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新時代

後日談は全六話です。

「_________おぉ勇者よ、死んでしまうとは情けない。」


RPGで聞いたことがある台詞が頭に響く。それになんだか聞いた事がある声だ。


「...............」


目が覚める。自分は老衰死した筈。手元を見ると皺はなく、若々しい肌が目に入る。


(身体が若い頃に戻っている............まさか、逆行したのか?)


状況を把握する為に動き出そうとするが腰に絡み付く手により、元の位置に戻されてしまう。


「目覚めなさい、勇者よ。旅立ちの日は近いのです。」


オーケー。自分はどうやら誰かの膝に上に座っているらしい。そしてこのロールプレイを楽しんでいる声の主は一人しかいない。



「______________久しぶりだな、ヘル。」



ヘルヘイムを支配する冥界神。ラグナロクの再来が一柱。


(忘れていたよ。随分と昔に約束したんだったな。)


随分と昔過ぎて、思わず苦笑してしまう。

「えぇ、お久しぶりです。盟約は果たせそうですか。」


ジークフリートはヘルへと顔を向け、小さく笑った。


「果たすためにここにいる。」

「随分と口が達者になられたのですね。」


ヘルは頬を染め、乙女のような顔を見せる。完全に雌顔という奴である。


「貴方の死後は全て、私に帰属します。反論も反抗も受け付けません。これは確約された独占権なのです。私は今よりジークフリートを保有します。」

「あぁ、約束だからな。ようやくこれで........スローライフを送れるよ。」


ジークフリートはヘルへと体重を預ける。ヘルはそれを愛おしいと思い、抱き締める力を強めた。


「............スローライフ?」


ヘルは間を置き、疑問とした表情でジークフリートへそう問い掛ける。


「何を言っているのですか。ようやく我が夫が冥界へ凱旋したのです。」


ヘルへと手を引かれ、玉間を歩く。そして彼女はキラキラとした目でまだまだ忙しい日々は続きますよと言ってくる。


「この日の為に盛大な宴を用意しました。」


向かう先は玉間を出るための巨大扉。両脇には巨大な骸骨兵が聳え立つ。そして骸骨兵らは自分達が出られるように巨大扉を開門した。目映い光が差し込み、思わず手で目元を覆うジークフリート。


「既に宴は始まってます。新郎新婦、御入場と行きましょう!」


ヘルは悠々と外へと飛び出る。それに引っ張られる形でジークフリートも外へと連れ出される。




「__________________________っ、なんだ、これは!!?」




ジークフリートが目にしたのは宴などではなかった。


「アースガルズとヘルヘイムの境界線をなくした宴、皮肉を込めて私はニーベルンゲンの災いと呼びましょう、ふふ。」


そこに広がるのは地獄であった。生者達が冥界の死者に蹂躙されていく姿が目に焼き付く。


「真の平和に生者はいりません。人は生が在るからこそ、抗い争うのです。ならば、その根本から変えてしまえばいい。」


冥界の女王ヘルは世界が変わっていく姿を達観とした様子で眺める。その隣でジークフリートは唖然とする事しか出来なかった。


(俺が、スクルドが、ミストが........この五十年を掛けて作り上げた平穏な世界がこうも簡単に崩れ去っていく。)


ジークフリートは駆け出そうとするが、ヘルに手を強く握られている為、前へと動き出せない。


「くっ、ヘルッ、俺はこんな「死ぬ時迄は待つと言いましたよね。私を選んだのはジークフリート、貴方です。アースガルズの王よ、いいえ、次期冥王ジークフリート________貴方はこの世界が一つになる姿を見る義務がある。」


世界蛇が海で蠢き、銀狼が国を喰らう。血に飢えた冥界の戦士達は闘いを求め生者と死合う。神話の闘いが目の前で混沌のように行われている。最早、ヘルヘイムとアースガルズの隔たりはなく修復は不可能。完全に一つの世界へとなろうとしていた。


(...........スクルドが頑張って応戦はしてるが、時間の問題だ。)


死者の数が多すぎる。物量で押しきられる。そうでなくとも隣で冷酷な目をしたヘルが今も尚、領域を広げ続けている。アースガルズ全土を包み込んだが最後、生者は抵抗の余地なく虐殺される。あのスクルドでさえ、ヘルの箱庭と化した領域では赤子も同然になる。


「______________くく、あははは!!!これこそ、新時代の幕開けなのです!!生者のいない世界へようこそ!!」

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