外伝の主人公は暗黒騎士【壱】
新連載始めました!
『Sigurðrー狂愛物語―』-ジークフリートに狂っていく女性たちの話です。
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原作『ニーベルンゲンの災い<恋の先にある北欧伝説>』はシリーズで全二作発売されている。
第一作目は平民出出身であるブリュンヒルデが聖女に選ばれ、ヴァルハラ学園に通い、様々な攻略対象と出会いを果たし、仲を深めていく王道恋愛冒険シミュレーションゲーム。
そして第二作目は悲恋に苦しむ貴族令嬢がヴァルハラ学園に通い、新たなる出会い、恋を深め、心の傷を癒していく話である。『山田廉太郎』や『鴉羽三三三』が死んでから暫くしてスマートフォンゲームとしてリリースされたため、その存在や概要は知られていない。
そして二作品目で主人公の冠を得た人物こそが【アスラウグ・ロズブローク】、その人であった。
ロズブローグ家が長子として生まれ、家督を継ぐ運命にあった。しかし、彼女が十の歳になる頃、男児が生まれてしまった事により継承権は弟に移る事になる。
「ロズブローグ伯爵家の繁栄の為にお前がすべき事はわかっているな。」
広大な領地と軍事力を持つネーデルラント侯爵家との婚約である。簡単な話、伯爵家の為に他の大貴族に嫁げと言うことだ。
「ネーデルラント家が次期当主、シグルドとの婚姻が出来ればよかったのだが、既にワルキューレ子爵家に唾をつけられている。お前が狙いを定めるのは次男のジークリトだ。ロズブローグの名に掛けて全力で気に入られろ。手段は問わん。場はいずれ、私が設ける。」
シグルドが勇者として熟し、ネーデルラント家を継いだ時、グンテル公爵家を凌ぐ勢力となる。恐らくクラキ国で王宮に次いでの権力を持つ事になるだろう。
(だから多くの貴族はネーデルラント家にコネを作ろうと必死になった。)
伯爵家もその貴族の内の一つだった。
「やぁ、君はロズブローグ伯爵家のアスラウグ令嬢だね。こんな姿で申し訳ない。恥ずかしながら心臓の病を患っていてね。」
婚約の縁談でネーデルラント家に訪れた際、次男ジークリトの元へと案内された。そして姿を見せたのは窓から入る風に髪を靡かせた白髪の少年だった。少年は美形ではあったが、弱々しく、無理に元気に振る舞っている印象だ。
「今日は調子が良くてね。お話が出来る。」
自分と会うのが楽しみだったとジークリトは告げる。
「わたくしをそうやって口説いてもお嫁に来て上げることくらいしかできませんことよ?」
「はは、それはいい。君みたいな可愛らしいお嬢さんを妻に迎えることが出来たら僕は幸せものだ。」
照れた様子ではあるが、どこか夢物語のように語る。そして他愛もない会話を続けているとジークリトは突然、自分の目をじっと見つめ、こう言ったのだ。
「_____________君で五人目。」
五人目。憶測はつく。縁談を持ち掛けた人数だろう。
「君たちとの会話は楽しい。僕を喜ばせようと必死に話題を探し、盛り上げてくれるからね。僕の元を訪れるは基本、家族しかいないからね、新鮮で楽しいと感じてしまうよ。」
そしてどこか寂しそうに窓の外を眺める。
「僕はこんな身体だからね。外には出られない。そしてそんな僕に価値を見出だすとすればネーデルラント家とのコネだろう。悲しいとは言わない。貴族は昔からそうやって絆を結び、勢力を伸ばして来たのだからね。」
アスラウグ・ロズブローグへと再び視線を向け、問う。
「__________僕と婚姻を結んだ結果、君は何をもたらしてくれる?」
恐らくこれは自分を試すテストなのだと唾を呑み込んだ。同じように他の令嬢達にも聞いているのだろう。
「貴方様の幸せを約束します。」
だが、アスラウグ・ロズブローグは堂々とそう宣言した。ジークリトは一瞬驚いた表情を見せたが、直ぐに表情を改め、にこりと笑う。
「そんなことを言ったのは君が初めてだ..........それも即答と来た。」
アスラウグの目を覗き込み、ジークリトは言う。
「僕はこんな身体だ。子供を作る事は出来ないかもしれない。後悔をするかも知れない。それでもいいなら僕は君を選ぶ。」
「子供の有無はどちらでも構いません。それにジークリト様にお会いする前より心は決めておりました。わらくしをお選び下さいました。絶対に後悔などさせませんことよ。」
自信に満ち溢れた言葉にジークリトは吹き出してしまう。アスラウグもそれにつられ、笑みを溢した。これが、アスラウグ・ロズブローグとジークリト・ネーデルラントのファーストコンタクトである。




