ダーインスレイブの担い手
ダーインスレイヴを完璧に掌握出来るようになったミストに敵はいない。特にアングルボサの呪いたちに魔剣を防ぐ術はないのだ。
「すげぇな、あいつ..........」
千にも近いアングルボサの呪いを一瞬にして肉塊へと変えて見せるミストに驚きの表情を見せる。無論、ダーインスレイブの残酷さには目を瞑るが。
「俺、別に来なくても良かったじゃん。」
血の雨がパラパラと降り始める。レギンは魔法袋から傘を取り出し、傘を開く。そしてある場所へと向け、歩き始めた。
「..........はぁ、何でこんな事になっちまったかねぇ。」
ただの冒険者だったレギンはクリームヒルトの依頼を受ける形でヴァルハラ学園へと通い始めた。
(同い年くらいの奴らとバカして、職業適正を伸ばしてさ...........案外、悪くねぇ日々だったってのによ。)
いつから可笑しくなっちまったかねぇと心底嫌気を感じる。
「_____________よ、クリームヒルト様!」
聖女ブリュンヒルデと仲良く息を引き取る覇王クリームヒルトの姿を見て苦笑を見せる。
「死ぬときまで一緒なんて、仲がいいのやら悪いのやら.............まっ、その晴れた死に顔を見るに満足した最期だったんだろうけどさ。」
二人の遺体を丁重に運び、見晴らしのいい場所へと連れていく。
「あんな薄暗い場所で眠るなんてごめんだろ?なら、せめて世界を見渡せる場所まで俺が連れてってやるさ。」
世界蛇出現にてヴァルハラ学園は休校。神聖国による侵略にて大国は全て陥落、そして統一国家となる。そして今現在、銀狼フェンリル並びに聖女ブリュンヒルデの暴走、謎の女魔術師による反逆行為で元ヴァナヘイム領を更地へと変えてしまった。
(この短期間であまりにも多すぎる程の命が失われた.......)
世界蛇の影響で大打撃を受けた農村の復興作業、各地に蔓延るアングルボサの呪いの討伐など、冒険者として自分に出来ることはしていた。
(........まさか十解の正体がお前らだったとはつい最近までは知らなかったけどさ。)
つくづくと面白いことばかりをする奴らだよ。
「せっかくここまで来たのにな.........」
戦って、戦って、戦って、戦って......ようやく、一区切りがついて。殆どの奴が戦死しちまいやがった。
「............もったいねぇーな」
千にも及ぶアングルボサの呪い。それら全てを一掃したミストはその場に座り込む。
「カーラと最強のエイル姉が死んでほんっとうにつまらない世界になっちゃた...............なんで死んじゃうんだよ、バカ。」グス
涙を流し、赤刀を額へと当てる。
「ジークフリートの為に頑張ったのは二人なんだよ?なんで僕が生きてるのさ..............チキショウ」
神聖国とクラキ国の大戦前夜、シグルド会長に言葉を掛けられた。
『私は明日、神聖国の拠点が存在するトゥーレへと向かう。帰って来れる保証はない。私は人類最強の勇者なれど、敵は強大だ。もし帰って来なかった場合、世界樹管理の全権限を君に譲渡する。それと、もしもだが.........ジークフリートがこの先、危機に陥るようなことがあれば助けてやってはくれないか?」
「会長、言ってること結構矛盾してるの気付いてる?それ、遠回しに負けっ..........会長、まさか」
シグルド会長は笑みを見せると背を向け、歩き去ってしまった。
(...........聖女の事が本当に好きな癖に、弟が第一のブラコン野郎。)
会長にとって神聖国との戦争はエイル姉を殺すことに重きを置いていたんだと思う。ジークフリートと婚約するために会長とかわした盟約のことはエイル姉から聞いている。会長は恐らく自分で招いたジークフリートの不運(女難)の一つを取り除くために戦ったんだ。もちろん、他にも理由はあったのだろうけど、自分にはどうしてもそう見えてしまって仕方がない。
『カーラの事は本当に心が苦しい。ですが、彼女の分も私たちがジークフリート様をしっかりと支えなければなりません。ミスト、貴方は十解ではないけれど、私達の親友であり仲間だ。ジークフリート様にもしもの事があれば、どうか手を差し伸べて上げてください。』
エイル姉から最後に届いた手紙。シグルド会長と同じような遺言。血の繋がる者、恋する者として、誰もがジークフリートの事を第一にと動いていた。
「自分だってジークフリートに救われた。」
だからその気持ちは強く理解出来る。だから、自分自身の意志でこの場に来たんだ。
「だけど僕はエイル姉やシグルド会長にも死んで欲しくなかった.............カーラ、僕はこれからどうすればいいんだ........教えてくれよ........」
ミストはただ、その場で泣くことしか出来なかった。




