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見てきたんだ

俺は見てきた。夜桜雅がお前の存在によって狂わされた事を。


(この身を持って知ったよ。お前の顔形、そして声色、身体に染み付いた優しさに狂わされていく.........。鴉羽三三三、お前は綺麗な花であると同時に毒なんだ。)


その花の蜜を吸ってしまったが最後、蝶達はその花から離れられなくなる。


「スキールニル、この女は正真正銘狂ってる。だけど、それを責める事はしないで欲しい。」


特に蜜を吸い続けた者程、正気から程遠くなっていく。


「じゃあ、俺にどうしろって言うんだ.........」

「そんなの分かりきった事だろ。」


そう、分かりきった話だ。


「やめろ.....その先は口にしないでくれ.......」


殺すことは簡単だろう。封印する事だって簡単だ。


「俺は廉太郎に命を捧げるって決めて_______」


だけどそれをしてしまえば輪廻は繰り返されてしまう気がする。


「______________________責任をとって結ばれろ。」


夜桜雅、幼馴染の献身的な姿を長い間見てきた。お前に見放されないように毎日とずっと努力していた。他のヒロイン達だってそうだ。頑張ってアプローチして、お前を振り向かせようと奮闘していたんだ。


(高校三年の後期は誰が選ばれても文句は言わない......なんて結束が生まれる程にヒロイン達は覚悟も決めていた。)


なのに、お前は誰一人として選ばれなかったんだ。


「だから卒業式の日に俺達全員は殺された。普通、学園ものハーレムラブコメなら、卒業するまでにヒロインを決定するものだろ?」


選択を間違えたのは鴉羽三三三、お前だ。


「俺は........俺はただっ、くっ、」


スキールニルは涙を流し、ジークフリートへと視線を向ける。


「.....お前と青春がしたかった!!ハーレムラブコメなんて俺は望んじゃいない!!初めて出来た男友達と遊びたくて何が悪い!!?そんな些細な願いも俺は願っちゃダメなのかよ!!」


スキールニルは叫ぶ。こいつの本音であり根幹だ。


「別に悪くはねぇよ。だけど、俺ばっかりにかまけて長年連れ添って来た幼馴染を蔑ろにするのはあんまりだろ?」


ジークフリートはスキールニルの肩へと手を置く。

「幼馴染とは結ばれないってジンクスがさ、どうしても俺は嫌なんだ。お前の事を一番に見ていたのは夜桜雅、彼女だろ?」


スコーネの女王スクルドは唖然とした様子で女の子座りをしていた。


(.........私は今、何を見せられている?なんだ、この状況は?)


思考が追い付かない。正攻法でずっとアプローチしてきた。だけど、ダメだった。だから殺した。そして新しい世界では曲がった形で鴉羽三三三を自分のものにしようとしていた。


「山田........廉太郎..........やめろ......」


なのになんでこいつは全部分かっているから俺に任せろと言った表情で三三三を説き伏せようとしているのか。


「俺の事で怒ってるならお門違いだ。とっととこのイカれた幼馴染と結ばれてくれ。それくらいの甲斐性はあるんだろ?」


親指を上げてこっちをチラチラと見てくる。無性に腹は立つが、それよりも身体が燃え上がるほどに恥ずかしい。


(こいつ、お前の事が好きなんだよ。付き合ってあげてくれよーって第三者から言われる何とも言えないあの気持ちを数世紀を得て味わうなんて思いもしなかった.........)


スキールニルはジークフリートの手を振り払い、魔力糸を展開する。


「ふ、ふざけるなっ!みんな殺したんだぞ、こいつは!!それにジークフリートの集めた十解も壊滅、グングニルを三発も解き放った!!救うべきじゃない、殺すべき対象だッ!!!」


ジークフリートは即座にスクルドの元へ駆け寄り、彼女に迫っていた魔力糸をグラム=バルムンクで切り裂く。


「ぼうっとしてんな、夜桜ッ!!」

「っ、私の本名を呼ばな..........何して、」


抱き抱えられるスクルド。


「魔力切れで動けねぇんだろうーが。しっかりと捕まってろ!!」

「っ、離、きゃああああああ」


身体強化による高速移動で、魔力糸の攻撃を避ける。


「ジークフリート、その女を離すんだ。お前を傷つけたくはない。」


スキールニルは怒りで冷静さを欠いていた。反対にジークフリートはただ冷静に攻撃を見極め魔力糸を避け続ける。


「そうだっ、山田廉太郎、私を離せっ!私は負けた、だから、三三三に殺されたい、それで終わりでいい!」

「終わりで言い訳ないだろーが、くそ女!!」


中高とずっと見てきた。お前がどれ程、鴉羽三三三を大切に思っていたか。そしてそんなお前が最後は誰が選ばれても文句は言わないと断言した漢気。


(..........後悔してるよ。鴉羽にお前を選ばせてやれなかった。)


もう少し、鴉羽との間を取り持ってやる事が出来たのならば違った未来になったかもしれない。


「夜桜ぁ、お前は数十世紀も生きてて好きな男が変わんねぇー異常者だ。だけど、その気持ちに嘘偽りなんてない!なら、最後まで諦めんな!世界壊してでも手にしたい男が目の前にいんだろ!!なら足掻いてでも手に入れてみせろ!!!」


自分でも何をいっているのか最早分からない。寧ろ先程まで命を掛けて戦っていた相手だというのになぜ、この女に味方をしているのだろうか。


「それして負けんてんの、私は!!!それもあんたのせいでね!!!!」


しゃべり方が当時のように戻る。


「く、ぷふ、あっはは...........」

「っ、何がおかしいのよ!」


突然笑いだしたジークフリートに対し、スクルドは怒ったように声を荒げる。


「いや、やっぱり夜桜はそっちの方がいいと思ってな。」


昔の夜空雅は落ち着いた雰囲気というよりも少し刺のある女の子だった。


「は、はぁ!?................意味、わからないんだけど.......」


困った様子の表情を見せるスクルドに苦笑を見せるジークフリート。


「グラム=バルムンクッ!!!」


魔力糸による攻撃は未だに続いている。城内を破壊しないがら、その攻撃は続く。


「ジークフリートッ、頼むから彼女を、雅を離すんだ。」


相当切れている。鴉羽三三三がここまで切れているところなど、見たことがない。


「__________それは出来ないぜ、鴉羽。」

(俺や夜桜に対しては『心眼』が使えない。あらゆる可能性、未来を持ち合わせる俺達には効果が発動しないんだ。)


聖女の時は馬鹿みたいな攻撃範囲で、未来が見えていても避けられなかった。そして転生者と言う特殊枠に対しては『心眼』には発動に至らなかった。故にスクルドに容易く捕縛されたのである。


「そうか......なら仕方ない。」


魔力糸を納め、深呼吸をするスキールニル。


「あまり手荒な真似はしたくなかったけど、俺は本気でいくよ。雅はこの場で殺さなきゃ行けない人間だ。彼女を担ぐその右腕ごと貰っていく。」

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