序列一位同士の戦い【後】
(ボズヴァル・ビャルキ........何故、この学園にいる?)
フロールヴ・クラキ直属の戦士であり、最強の『ベルセルク』。竜退治や巨人退治、そして有翼の魔獣退治などの数々の武功をあげたクラキ国最強の英雄。
「________ほう、中々の殺気を放つ。以前は暗殺者でもしていたか?」
剣を鞘から抜き、ほくそ笑むボスヴァル。その見透かしたような瞳、苛つかせてくれる。
「何故、クラキ国最強の英雄がこの学園にいる?」
ロキは冷や汗を浮かべる。この男は恐らく学園長を除いてこの学園で頂点に存在する戦闘能力の持ち主だ。
「殿下がいる。それ以外に理由などない。」
ならなんで二年生じゃないのだと心の中で毒を吐く。フロールヴは自分達の一学年上の生徒だ。
「________両者、準備は良いですか?」
ベオウルフ先生が両者に対し、確認を取る。
「沈黙は金雄弁は銀」
「始めろ。」
ボズヴァルは太刀の様な剣を鞘から抜かず、鞘に入った状態にまま中段に構える。ロキは曲剣を帽子の中から出し、くるくると剣を回す。
(彼の代名詞はあの魔剣だ.......異様な唸り声を上げ、勇士たちすらも竦ませる。三度抜けばその剣は運命によって失われるって噂されていたけれど)
真偽は不明だ。けれど運命は変わらない。僕がこの戦いに勝つ。勝たなければならない。ジークフリートが頑張れと言った。言ったんだ。希望にそう。必ず成し遂げる。
(ジークフリートの言うことはなんだって聞く......僕はジークフリートの為だけに生まれて来たんだ........)
友達となってくれた。親友となってくれた。愛している。親愛以上に敬愛している。
「それではクラス対抗戦第四試合、はじめッ!!!!」
ベオウルフ先生の掛け声が闘技場へと響く。
「__________様子見としよう。」
鞘に入った剣で殴りつけてくる。
(速い......けれど)
避けられない速度ではない。その攻撃を難なく避け間合いを離れる。
ズガァアアアアアアアアアンンン
闘技内に大きな爆発音、そして砂埃が待った。
「あぁ、この程度であれば避けられるのか。」
鞘に入った剣が地面へと大穴を開けた。どれ程の膂力を秘めているのかと畏怖する。避けなければミンチになっていた。
(..........なぜ、精神干渉が出来ない)
ロキは困惑していた。
(視覚と聴覚へは干渉可能。けれど初撃に置いてしっかりと僕を見据えて剣を振り下ろした)
『道化師』の覚醒能力を説明しよう。対象者の精神と視覚/聴覚に干渉できる精神支配系の頂点を飾る職業だ。気づかないうちに仲間へと攻撃をしていたり、視覚と精神に干渉を掛けることで幻覚を見せたり幻聴を聞かせたりする事も可能。欠点として複雑なことを刷り込むことはできない。自身への精神干渉も可能で精神攻撃による攻防に置いて右に出る者はいない。のだが、ボズヴァル・ビャルキに『道化師』としての能力が働いていない。
「__________さっきからちくちくと私の魂に触れようとしているが無駄だ」
ボズヴァルは剣をロキへと向け告げる。
「私の職業適性は『狂戦士』。精神支配の類いは完全にシャットアウトする。視覚を奪うか?聴覚を奪うか?くく、やめておけ。本物の戦士は本能で敵がどこにいるのか理解出来る。私に勝ちたくば正面突破しかないぞ、道化師。」
ロキにとっての天敵。狂戦士は元来理性を失い、死に逝く時まで戦い続ける。しかし、覚醒をした場合に置いては理性を保ったまま圧倒的膂力に不死性を振るう事が出きる。『狂戦士』に選定された人間は大抵の場合、覚醒以前に戦場で死ぬ。だがボズヴァル・ビャルキは違う。
「___________化物め」
ロキは嗤うしかなかった。勝てないという感情が思考を埋め尽くす。影に入ることも自身を化物に見立てることも出来ない。純粋な格闘戦で目の前の戦士を屠らなければならない。
「暗殺者は観測者、戦士は軽視、落ちろ堕ちろよ生者必滅」
一流の暗殺者としての側面も持つ。通用するかは試して確かめる。
「は、はは!これ程の使い手がこの学園にいたか!」
背後を曲剣で切り裂かれ、次に太ももに突きが入る。剣を振るうがロキを捉える事がかなわない。だが、それでもボズヴァルは全ての攻撃を受け入れていた。
「はぁ.........はぁ.....」
ロキは闘技場にある柱の一本に乗り、ボズヴァルを見下げる。
(身体中を切り刻んでも直ぐに回復する。それに剣のガードにある三つの宝玉の内の一つが少しずつと黒色へと変化している。)
曲剣を逆手持ちに構え、右腕を地面につける。
(あの宝玉が完全に黒に染まる前に決着をつけないと負ける。)
道化師としての感が棄権信号を送っていた。
「まるで獲物を狩ろうとする狼のようだな。」
獣のように闘技場を駆け巡り曲剣で攻撃を加え続ける。反撃は来るが、ロキにとってボズヴァルのスピードは取るに足らないものだった。故に当たらなけれどうと言うことはないのだ。
「ロキの姿が見えねぇ」「ロキくん、あんなに強かったなんて」「次元が違う」
控えにいるクラスメイト達は口をそろえ、ロキの強さを讃えていた。
(くそ、殺しきれない!!)
ロキは焦る。戦闘で此処まで緊迫とした気持ちを味わった事が過去一度としてなかった。
「ぐっ、これは試合だぞ、道化師、だが許そう。若い強者と戯れるのも一興と言うもの」
急所への攻撃はベルセルクの本能が反射的に防いでいた。故にロキは決定打を与えられずに体力だけを消費していた。
「______________刻限だ。」
剣の宝玉が黒色へと完全に染まる。そして鞘の封が解放され美しい刀身が外界へと晒される。
「ぐっ」
ロキは大きく後ろへと飛び、距離を取る。
(剣が解放された?能力はなんだ.......探れ、知略を張り巡らせろ、僕は悪神ロキの生まれ変わりだろ)
闘技場を駆け回る際に罠を幾重にも仕掛けた。こちらに来ようとすれば罠が発動し、ルーンの魔術による爆発が対象者を襲うことだろう。
「_____________________」
だが罠は発動する事はなく、試合の終了の鐘がなってしまう。
「勝者、「b」組序列一位ボズヴァル・ビャルキ!!!」
闘技場の舞台は【完全凍結】されていた。ロキもまた氷結され、氷の中にいた。
「_______________道化を演じられて良かったな、トリックスター。」
ヘズ「.......ロキきゅん」




