え、ここ乙女ゲー世界ッ!?
完結です!!
ご愛読、ありがとうございました!!
「私も一応、老化はしているよ。ただ、魔力量が常人の比ではないからね、若い状態がこんなにも続いているだけなんだ。」
スクルドとミストは世界樹の傘下で優雅にお茶を嗜んでいた。
「それだけじゃないだろ、お前が若さを維持し続けているのは........まぁ、僕もお前の事は言えないけどさ。世界樹の加護と、ダーインスレイブの呪いが上手く絡み合ってほぼ不死身だし。老化も進まないし、世界樹が健在である限り、その視下では死ねない。だから精神に異常をきたし始める前に守り手の役目を誰かに譲渡しないとならない決まりがある。」
ミストは紅茶を口に含み、楽しそうに周囲を走り回るフェンリルへと目を向ける。
「それじゃあそろそろ後継を探すつもりなの?」
「そうだね。そろそろ疲れて来た。アースガルズにジークフリートはいないし、カーラ達に会いたい。それに.........お前の顔も見飽きたしな。」
冷たいことを言うと苦笑を見せるスクルド。そして椅子から立ち上がり、フェンリルを手招きする。そして嬉しそうに近付いて来たフェンリルの首を擦る。
「スクルド.........お前はいいの?」
ミストはスクルドへジークフリートに会いたくはないのかと問う。
「約束したからね。」
随分と昔に約束したのだ。今度は殺すのではなく、救う為に命を燃やせと。
「..........冥界、ヘルヘイムに行ったらフィンくんに謝って置いてくれるかな。彼には随分と汚い仕事をさせてしまったからね。」
【断罪のフィン】と比喩される程にその力を神聖国の為に使ってくれた。そして先の大戦で大きく貢献したのは彼の功績が大きいだろう。多くの歴戦の猛者達を聖光の力で浄化し、ついには覚醒能力の先を行使し、冥界の女王ヘルの進撃を数分程度ではあるが、その命が尽きるまで食い止めたのだ。
「言われなくてもフィンには最初に会いにいくって決めてた。彼奴はいつも自分を殺して無理をするからさ...........」
世界へ再び境界線(障壁)を張れたのはフィンが時間を作ってくれたおかげである。この事実を知るものは少ない。
「............せめて私くらいは労ってやらないと可哀想じゃん。」
スクルドやミストは彼こそが真の英雄であると認めている。
「そうだね.........ありがとう、ミスト。それじゃあ、私はそろそろ行くよ。君がヘルヘイムで達者に過ごしてくれることを心より願っている。」
世界樹から去ろうとするスクルド。だが、ミストにより呼び止めれる。
「ねぇ.........フェンリルに何したの?」
一応、人型は保っているのだが、動きや仕草が愛玩犬そのものであるのだ。言葉も人語を話さず、犬狼のようにワンワンと鳴いている。ミストはジト目でスクルドを見る。
「____________________秘密♪」
「___________まぁ、そう上手くはいきませんよね。」
ヘルヘイム城のテラスから夜明けを眺める。
「わざと負けて置いてよく言うよ。」
隣には愛しのジークフリートが並び立つ。
「さぁ、何を言っているのか分かりませんね。私は私の全力を持って世界を一つにしようとした。そして失敗した。それだけの話です。」
どこか疲れた様子を見せる冥界の女王。それを案じてか、ジークフリートは彼女の腰へと手を当てる。
「人の可能性を一番信じているのはあんただ、ヘル。」
彼女は人そのものではなく、人がもたらす可能性を信じている。生者は時に奇跡を見せ、不可能を可能にする。ニーベルンゲンの災いでもそうだった。全知全能にも等しいヘルの進撃を生者が数分間止めた。その事実だけでも称賛に値する。
「...................そうですね。そうかもしれません。」
ヘルはジークフリートへと顔を向け、心の内を開ける。
「私や封印を施された異端な者達を除き、ほぼ全ての神々や巨人族は死に絶えました。強大な力を持った父でさえ、ラグナロクには抗えなかった。」
にも関わらず、矮小な人種は生を謳歌している。
「矛盾しているとは思いませんか?人の存在は異質だ。」
人の事を認め、可能性を最も信じて疑わないのは自分自身であると冥界の女王は言葉を口にする。
「だけど、同時に私は人に恐怖も感じているのです。」
成長を止めない人間に恐怖を感じている。今、この場で人間を滅ぼさなければ近い未来に根絶されるのは「死」と言う概念だ。
「私の目指したものとは逆に、死なない世界を作り上げてしまうのではないのかと...........」
永遠の命を得てしまう可能性すらある。
「ジークフリート、貴方の事は勿論愛しています。ですが、貴方の存在も畏怖すべき存在としても捉えています。冥界の絶対神である私の意思に改革を与え、人類にとってのターニングポイントを作り上げた異物。自覚した事は在りますか?」
ジークフリートは何も言わない。自分がこの世界にとって本当に異物である事を自覚しているから。
「俺は..........難しい事は分からない。ただがむしゃらに生きてきただけの人間なんだ。元はスローライフを送りたくて頑張って住みやすい世界を作ろうとしてた。人は多分......そうやって短い人生の中で自分に何が出来るのかを模索して進むんだ。そして最後まで頑張った奴が報われるように出来てる。」
それが理想論であることも知っている。夢半ばで倒れる者も大勢といる。だけど、人は人の可能性を信じて進まなければ何も切り開けはしないのだ。
「例え、その人が駄目でも次の人が繋ぐ。そうやって人の歴史は無限に成長していくんだ。」
第三者から見たら自分のしてきたことは人類史にとってのターニングポイントなのだろう。だがそれはただの通過点にしか過ぎないんだ。
「なぁ、この世界が乙女ゲーの世界って知ってたか?」
唐突にそんなことをヘルへと問い掛けて見る。ヘルは何処か熟考した様子で固まる。
(ふっ、知っている訳がないよな。)
この世界に転生してから随分と経つ。自分ですら、この世界が乙女ゲー原作であることを忘れるくらいだ。
「________________え、ここ乙女ゲー世界ッ!?」
冥界の女王ヘルは驚いた様に声を大きくしてそう確認する。
(..............確認する?)
待て待て、可笑しい。なぜ、彼女が乙女ゲーを知っている?
「はい?」
その存在を知っているとすれば彼女は..............
「え?」
互いに目を合わせ、何度も確認するように首を縦に振るう。
「「えええええええええええええええ!!!?!」」




