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夜桜

「_____________スルトの下火ッ!!」


炎弾が幾重にも枝木のように分かれ、教室にある学習机を巻き込みながらスキールニルの元へと向かっていく。


「この程度の下級ルーン魔術で俺をどうこう出来ると思ったか、ジークフリート!」


魔力糸による操作で、炎弾全てが欠き消される。そしてその衝撃で教室の窓ガラスはすべて割れる。


「あぁ、だからそれは囮だッ!!」


炎弾を弾幕とし、その間に距離を詰め、魔剣を振るう。スキールニルはすかさず魔力糸で防御をしようとするが、魔力糸ごと胴を切り裂かれてしまう。


「くっ!!」

(防御不可の魔剣。この世にある物質で切り裂けないものはないと言われる鞘なしの一振り。忘れていたよ、そのチート級の能力を。だけど_________)


スキールニルが装備する魔具『漆黒の羽織』、又は『身代わりマント』の能力が発動する。どんな即死級の攻撃を受けても二度までならマントが肩代わりしてくれる。


「彼女を庇いながら、何処まで堪えられるかな!!」


魔力糸を引き、教室の床全体を破壊する。ジークフリートは対応できず、スクルドを庇うように下の階へと落下し、身体を強く打ち付けた。


「ぐっ........大丈夫か、夜桜?」

「...............もういい、私を下ろして。」


怪我を負ったジークフリートを見てスクルドは自分を下ろすように言う。


「馬鹿言え。最後まで黙って見てろ。そして目に焼き付けるんだ。俺とあいつの喧嘩を。」


スクルドの額へとデコピンし、彼女を再び抱き抱える。


「あんた、本当に何がしたいの、」


スクルドを無視し、上の階へと目を向ける。


「ジークフリート、重荷を下ろしたらどうだ。」

「そんなことしたら重荷が壊されちまうだろ。」


自分達を見下ろすスキールニル。抱き抱えられたスクルドは重くないしと小声を漏らしていた。


「........それもそうか。じゃあ、無理矢理にでも下ろして貰うしかないッ!!」


グラム=バルムンクにて魔力糸による猛攻をなんとか防ぐ。だが、スクルドを抱えた状態では限界があった。


「ぐっ、ッ!!」

傷を負うジークフリート。だが決してスクルドに被害が及ばないように身体を張り、守っている。


「くく、はは、そうだよな、戦いってのはハンデがあった方が面白いよな......一方的じゃあつまらない。その気持ちが少しばかり分かったよ、グローア。」












「一体何が........?」


何百、いいや千に近い数のアングルボサの呪いの死骸が戦場には広がる。そしてその先を乗り越えた場所に城壁なるものが不自然に存在した。


「げっ、あんた生きてたの?」


城壁の上から苛立たしい声が聞こえる。


「.......貴方も生きてらしたのですね。てっきり世界蛇が出現した際にお亡くなりになったものばかりだと思っておりました。」

互いにメンチをきり、ふんと顔を背ける。


「「ムカつく(きますわ)!!!」」


アスラウグは黒剣の一人を宙へと浮かせ、飛び乗る。そしてミストがいるであろう城壁の上まで飛翔した。


「その方は確か.......」


ミストの隣へと飛び降りると、意識を失い倒れている人物がいた。


(..........学園でジークフリート様と御同室されていたご学友。)


何故、彼がこの場にいるのかと疑問を感じる。


「あぁ、これ?明日まで起きないよ。さっきの光柱、あんたも見えたでしょ。それが三つに分かれたんだけどさ、あんな濃度のクソ高い魔力塊が地上に落ちたら国の一つや二つは軽く地図から消えるからさ、こいつが少しでも被害をなくすためにその内の一つに全魔力注ぎ込んで覚醒技使ったらしんだけど、軌道変えるのが限界だった見たい。まぁ、そのお陰で世界樹方面の地域は無傷で済んでいる筈だけど。」


確かにあの光柱は高濃度の魔力だった。あんなものが地上に向け射出されれば、死を認識することなく国は滅ぶ。


「........それが出来る程の実力者が、城内にいると言うことですわね。」

「そう言うこと。ジークフリートは多分、単身でそいつと戦ってるよ。」


アスラウグはミストの発言を聞き、彼女の胸ぐらを掴み怒りを口にする。


「貴方ッ!!なんでそれを知って起きながら、ジークフリート様に同行しなかったのですか!!」

「離せ、陰湿女........あれの相手はジークフリート本人が対峙しなければならない相手だ。ジークフリートの目がそう語ってた......ってそこに倒れてるレギンが言ってたんだよ。」

「そんな確証もクソもない言葉でジークフリート様を危険には晒せません!。私は助太刀に向かいますわ!!」


アスラウグは即座に城へと向かおうとするが、ミストにより腕を掴まれる。


「待て待て、ジークフリートにはグラム=バルムンクも持たせてる。ジークフリートの事が本当に好きなら信じてやれっての。それと.......」


ミストはゆっくり起き上がろうとしている土塊の巨人兵の一体を指差す。


「.........ダーインスレイブって生物にか通じないんだよね。あれ、倒してくんない?一応、ルーン魔術で何とか牽制してたんだけどさ、もうすぐ魔力切れそうで困ってたんだよね。レギンの事も放って逃げる訳にもいかないしさ。」

「はぁ.......それが本音ですか。彼の顔を立てます。決して貴方の為に戦う訳ではありませんことよ。」

「ツンデレ乙」

アスラウグは黒剣を全展開し、上空へと昇る。


(千をも越える呪いの群衆、巨人兵らを従え、大国を単身で滅ぼす事が可能な魔術を行使できる怪物。覚醒能力が発動できないようにと暗黒騎士の封印能力を解かずに発動させていますが、仮に平行して覚醒能力も使えたとすると...........恐らいですわね。)


そして完全に起き上がった土塊の巨人兵へと向け降下する。


(たった三人......三人で神聖国、ヴァルハラ大国を此処まで破滅へ追い込んだ。)


ジークフリートが作り上げた世界をこうも容易く破壊してくれた。このツケは高くつく。アスラウグは黒剣の一つをルーン魔術で肥大化させ、土塊の巨人兵の核目掛け射出する。無論、巨人兵もそれを撃ち落とさんと土弾の雨を放出させてくるが、アスラウグはそれら全てを展開させていた黒剣たちで叩き落としていく。


「_______________土遊びはこれで最後でしてよ。」


そして大きな黒剣は心臓部にある巨人兵の核を貫いた。アスラウグはそれをつまらないものでも見るかのように一瞥するとそのまま城内へと向け超高速で飛翔する。ミストが何やら叫んでいたが、無視をしてそのまま突っ切る。


(わたくしの在るべき場所はジークフリート様の隣に置いて他なりません。)

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