剣帝vs銀狼
ディートリヒとグローアの背後には神聖国の兵たちが隊列をなし、待機する。ディートリヒは兵たちに抜刀の指示を出した。
「「神聖国に勝利を捧げよ」」
胸元に剣を当て、何時でも動き出せるように戦闘の構えを取る神聖国兵。
(よく訓練された兵士達だ。だが、この場に連れて来たのは間違えであったな。)
銀色髪の少女は短剣を抜き、常人が捉えられぬ速度で、ディートリヒへと襲いかかる。
「____________先ずは邪魔な蟻らから潰してくれようぞ、剣帝!!」
ディートリヒはその瞬足を目で追い、少女の短剣へと剣を合わせる。
(速いな........だけど、捉えきれない速さじゃない。)
ガキンッと大きな音を響かせ、火花が散る。そして刃同士が交差し、鍔迫り合いをする。
「あははっはは!そうだ!そう来なくてはなぁ!」
嬉しそうに短剣へと力を入れ、ディートリヒを圧倒する銀髪の少女。
『馬鹿な、剣帝どのが力で押しまけている......』『あの細腕の何処にそんな力が........』『討伐作戦と聞いていたが』『やはり、あれが......』『まだ確証はない。十解様方の指示を待つしかない。』
剣帝が圧倒される姿に神聖国兵らは驚きを隠せずにいた。
「君は.........人ではないね。この力、覚醒能力による力の加算ではないんだろう。素でこれ程の力を出せるとすれば、それは化物以外にあり得はしない。」
銀髪少女の短剣を受け流し、首を裂くために剣を振るう。だが、それを短剣で軽くいなす銀髪少女。
「おなごに対し化物とは酷いことを言う。これ程麗しく、保護欲を立てる少女もそうそういないでありんす。」
再び両者は剣戟を繰り返し、大地を砕く程の被害が周囲には出始める。
「だが、そんなに化物と揶揄したいのであれば見せてやろう。この銀狼フェンリルの力をッ!!!あーーーーーーーー」
自身をフェンリルと名乗りきった銀髪の少女はディートリヒと鍔迫り合いをする最中、小さな口を大きく開けた。
「ふざけて_______________________」
「ーーーーーーーーーんんッ!!!」
そしてガシッと肉を喰いちぎるように口を閉じた。
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアルウウウウ!!!
閉じたと同時に大きな衝撃がヴァナヘイム郊外を襲う。両者の戦いを近くで傍観していたグローアは周囲の惨状に、目を見開く。燃え盛る元ヴァナヘイム王都が大地を抉り取られるように消失し、ヴァナヘイム領を囲っていた多くの神聖国兵もその姿を消したのである。
「____________________やってくれたね、銀色狼。」
ディートリヒは片腕を失い、血を流していた。
「どっちが化物か........くっくく、やはり剣帝の名は伊達ではなかったな。」
そして、フェンリルと名乗った少女もまた、よろめきながら数歩、後退した。その姿は身体を大きく裂かれ、臓器を剥き出しであった。




