討伐隊
「予想通り、討伐隊を組んでヴァナヘイム領に来たんですけど。」
軍団を指揮するのは冒険王、そして剣帝。それは予測済みだ。
「やってくれたね、道化師くん.........」
(やられた.........本当に君には驚かされる。)
逃走のついでとばかりに自分達をヴァナヘイムに閉じ込めたのである。そして今しがた、世界が平常に戻り始めたのだが、ヴァナヘイム外を見渡せば神聖国兵に囲まれているではないか。
「_____________ブリュンヒルデちゃん。フェンリルちゃんを今すぐ叩き起こして。直ぐに作戦会議をしないと、私たちの敗北が確定する。」
この状況はあまり好ましくない。ヴァナヘイム領の正面にいるのは先にも説明した通り、冒険王と剣帝だ。右方に暗黒騎士率いるロズブローグ神聖国部隊。右方には聖重騎士並びにバルドル神聖国兵部隊がいる。
「えへへ........後ろにいるのはスキールニルの率いるアルフヘイム神聖国兵団だ。」
スクルドはだらしなく鼻を伸ばしながらスキールニルを凝視する。
「_____________その隣にはジークくんもいるね。」
スキールニル王の横に並び立つように此方の様子を伺う神聖国王の姿がそこにはあった。
「大丈夫、まだ彼方からは此方の姿を観測は出来ていない。」
自分達を囲むように簡易的な結界を施している。姿や気配は上手く消している。
(だけど時間の問題かな...........)
フェンリルが起床しだい、彼女を暴れさせる。
「十解以外は敵じゃない。フェンリルの『暴食』を使えば半数の神聖国兵は削れるからね。そこが狙い目になる。」
隙をつき、一番の戦闘力を誇るであろう剣帝を洗脳する。術式は既にこの時の為に用意済みだ。
「_________剣帝を使い冒険王を潰す。」
十解の中でも特に警戒すべき人物は冒険王グローアである。古のルーン(オーディンの加護)を持ち、勝利の剣(聖剣)を保有する勇者。
(チート過ぎるんだよ、この子。原作ファンは皆、熟した剣帝が最強と言っているけれど、私個人の主観では冒険王くんが一番危険なんだ。)
この世界の物語を読み返して貰えれば分かるだろうが、彼の戦績はかなり良い。主人公を気取るジークフリートなどよりも遥かに。
(彼が聖剣を完全解放した場合、私たちは確実に詰みになる。そもそも勝てない。)
あれはラグナロクを引き起こした終焉の剣だ。勝利の剣などと勇者然とした名前に改名されているが最厄の魔剣ダーインスレイヴと同質の大量殺戮兵器である。
「.............ん、此処はどこかや?」
ようやく目を覚ましたフェンリル。スクルドはヴァナヘイムの外周を指差す。
「見えるかかい。私たちの敵だ。」
フェンリルはスクルドの向ける指の方角へ視線を向けると、声を出して笑い始める。
「..........お主らといると本当に退屈せんなぁ。」
フェンリルは敵陣に紛れる何人の戦士が頂上の戦士である事を感じとる。
「強いのが何匹か混じっておるな。わっちより明確に強いのが一人正面におりんす。」
剣帝へと鋭い眼光を向けるフェンリル。
(原作で片腕無しの彼に君は瀕死の状態までされているんだよ、とは言わないでおこう。)
スクルドはフェンリルに作戦を伝える。
「フェンリルちゃん、君の役目は簡単だ。神聖国兵を暴食の権能で削ってくれ。必要ならば狼体に戻って大陸の一部分を喰い消してくれてもかまわない。その後は、恐らく冒険王、聖重騎士との戦いになる筈だ。それに勝利すれば私たちの勝利は確定する。」
「剣帝の相手はお主がするのかや?」
「彼は私たちの仲間になる。以前にも言っただろう。剣帝を洗脳すると。ルーンの術式は既に完成しているんだ。後は仕掛けるだけで堕ちる。その後はフェンリルちゃんの援護につける。」
スクルドにはスキールニルへと再び視線を戻し、手を伸ばす。
「私は洗脳を完了させたらスキールニルの元へと向かうよ。愛液が溢れるほど我慢が出来ないんだ。」
「...........汚ないんだけど、スクルド。」
ブリュンヒルデは汚いものを見る目でスクルドを見る。
「...........ブリュンヒルデちゃんにだけにはそんな反応をされたくないな。」




