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生者と死者

「_____________世界が闇に染まっていく。」


カーラは戦場の中心地で空を見上げる。そして彼女の足元から魔方陣が浮かび上がるとファフニールが召喚され、その背へと騎乗した。


「飛翔しろ、ファフニール。」


上空に上がったカーラはヘルヘイムとヴァルハラが融解し、一つになろうとしている事実を知る。


「.........ジークフリートが死んだんだ。」


直ぐに事態を把握する。冥界の女王ヘルはアースガルズへの侵攻を本格的に開始したのである。




「っ、亡霊どもがああああああああ!!!!」




地上の一部が血色の霧に包まれる。


「あれはダーインスレイヴ............」


そして霧が晴れると、肉塊と化した死者達の姿があった。その死骸の上で荒く息を吐き出すピンク髪の少女。


「ミスト、なのか?」

五十年前と比べ、若干身体が成長している。それに髪型がショートからハーフアップに進化していた。


「なっ、ファフニールッ!!!」

「ま、待てって!俺だよ、俺!!」


直ぐにファフニールを降下させ、背から顔をひょこっと出すカーラ。


「..........................カーラなの?」

「俺以外に誰に見えんだよ、へへって........何で泣いてんだよ!!?」


ミストは嬉しそうに小さくバカっといい、カーラへと抱きついた。カーラはしょうがないと言った様子でミストの頭を撫でる。


「子供扱いすんな。」


そしてミストは何かを探すように周囲を見渡す。


「____________エイル姉は一緒じゃないの?」


カーラは右人指し指を北へと向ける。


「あっちで物凄い爆音が鳴り響いてるだろ?あれ、エイル姉とシグルド会長が暴れてんだ。」

「暴れてるって........もしかして」

「あぁこの五十年、エイル姉はずっとシグルド会長と戦ってんだよ。」


死者は無限の命を持つ。聖光で滅しない限り浄化されない。故にエイル・ワルキューレは挑み続けていた。



「____________________いい加減、諦めたらどうだ?」



シグルド・ネーデルラントはエイル・ワルキューレの攻撃を軽く受け流す。徒手空拳による激しい戦闘が繰り広げられていた。


「いい加減、私に敗北してはどうですか。」


冥界に落ちたエイル・ワルキューレは自身の弱さを嘆き、叫んだ。ジークフリートと結ばれる筈の運命が失われたのだ。絶望の感情と共に途方もない程の怒りが芽生えたのである。


「周囲を見ろ。私達はアースガルズにいる。此処は冥界ではなく、ヴァルハラ大陸だ。」

「だからなんだと言うのですか。私は貴方に勝ちたいと何度も言いましたよね。貴方に勝たなければ私はジークフリート様に合わせる顔がありません。」


攻撃の手は緩めず、ひたすらと戦闘を続行するエイル・ワルキューレ。シグルドは溜め息を吐き出し、戦闘に集中する。




「うわ、まだ戦ってるよ........もうあれから五十年も経ってるのに飽きないよね。」

「シグルド・ネーデルラントの方は死んだ魚のような目をしながら、エイル・ワルキューレの相手をしているように見えるが...........」



ディートリッヒ・フォン・ベルンとスヴィプダグ・グローアは遠目から彼女らの戦いを楽しむように観察していた。


「どうする、グローア?僕達も生者側について戦う?」

「既に死に人である俺達が介入すべき戦いではないな。ジークフリートも既に死んでいる。スコーネの女王に肩入れする義理もない。」


その場へと腰を下ろし、二人は高台から戦場の行く末を見守るのである。







「んんんんがあああああああああ!!!!!」


襲い掛かる死者達を凪払い、戦場を狂戦士のように駆ける乙女ゲー主人公の姿がそこにはあった。

「ブリュンヒルデも死者なんだから襲って来ないでって言ってんでしょうがぁあああああ!!!!」


聖光に惹かれ、近付いてくる死者達を浄化していく。


「ブリュンヒルデ、その雑魚どもを早く片付けろ。ジークフリートに会いたいのだろう。」

「分かってるわよぉ!!!もぉ、本っ当にうざったい!!!」


死者達は蛾の様に光であるブリュンヒルデへと集まっていく。クリームヒルトはそれを少し離れた場所で見ていた。


「聖女殿、当方が助太刀致しましょうか?」


そしてクリームヒルトの隣には盾を構えるランドグリーズが控える。


「よい。あやつに群がる害虫どもはあれに浄化させてやればいい。少しはストレス発散になるだろうからな。」


クリームヒルトはクスリと微笑を見せ、暴れまわるブリュンヒルデへと視線を戻すのだった。








生前、世界蛇の本体を正面から斬り伏せ、死に至らしめた大英雄。


「はぁ......はぁ.........くそ、斬っても、叩いても直ぐに次が出てきやがる!!」


スケッゴルドは汗を拭いながらもひたすらと大斧を振るい死者達を再起不能にしていた。


「もぅ!無理に戦わなくていいってあんだけ言ったのに何で戦ってんのよ、あんたは!」


そんな彼を支えるのは赤髪の乙女。軽騎士の職業適正を司る。相手の死角へと瞬間移動が出来る覚醒能力に持を、暗殺を得意とする。


「死者と生者は同じ世界に存在しちゃあなんねぇんだよ。冥界の女王は学園時代から死という概念を世界から消したがってただろ。だからアースガルズとヘルヘイムをくっつけて世界を一つにしようとしてやがる。」


ヘルヘイム城の城門前でジークフリートと手を繋ぐヘルの歓喜とした様子を見れば理解できる。


「あの女王様は待ってたんだ。ラグナロクの再来全てが冥界に堕ち、ジークフリートが天寿を全うするのを。」


死からの恐怖から人類や生物が克服するには「死」そのものを取り払う必要がある。


「____________我が生涯の宿敵、スケッゴルド。」



死者達を凪払った先にいたのは四聖蛇公へヴリング。生前に討伐した世界蛇の尖兵だ。


「いい加減、俺に喧嘩を売るのをやめろって言ってんだ!!」


処刑人の剣を上段から振るうへヴリング。それを大斧で受け止め、足蹴りでへヴリングを後退させる。その見事な対応に満面の笑みを浮かべるへヴリング。


「気持ちの悪いおっさんだぜ......ボスヴァルのストーカー程じゃねぇが、お前も大概だって事に気付いた方がいいぜ。」


スケッゴルドは気色が悪いと言った様子で大斧を肩に乗せる。そして隣に並び立つようにスカル・モルドは白銀の刀身、黄金の柄、見るもの全てを惑わせる魅了を放つ魔剣をへヴリングへと向けた。


「生前の借りを此処で返させて貰うわ。」

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