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依存するな

スキールニルは獲物を見つける為に校内を散策する。絶対に逃さないと言う意志がその瞳の奥からは感じられる。


「この世界はジークフリートの箱庭だ。俺やお前の出る幕はないんだ。」


自分の事を主人公と呼ぶ親友。彼の目線からはそう見えてしまうのだろう。だけど、自分はそうとは思わなかった。


「俺は主人公なんかじゃない。そんな、大層な存在じゃないんだよ、廉太郎。」


生まれ持った容姿に惹かれた雌蜂が寄ってくるだけだ。性格を考慮して近付いて来るわけじゃあない。


「そんな偽りだけの関係なんて必要ない。俺は、俺を見てくれる人が大切なんだ。」











(こいつ、異様に距離感が近いな.......)


スクルドに被害が及ばないよう、先ほどまでは守るように抱えていたが........何故、彼女は引っ付いているのだろうと疑問が頭に浮かぶ。


「なぁ」

「はぁ?なに、廉太郎?」


下の名前呼びになってる............。


「近いんだが、」

「別に普通でしょ。意識しないでくれる、キモいから。」


行動と言動が合っていないのだが.........。


「言ったよな、俺には依存しないでくれって。」

「してないけど。自意識過剰なんじゃない。」


ぎゅっと腕へと引っ付く力が強くなる。


「いやいや、俺に乗り換えんな!」

「あんたが自分の好きに生きればいいって言ったんでしょ。」


スクルドを自分から引き離そうとするが、頑なに離れない。


「ねぇ!!痛いんだけど!!」

「こっちの台詞だわ!!離れろ、クソ女ぁああああ!!!」


........疲れた。放置の方向で行こう。ここで無駄な体力は使いたくない。


「見せてくれるんでしょ。ジークフリートが目指したスローライフって奴を。なら、三三三に早く勝って説得してくれないかな。」


見せてやる以前にお前たちにめちゃくちゃにされたんだがな.......。


「まぁ、更正してやるって啖呵を切った以上は俺は勝つよ。」


勝つ。スキールニルに勝ち、説得する。


(目に前にいる夜桜、スクルドはようやく吹っ切れてくれたのかお前の執着心が薄れているよ。)


新たな依存先が見つかったからな(絶望)。だが、それでいい。お前はもう何者にも縛られない人生を送れるんだ。


「鴉羽.........もう、休んでいいんだ。」


この世界では自由でいろ。俺への義理なんか果たさなくていい。十解になどならなくても以前のように友人として接してくれればいいんだ。


「_________________ようやく見つけた。」


スキールニルの殺意は相も変わらずスクルドへと向けられる。


「随分と仲が良くなったようだね、ジークフリート。洗脳は........されてない、か。ではなぜ........そうまでしてその悪魔を庇い立てする。」


スキールニルはジークフリートに対しても怒りを感じ始めていた。


「鴉羽三三三と山田廉太郎を殺したのは紛れもない夜桜雅だ。そしてようやく軌道に乗り、国として機能してきた神聖国は壊滅状態にある。ヴァルハラ大陸全土を視ても戦闘の影響で多くの命が失われた。先の国落とし(グングニル)は人を何億と殺す禁忌のルーン魔術だ。死者の数は統一戦争の比ではないんだよ。」


スキールニルは冷めた目でスクルドへと指を指す。


「私情だけでなく、世界にとって殺すべき対象なんだ。ジークフリート、理解してくれ。ここで彼女を討たなければ後悔をすることになる。」


ジークフリートはふっと小さく笑い、スクルドの前へと立つ。


「それでもいい。俺もお前も好き勝手にこの世界を歩み、挙げ句の果てには国の王様なんてしてる。こいつもこいつでお前との繋がりを断ち切れずにこの時代まで生き、混乱をもたらした。なら、最後まで好きにやろう。それこそ、後悔がないように。」


ジークフリートは魔剣を構える。


「ジークフリート..........」


スキールニルは苦悩とした表情を見せる。


「三三三............私は諦める。もう、ストーカー染みた行為はしないと約束する。ルーンで契約を結んでもいい。」


幼馴染として、ただの友人に戻りたいという願望もあるが、それは傲慢な考えだろうと自分を律する。


「っ..........なんでっ.......なんで今さらそんな事を言うんだ!!お前は.........くっ、クソッ!!!」

膝を着き、地面を殴る。そして夕空の情景が崩れていく。


「...........廉太郎と三三三の様な関係性を築くべき立場にあったのに......私は私の感情を優先させてしまった。一人舞い上がる自分に対してさ、三三三は何処か上の空だったよね。私と話す時は作り笑いで、それでいて廉太郎と話している時は心の底から楽しそうにしてた。それがとても羨ましくて.....妬ましい......ただ、その感情が募りに募って私は...........止められなかった。歯止めがきかなかった。」


世界は崩れ、アングルボサの呪いが広がる崩壊したヴァナヘイムへと回帰する。


「昔の様に二人で笑って過ごす毎日が.........本当に楽しくてさ、手放したくなかった.......」


スクルドは胸に手を当て、真っ直ぐとスキールニルの目を見る。


「頭の中がぐちゃぐちゃで........誰が勝っても文句は言わないなんて心にも思ってないことを口にして.........気付いた時には他の子や廉太郎、三三三を殺していた。」


自分の手のひらを見つめる。


「手についた血の感触を今でも鮮明に覚える。もう、大昔のことなのに..........私は私の罪の重さを忘れられずいるんだ。」


ぎゅっと手を握り締め、眉間に当て、目をぎゅっと瞑る。


「私が今この時まで生きてきたのは鴉羽三三三という人間を好きであった事を忘れたくなかったから。盲目的に狂信的に、それを生き甲斐にする事で生きてられたから。」


思考回路が常人ではいられない。普通であればある程、より狂ってしまう気がした。だから、自分に強迫観念にも近い枷をつけて、生きながら得て来たのだ。


「傀儡使い(ドールマスター)。それが私、スクルドが冠する職業適正。覚醒能力は生物、無生物を私の傀儡とする能力。意志に関係なく身体の主導権を握れる。まるで私の願望を現実化したような能力だよね。卑劣で卑屈、そして人の尊厳を踏みにじるような最悪の職業適正。」


対抗策があってようやくスタートラインに立てる。だが、覚醒技を封じて尚もスクルドは先の様なルーン魔術による攻撃手段を持ち合わせる。単身で彼女に勝つ事はほぼ不可能だろう。


「_________アスラウグ・ロズブロークの気配が消えたね。」

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