まだまだ先の話になりそうだ
「___________やぁ、ジークフリート。」
スコーネの女王との戦いは苛烈を極め、人類は国落とし(グングニル)の影響で1/3まで減少してしまった。そして最後の十解の一人であるロキもまた旅立とうとしていた。
「あぁ、ロキ。」
目が覚めた道化師。日射しが部屋を照らす。カーテンは風に揺られ、部屋に新鮮な空気が流れる。
(もう、目も見えていない..........生きていることすらも奇跡に近いんだ。)
スクルドは外に待機させている。ロキには彼女の存在は黙っておくべきだろう。
「手を握ってくれないかい。」
「あぁ........」
手を握るとロキは微笑を見せてくれた。
「やっぱりジークフリートは暖かいね。」
「..............あぁ。」
涙が自然と目からこぼれ落ちる。
(..............ロキは死ぬ。バカな俺でも分かる。)
心が痛い。穴が空いたような感覚に陥る。
「君を泣かせてしまった。悲しませてしまった。一人にさせてしまう僕を許しておくれ。」
弱々しい力で自分の手を握り返す。
「もし、僕が僕の寿命を騙せるのなら、今すぐにでも延命して君の隣に居るのにな................」
ロキは少し悲しそうな表情を見せる。そしてゆっくりとジークフリートの方へと顔を向け、問い掛ける。
「...............ジークフリート、ファフニールのお宝は見つけたかい?」
お馴染みの台詞を優しい笑みを浮かべながら口にするロキ。ジークフリートは涙を拭い、答える。
「あぁ......あぁ........見つけたさ.........ロキ、お前が俺にとってのファフニールのお宝だ!」
ロキはその言葉を聞き、満足したのかゆっくりと目を閉じる。
「.............うぅ、うう...........」
ジークフリートはその場で泣くことしか出来なかった。
「この世界の人口は1/3まで減ってね。廉太郎はこの先、どう世界を、神聖国を立て直して行く気なのかな?」
トゥーレの玉座にて、スクルドと会話をかわすジークフリート。
「_____________お前がいる。」
最凶災厄が膝の上にお姫様抱っこをする形のように座っている。
「私を利用するつもりなんだ。」
魔力も全快し、覚醒能力も使い放題。この女に勝てる人間はもうヴァルハラ大陸に存在しない。
「あぁ、依存すんなって忠告をしたにも関わらずベタベタしてくるからな。もうその依存心を使うしかないだろ。」
「そういうこと思ってても口にしないのがかっこいいのになんで言葉にしちゃうかな。」ちゅ
「お前の距離がすげぇ近いから言ってんの!話しながら頬にキスしてくんな、クソ女!」
スキールニルと別れてからはずっとこのような調子だ。
「.........まぁ、十解は実質解体だ。あれ程の精鋭はもう神聖国にはいない。なら、引き継ぎとして新たな将が必要になる。四天王なんて我が儘は言わない。強い奴が後二人加わってくれればいい。」
その新たなる三名を『三光聖典』と呼称し、神聖国を導いてくれればいい。
「廉太郎ってそう言うの好きだよね。神聖国の正式名と言い、十解(フィンブルの冬)といい.......中二病?」
「.......剣と魔法の世界に来たら男の子は誰だって中学生に戻るんだ。」
「実年齢、とっくに四十は越えてるでしょ?」
「それ言ったらお前だって........はい、すいません。もういいません。」
鬼のような形相に萎縮してしまう。
「まぁ、大きな戦は起きないだろうが、十解という指導者が消えたことで各地で小競り合いが起きる可能性が高い。だが幸先が良いことに一人目には目星がついてる。鏡影士のフィンだ。」
ヴァナヘイムで行った闘技大会で参加した戦士の一人。鏡影士の能力は他者の動きを視ただけで模倣する事が出来るというもの。
「フィンが長命種だったら、お前を倒し得る驚異になっただろうな。」
意地悪に笑って見せる。その笑みを見たスクルドはにぃと自分以上に深い笑みを見せ、頬をつついて来た。
「アスラウグや魔帝がいないから私は倒せないよ~♪」
スクルドの言う通り、彼女に単体で勝てる者はいない。それ程までに彼女はラスボスとして完成している。
「私とフィンくん、世界樹の守り手ちゃんでいいじゃん。鬼剣士の職業適正にダーインスレイヴ保持者って中々強いよ。それに見た感じ、ダーインスレイヴを自分のものにしてるし。十解にいたら上位組確定の実力者だ。」
スクルドの言う通り、ダーインスレイヴを完全に使いこなす使い手は最強と言ってもいい。デメリットも発生せず、吸血量も自由自在。鬼剣士との相性も抜群。最早、欠点がない程に完成された戦士だ。ただ一点、断られる可能性も高い。
「世界樹の守り手をしているからなぁ...........」
世界樹の守り手。元は兄であるシグルドが担っていた役職。この大樹こそがヴァルハラの核であり、心臓だ。何者にも害されてはならない。故に守り手は絶対に必要なのだ。
「砲台装置のレギンくんに置き換えればいい。近距離、遠距離に優れた彼ならば守り手としては申し分ないでしょ。それに断れば私のドールマスターで無理矢理と従わせてもいい。」
「それはやめてやってくれ。」
命の恩人にそんな扱いは出来ない。それに学生時代の旧友でもある。
「土塊の巨人兵って総勢で何体出せるんだ?」
スクルドはその手があったかと手をポンッと叩く。
「自立型だと三体が限界だね。手動で操る場合はその倍の六体は同時で操れる。」
本当に規格外な奴だと心の中で思いつつ、世界樹の守り手は自立型に任せるようスクルドに命じる。
「はぁ..............俺のスローライフはまだまだ先の話しになりそうだ。」




