸ばしなッ!!?」ばん
「生きて帰って来いよ......約束だぜ。」
「分かってるわよ.........あんたこそ死ぬんじゃないわよ!」ばん
「痛って!!?なにすんだこのくそアマ!」
「お返しよ!べーだ!」
スケッッゴルドはモルドの背中を叩き、モルドを鼓舞する。そしてモルドもお返しにとスケッゴルドの背を叩いた。
「さぁ、僕たちも行こう。美しくない世界を正しに。」
「えぇ。」
モルドとホールファグレも亀裂の中へと身を投じる。
「_________ジークフリート、先に行っているぞ。勝負は続いていることを忘れるなよ。」
グローアもジークフリートへとそう告げると亀裂の中へと飛び込んで行った。
「行こうボスヴァル、ブリュンヒルデ」
「殿下と共に」
ボスヴァルとフロールヴも亀裂へと飛び込む。
「_________お前も行け」
へらへらした顔で右腕に引っ付いているブリュンヒルデを亀裂の中へと投げ捨てる。
「きゃうん♡バイバーイ♡」
そして左腕に引っ付くクリームヒルトへと目線を向ける。
「私たちも行きましょうか、クリームヒルト嬢」
「.........私も投げ捨てられたい。」
「はい?」
「投げ捨てろ。ゴミを捨てるように。あの女にしたように。蔑む目で。今すぐに。」
はぁはぁと興奮気味に言うクリームヒルトにドン引きではあるがご希望通り投げ捨てると満面の笑みで亀裂の中へと落ちて行った。
「遅れたっす!!クリームヒルト様!申し訳ないっす!!」
レギンが息を切らした様子で姿を現す。
「ってジークフリートしかいねぇーじゃねーか!」
「お前の雇い主はもう冥府に落ちてったぞ。」
「マジかよ、」
「マジマジ」
戦闘体勢で展開してる単装砲塔5基5門がかっこいいな。
「ッ、あぁもう!ジークフリートまた後でな!!」
嫌々な表情を浮かべつつもなんの迷いもなく亀裂の中へと飛び込んでいった。
「さ、俺『達』も行こうか___________ロキ」
ジークフリートを背後から抱き締めるように出てくるロキ。
「いつから気づいてたのって質問は聞かないで置いて上げる。」
雰囲気的にいそうだなぁって思って言って見たけど本当にいた件について。
「最初から分かっていたさ。」
「あっは!ジークフリート、詭弁はペテンだよ。道化師の才能でも見いだしたかい。」ひっひっひ
嬉しそうに語るロキ。耳元で話しくるせいかむず痒い。
「さぁヘズ•バルドルに見つかる前に僕たちもヘルヘイムへ向かおう。ふふ、僕のジークフリート、ファフニールのお宝は見つけたかい♪」
ロキのお馴染みの台詞を聞き、頬が上がる。
「____________今から見つけに行くんだよ!」
ロキと共にヘルヘイムへ繋がる亀裂へと飛び込む。




