古のルーン魔術士
「泥水混じりの砂遊び、呼応しろ_________土塊の巨人兵」
ドワーフの操る巨人兵を彷彿とさせれる土塊の巨大ゴーレムが二体、姿を現す。
「これだけでは遊び足りないだろう。神話の魔術士の本髄をお見せしよう。」
魔方陣が天空に幾重にも出現する。
「蔓延るは古の獣、唱えるは魔性の遠吠え、平伏せよ、天を覆え___________千魔降臨」
天を覆うほどの魔方陣からアングルボサの呪いが吐き出され続ける。その中にはハティやファフニールの成体、上位種も多く含まれていた。
(............冗談だろ。)
勝ち目などない。あれ程のアングルボサの呪いを放出されて、どう対応しろと言うのか?
「数十世紀を掛けて収集した呪い達だ。召喚士の程度と比較してくれるなよ、山田廉太郎。」
二体の巨大ゴーレム、そして空を覆うほどの呪い。
「オーバーキルじゃないのか?」
それによく目を凝らせば、自分達の戦場には逃れられないように結界が何重にも施されていた。
「本気で殺しにいくとはこう言う事を言うんだ。もし仮にこの軍勢を乗り越え、我がスコーネの姫城に辿り着いたら、私がもう一度お相手して差し上げよう。」
年甲斐もなく戦いに精を出してしまったよと苦笑する。
「とは言え、冒険家にこれを乗り越えられる程の力があるとは思えないけどね。」
スクルドは巨人兵の背後に簡易的な城を創造し、場内へと優雅に歩き去ってしまった。
「七英雄であっても難しいぜ..........」
絶対絶命に近い。襲い掛かってくる呪いと対峙しながら何とか策を考える。
(あの女の戦い方は分かりやすい。アスラウグが生きているからか、絶対に覚醒能力では戦闘しないんだ。)
ルーン魔術に中心を置いた戦闘を行っている。とは言え、それすらも異次元の出力を見せている。
「ぐっ、はああああああああああ!!!!」
襲い掛かるアングルボサの呪いを必死に討滅していく。だが、全ての攻撃を捌ききれる訳ではない。特に上位種の個体は嘲笑うかのように死なない程度にちょくちょくと雑魚との戦闘の間に攻撃を放ってくるのだ。
(あぁ..........やばい...........)
全力戦闘かつ、血を流し過ぎた為に目眩がする。
「混濁の彼方、貴公は前を進む_________光の標よッ!!」
ルーン魔術を行使し、意識を覚醒させる。
「無知は毒牙、無謀は愚かと知れ______痛覚の揺らぎッ!!」
ルーン魔術による痛みの軽減化。詠唱することでルーン魔術は効力を増す。
「半分にも遠く及ばないと言うのに既に瀕死の状態だ。はぁ、死んでも死にきれねぇ.......他の誰に殺されても文句は言わねぇ。だけど、あの女にだけには殺されてたまるかよ!!!」
長剣を遥か上空にいる呪いへと向け、投擲する。剣は呪いの一体の頭へと直撃し、眉間へと深く突き刺さる。
「繋げ、飛べ、汝は虚構に足を踏み入れる_______二点一足ッ!!」
長剣に流し込んだ魔力との間に出来たパスを一瞬の内に転移する。
(は、はは...成功した、成功したぞ!!)
上位のルーン魔術である二点一足を成功させ、内心で喜びを感じるジークフリート。
「俺はまだ戦えるっ!!!」
そして、アングルボサの頭へと突き刺さった長剣を抜き取り、次の標的を絞り、剣を投擲しようと試みる。
「がぁっ!!!?」
だが翼を持つ呪い達が一斉にジークフリートへと襲い掛かり、長剣ごと右腕を咬み千切られる。
「炎帝の彩飾........飾り混ぜるは業火の色合い.........」
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!!!)
左手に持つ自槍を手放し、咬み千切られた右腕へと手を翳す。
「...............ルトの下火っ!!!」
小さな火弾が欠部を焼き、血の流れを止める。そしてそのまま落下する身体を何とか曲げることで、呪いの一体の上に着地し、副装備として常備している短剣へと素早く手を掛け、呪いの心臓を一撃の元破壊する。
「まだだ、まだ俺は死ねねぇよ.........」
銀狼の兜、そして長年愛用してきた銀鉄装備を解除し、身軽な状態にする。装甲面は格段と落ちるが機動性は上がる。
「伊達に俺は此処まで来たわけじゃねぇんだよ!!!」
ハーレム系主人公の親友ポジションだった冴えない野郎が物語を此処までねじ曲げた。好き勝手をしてスローライフ叶えようとしているんだ。
「いつまで好き勝手されてやがる、鴉羽ぁ!!!」
スコーネの姫城へと向け叫び声を上げる。そしてジークフリートは殺した呪いから飛び降り、姫城を目指すように上空から落下するのだ。
「堕天の衝撃、砕く奇跡__________我が肉体は投石となる!!!」
本来の使い方は奴隷を使った城攻めのルーン魔術である。使用すれば、その者の肉体は堅牢な鋼鉄と化し、強固な投擲破壊兵器となる。だが、解除をしたと同時に魔力は底を尽く。
(土塊の巨人兵.........っ!!)
二体の土塊の巨人兵の内の一体がジークフリートを行かせまいと拳を振るい上げる。
「邪魔すんじゃねぇ!!!!!」
だが、ジークフリートは短剣を前へと突きだし、そのまま拳へと向かい降下していく。
「うおおおぉおぉおっっっぉおおおおおおお!!!!!!!」
そして土塊の巨人兵の拳を腕ごと貫き、心臓部にあるコアごと破壊して見せた。
「ぐっ、いっ、」
(魔力が底を尽きた........)
そしてスコーネの城壁へとそのままぶつかり場内へと侵入するが、待ち構えていていたのは意思なき傀儡の戦士達であった。
「.......用意周到な奴だよ、ほんと」
ルーン魔術はもう使えない。魔力切れのせいもあり、冒険家の基礎能力も引き出せない。純粋な肉弾戦で戦わなければならないのだ。
(身体は動く...........まだ動くだろ........なら、最後の最後まで足掻け...........)
紫色のバラ一色に囲まれた庭園。前方には姫城へと侵入させまいと立ちはだかる戦士兵団。後方、そして上空全てを舞うアングルボサの呪いは殺意を全開にしていた。
「絶望的な状況こそ、冒険家を奮い立たせる。そうだろう、ジークフリート?」
短剣を強く握り締め、前進する。操られた戦士兵団と対峙し、身体に深手の傷を負っていく。だが、鋼の意思を持って短剣を振るい続ける。
「がはっ、おほ、おほ............っ、ちきしょう」
太股へと剣が突き刺さる。そして、そのまま膝をついてしまう。
「くそ、身体が.......動かねぇ........」
稼働限界を超えてしまっている。筋肉は軋み、視界は朦朧とする。それに息をするだけで心臓が締め付けられる程に辛い。
「くそ、くそ、くそぉ!!こんな中途半端なところでっ、死んでたまるかよぉ!!!」
戦士兵団に取り囲まれ、止めを刺さんと剣を振り上げていた。そして刃はジークフリートの命を刈り取らんと振り下ろされる。
「______________はぁ、見てらんねぇなジークフリート。」
だが、その刃がジークフリートに届くことはなかった。
「お前は_______________」
城壁の上から聞こえる見知った声。限界を振り絞り、何とかその声の主へと顔を向ける。
「_____________________レギン、なのか?」




