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切り裂く

「スクルド!!!何処に隠れている!!!」


城内を探し回るが、スクルドの姿が見当たらない。


「もういい...........この城をぶっ壊してやる」


ジークフリートはグラム=バルムンクを両手で握り、その真価を発揮する為に上段に構える。


「全てを切り裂く勇者が魔剣_____________」


そしてジークフリートは剣を一刀に振り下ろした。


「________________________グラム=バルムンクッ!!!」


空間に裂け目が出来、硝子が割れるようにパリンと大きな音を響く。そして城内の光景が一変し、魔王城のような玉座に鎮座するスクルドが歪な笑みを浮かべ待ち構えていた。


「流石は三三三のボディー。奇跡をたぐりよせる性質は健在と見える。」


スクルドの膝の上にはスキールニルが愛玩動物のように静かに座り、頭を撫でられていた。


「あの数の呪いを退け、土塊の巨人兵を打ち倒すなんて君はもしかしたら英雄なのかも知れないね。」


余裕を崩さないスクルドに魔剣を向ける。その魔剣を見た、スクルドは笑みを消し、スキールニルを丁重に退けると立ち上がる。


「グラム=バルムンク..........防御不可の切り裂き剣。」


次元斬りは次元ごと対象を切断する最強の一撃だ。グラム=バルムンクもまた同じ性質を持ち、斬れないものはないと伝承では伝えられている。大きな違いは次元斬りは覚醒能力であり、グラム=バルムンクは常時その効力を持つ事だ。


「魔力の渦潮、回転する波動__________魔力は刃となる。」


杖を異空間から取り出し、ジークフリートへと向け魔力による斬撃を解き放つ。その威力は異次元で、地割りを引き起こし、空間をねじ曲げる程の出力を持っていた。


「_______________グラム=バルムンクッ!!!!」


だが、その高出力の魔力砲は縦一閃に断ち切られる。


(その魔剣、本当にチートだなぁ..........世界蛇の四聖蛇公程度なら一撃で屠れる威力なんだけど。)


とはいえ弱点は多くある。


「なら、連続しての魔力砲はどうだろうね?」


巨大な魔力砲が再び解き放たれる。そしてジークフリートを取り囲むように魔方陣が浮かぶと、その魔方陣から同じ出力の魔力砲が放出される。逃げ場はない。全方位攻撃だ。


(連続しての高出力攻撃、それに止めどなく魔力砲を放っている。魔剣一つでは防ぎきれないよ。)


攻撃は止められはしない。跡形もなく消え去ってくれたことだろうと玉座へと戻ろうと背を向ける。


「_________がぐっ!!?」


背中を切り裂かれた。切り裂かれた?


「そうか、そうだね.............君はそれを選ぶだろうとは予測していたよ。」


全方位からの連続しての魔力砲を防ぐには七英雄が一人、魔帝が担う最強の能力『魔力制御』を使用せざるを得ない筈だ。


「だけどそれがどうした。冒険王も冒険家も他者の覚醒能力を使用できるのは一日に一度だけ。もう防ぐ術はない。」


スクルドは覚醒能力のデメリットを指摘し、再び魔方陣を展開させ、魔力砲を打ち込もうとする。


「.......誰が魔力制御を使ったって言った。」


土煙が晴れ、健在とした様子を見せるジークフリート。大きな傷を負った形跡はない。


「さっきまでの余裕はどうしたよ、夜桜雅?随分と口数が増えて来たじゃねーか。」


ジークフリートは両手でグラム=バルムンクを構える。


「私の名前............魔力制御を使っていない?何を言って..........まさか、グラム=バルムンクだけであれを防いだと言うの?あり得ない。そんな芸当、勇者や剣帝にしか出来ないわ!」

「冒険家の基礎能力は他職の真似だ。本物には程遠い精度だが、真に近付くことは出来る。」


シグルドの剣を間近で見てきたジークフリートだからこそ出来る究極の投影だ。


「............そう。」

(打てる手がない......覚醒能力を使用できれば現状を打開できるけど、アスラウグ・ロズブローグがこの場にいない以上、私は何もできない。)


アスラウグ・ロズブローグが遠隔して覚醒能力を発動しているせいか、職業適正による恩恵を得られない。


(このままルーン魔術と剣術での戦闘を続ければ遠くない未来、私は敗北する。)


千魔降臨並びに土塊の巨人兵を破られた。保険にと一流の戦士を集め結成させた傀儡戦団さえも正面から斬り伏せられた。いいや、正確にはイレギュラー達による介入のせいで計画が狂わせられたのだが。


(ノーネーム風情がしゃしゃり出てくるなよ......せっかく計画通りほぼ全ての登場人物達を盤面から排除できたってのに。)


なんで上手くいかない?


「いつもそう........私の邪魔をするのはいつだってお前だ..........」


三三三に気に入られているからか知らないが調子に乗るなよ、脇役の分際で。


「三三三の物語はハーレムものでもアクションものでも異世界ものでもない........ヒロインが一人しか存在してはいけない『幼馴染は○○しないっ!』系の主人公だ。それなのにどんどん登場人物を増やして昔のハーレムラブコメみたいになって邪魔をするんだ.......」


三三三に惚れる女が増える度に山田廉太郎が衝突が起きないように仲裁役として介入して来た。それのおかげでハーレム主人公の出来上がり。


「そして私は晴れて癇癪起こしの嫉妬深い幼馴染役に抜擢されてしまったのさ。」


三三三が他の女と話していると頬を膨らませて『三三三ぃ!』と嫉妬したように怒鳴ったり、他のヒロイン達の前で『三三三と結婚するのは幼馴染の私なんだからね!』とか先制したりするありきたりな幼馴染配役。


「限界だったよ。なんでずっと一緒にいたのにぽっと出の奴らに三三三との時間をとられないといけないの.........三三三は私の幼馴染なのにッ!!」


ジークフリートはそれを鼻で笑う。


「だから他のヒロイン達や親友ポジの俺を惨殺して、挙げ句の果てには鴉羽も殺したってか...........」


ジークフリートは足を踏み出す。


「.........夜桜一人を責めるつもりはねぇ。鴉羽にも非はある。いつまでも決めきれず濁していたからな。それに俺だってもう少し、上手く立ち回れたんじゃないかってずっと考えてた。」


進む先はスクルドではない。その遥か後ろの玉座に寝かしつけられたハーレム主人公野郎だ。


「______________そのルーンの呪縛、切り裂くぜ。」

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