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覇王と聖女

_______________強い。これまで戦った誰よりも。


(アスラウグちゃんの能力...........くっ!!)


常時開放型でもある聖女の覚醒能力が封じられる。手動での回復、そして手持ちの魔力で戦わなければならない厄介さ、まさに聖女にとっての天敵であった。


(くそ、ヘズちゃんとの戦闘で既に余力もあまり残されてないってのにっ!!)


致命傷になる攻撃を上手く避け、何とか防戦には転じているがこのままでは負ける。


「はああああああああああああ!!!!!精進潔斎ッ!!!!!!!!」


黒剣による死角からの四方向同時攻撃。ブリュンヒルデは身体に聖光を一瞬にして纏わせる。そして纏わせた聖光は膨張すると360度全方位に爆散した。


(周囲一帯を消し飛ばす程の聖光.......覚醒能力を封じて直もこれ程の広範囲攻撃が可能なのか。)


アスラウグは黒剣に乗り、上空から様子を伺っていた。そして、息をあらげる聖女の前へと飛び降りる。


「はぁ.......はぁ........」

(やばい.....やばいやばいやばいッ!!どうする!?どうするの!!考えろ考えろ考えろ!このままじゃ本当に殺されちゃうっ!!)


聖女は詰みだ。魔力もあまり残されていない。ヘズ・バルドル辺境伯の奮闘により、ここまで削ることが出来たのである。


「聖女ブリュンヒルデ、貴方の命はここまででしてよ。」


封印術で黒騎士を上回る職業適性は存在しない。


(超速再生に等しい回復術を封じられた。そして過剰回復による人体破壊も出来ない。何より、奥の手が使えないのが痛いっ!スクルドッ!!)


聖女としての覚醒能力を封じられ、地力でアスラウグと対峙しなければならなかった。スクルドは現在、スキールニル共にジークフリートと戦闘中の為、助力を得られる事は出来ない。


「ロキさんの言う通り、不死であるならば覚醒能力ごと封印を施すまで。恐れる必要は最早不要。ようやく........ようやくこの時が来ましたわ。この手で憎き盗人の一人に天誅を下す事が出来る。この手で貴方を殺す事が出来る。」


禍々しいオーラを放ち、黒騎士は迫ってくる。


(や、やばい.......殺されちゃうッ!)


黒騎士に傷付けられた身体を軽回復術で癒し、隙を伺う。しかし、自分がつける隙など一切とない。


「く、来るなぁ!!!」

(せっかく助かった命なんだっ、こんな場所で死んでたまるかよ!)


聖女はその場から逃げ出すように走り出す。


(時間だッ、時間さえあればジーク君を強奪する好機は訪れるッ!!今は逃げて耐えっ________)


両足を黒剣で切断される。そして顔面を地面へと強く打ち付け、鼻血を出す。


「い、痛いッ!!痛いッて!!!」


覚醒能力発動時に行使できる超常的な回復はもう出来ない。そして簡易的な回復も魔力が底を尽き掛けている為に使えない。


「痛かった......苦しかった。クリームヒルト•グンテル、そしてお前の存在はわたくしの心を痛める。まるで癌だ。気持ち悪い。どうするれば心の闇は晴れるのでしょう。あぁ、簡単な話でしたわね___________」


空中に浮かぶ全ての黒剣を倒れ伏せるブリュンヒルデに集束させ、ハリネズミのように彼女の身体を貫く。


「____________そんなものは切除するに限りますわ。」


黒マントを靡かせその場を歩き去っていくアスラウグ。ヒューヒューと血を吐き出しながら呼吸をするブリュンヒルデ。


(あぁ......ダメだ。絶対に死ぬ。助からないよ.........ジーク君。)


瀕死の重症を負い、なけなしの魔力で死までの時間を伸ばしているに過ぎない。


(なんで上手くいかないんだろ...........ブリュンヒルデ、後少しだったよね。ジークくんと一緒にいたいって願いをなんでそんなに世界は否定するの........いやだ、こんな、死にかた、いやだよ..........)


カタンカタンと足音が聞こえてくる。目線だけを横に向けると赤いドレスをした見知った女がそこにはいた。



「____________『共有』する約束ではなかったのか?」



悲しみと哀れみを合わせたようなやるせない表情を見せる覇王。


(クリームヒルト.........ブリュンヒルデをそんな同情した目で見るなよっ........ブリュンヒルデだって頑張ったんだっ、でも、あいつめちゃくちゃ強くて、全然、歯が立たなかった......)


言葉を発しようと口を開くブリュンヒルデ。だが、言葉は出ず、血だけが頬を伝う。


「無理は......するな。お前は........頑張り過ぎたんだ。」


倒れるブリュンヒルデを優しく抱き締め、彼女の頭を胸へと持っていく。


「今はもう休め。お前が起きるその時まで、私がジークフリートを守っていてやる。だから、目を覚ました時、二人でジークフリートを『共有』しよう。」


慈愛に満ちた眼差しでブリュンヒルデを抱き締める。


「あ..........あぁ.........」

(...................................は?)


ブリュンヒルデはクリームヒルトの胸の中で大きく目を見開く。


(ふざけんじゃねぇよ..........ブリュンヒルデは死ぬんだよっ、てめぇと共有したくても出来ねぇっての.........)


延命に回していた全ての魔力をクリームヒルトに悟られないように右腕に全集中させる。


(一人で死ぬなんて絶対にいや.........ジークくんを他人に取られるなんてもっと嫌っ!例えそれがライバルでっ、友達のクリームヒルトでもっ!!!)


右手をゆっくりと上げ、クリームヒルトの頬へと持っていく。クリームヒルトはそれを受け入れるべく目を閉じる。


(________________一緒に来てよ、クリームヒルト)


右手は頬に向かうのではなく、クリームヒルトの首を素早く切り裂いた。


「かっ、」


クリームヒルトは首元を抑える。だが、血は止まらない。ブリュンヒルデは最後の力を振り絞り彼女を押し倒した。

(重力制御で圧殺してくれ_________)


そしてクリームヒルトへと口付けをするブリュンヒルデ。


「んっ、」

(___________________________________)


互いの血が混ざり会う。ブリュンヒルデは唇を離し、にこりとしてやったりの表情を見せるとそのままクリームヒルトの上で息絶える。


(..............貴様と言う奴は。)


クリームヒルトはどこか諦めたように空へと視線を向けた。


(ジークフリート.......どうやら、私はここまでのようだよ。この寂しがりやは冥界でも喧嘩仲間が欲しいらしい。)


ブリュンヒルデの亡骸を抱き締め、何処か安心したように目を瞑るクリームヒルト。


(もし、もしも.........過去に戻れるのならばもうあの時の過ちは犯さないよ、ジークフリート。)


愛している。愛している。誰よりも、お前を、ジークフリートを愛している。


(__________私はお前を永久に愛している。)

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