楽しい冒険だった
「____________凄いね。流石だよ、ヘズ・バルドル。ブリュンヒルデに此処までダメージを与えた。誇っていい。貴方は鋼鉄乙女の二つ名に相応しい戦乙女だ。」
仁王立ちで生き絶えるヘズ・バルドル。ブリュンヒルデは重症を負ってはいるが、徐々に聖女としての特性として再生していた。だが、確実に回復速度は開戦直後よりも数段と落ちている。
(連続しての突進。絶え間ない攻撃に身体の再生が間に合っていない。彼女がもし、覚醒奥義の先をもう一二度使えていたら、ブリュンヒルデは敗北していた。)
ブリュンヒルデはニィイと頬を釣り上げ、悪役のように意地悪い笑みを浮かべる。
「だけど、ブリュンヒルデは負けなかった。最後に立っているたのはブリュン........ふふふ、あははっは!!」
世界から受ける祝福が他の有象無象とは違うのだ。
「この世界はね、ブリュンヒルデとジークくんが結ばれる為にあるの!だからブリュンヒルデは死なないし、敗走はしない!」
最も警戒すべき難敵は一人いたが、もう死に体だ。無理に挑む必要もない。時間があの道化師を殺す事だろう。
「さて、そろそろとジークくんがいる場所へ向かおうかな。」
立ったまま生き絶えたヘズ・バルドルの遺体を蹴り飛ばし、スクルドやジークフリートがいるであろう場所へと目指し、歩き出す。
「____________________どこに行こうというのかしら?」
禍々しい魔力が背後から感じられる。
「アスラウグ・ロズブローク......ジークくんの周りをうろちょろする蝿の一人。」
「随時な物言いですわね。学園にいた頃は協定関係にありましたわよね?」
「..........先に破ったのはアスラウグちゃん、そしてクリームヒルトでしょ。」
ギロリとアスラウグを睨み付ける。
「わたくし個人は破ってはいませんことよ。ただ、貴方がジークフリート様に最も嫌悪され、十解に加えて頂けなかっただけではありませんの。」
「ムカつく言い方。自分が特別だとでもいいたいのかな?」
アスラウグは黒騎士の兜を脱ぎ捨てる。
「貴方よりは特別扱い、されてますわよ?」
クスリと挑発するように笑う。
「そっかー...........お前もヘズ・バルドルと同じ運命を辿りたいと見える。」
「____________アスラウグ、起きろ。」
見知った声により意識を取り戻す。二度目だ。アスラウグは即座に起き上がり、臨戦態勢に入る。
(..........何が、起きて!?)
周囲を見渡すと自分とグローアの周囲一キロメートルは焦土と化し、平地となっていた。寧ろ、溶けるように穴が出来ていた。天空に掛かる曇もそれに比例して範囲内は快晴である。
「がは、がはっ..........」
グローアは吐血する。そして倒れる前に抱き止める。
「............俺は.........ここまでだ...........」
グローアの身体を見れば理解できる。目の前にいる男は風前の灯火だ。身体中はボロボロで、心臓の音も弱まっている。もう助からない。
「グローアさん、貴方.........」
恐らく覚醒能力による連続使用、または聖剣レーヴァテインを己の引き出せる限界値まで引き出した。己の命を捧げて。
「.........十解としての役目は果たしたさ......くく.......」
グローアは嬉しそうに笑みを浮かべる。反転した人類最強の剣帝を倒し、重症の状態でラグナロクの再来、最後の一人を討ち取ったのだ。
「これだけの事をして見せた......姫様を守りながら、な..............まさに英雄の所業だろう........」
アスラウグは自分の不甲斐なさに涙を流す。
「.........お前がジークフリートを支えろ.......クリームヒルトや聖女じゃない........アスラウグ......聖女の元へ向かえ........お前なら............奴を倒せる」
アスラウグの肩を掴み力強く告げる。
「............楽しい冒険だった..ぜ...」
グローアから徐々に生気がなくなっていく。
「............ジーク............フリート..........」
アスラウグはグローアの死に涙を流し、強く決意する。
「聖女は必ず、わたくしの手で____________」




