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伝えなければ.....

ヴァナヘイムの異変にいち早く気付いたロキは単身してヴァナヘイムの地へと足を踏み入れていた。


(気配を完全に隠していたつもりだけど.......)


悟られた。黒髪の女魔術師。ただ者ではない。聖女と銀狼を従えている手腕からして神聖国最大の敵になることは間違えない。


(ヴァナヘイムが崩壊している現状を見るに十解の新米二人は死亡し、元「s」級冒険者も殺されたか.........)


一人では分が悪すぎる。せめて、何れかの誰かが生きていれば活路はあったかもしれないが、自分一人であの三人と戦うのは無謀過ぎる。


「ロキくぅん、生きてたんだぁ.......ほんっとうに渋いゴキブリみたいな生命力だねぇ!」


お前だけには絶対に言われたくない。そう心の中で思いつつ、離脱経路を悟られないように模索する。


「せっかく助けて上げた命を無駄にしに来たなんてね。もう、彼とのお別れの挨拶は済ませたのかい?」


女魔術師の言葉に引っ掛かる。


(この女魔術師...........何処かで見たことが...........っ、)


思い出せない。

「沈黙は金なりってことかい。まぁいい。この現状だ。私たちは君を逃す事は出来ない。此処で残念だけど、死んで貰う事になる。」


女魔術師の手が此方へと向く。


(魔力砲でも再び撃つか.......違う。あのルーン魔術は先とは違う術式。)


即座に動き出そうとするロキ。しかし、身動きが出来ない。


「っ、」

(蔦による拘束、赤髪が使っていたルーン魔術。)


即座に蔦を曲剣で叩ききるが、目の前には人間体の銀狼が口を開け待っていた。そしてその口を閉じようとした刹那_____


「________犬ごときが僕の前に立ち塞がるなッ!」


フェンリルの瞳を覗き込み幻術に堕とす。


「あぁ、そう言えばフェンリルちゃんは道化師くんの耐性がなかったね。私の落ち度だと後で謝罪しよう。」


建物の上へと飛び乗り、聖女、そして女魔術師から距離を取る。


「そこから見える光景はどうだい。ヴァナヘイムの街は綺麗に燃えているだろう。住人は皆殺し、十解は既に四人は屠っている。君を殺せば五人目になる。」

ロキは口を開かない。ただ逃走経路だけを探る。


(そうか。この短期間で既に四人も倒しているのか。それも僕達に悟られずに。)


神聖国はようやく軌道の乗ってきたところだ。それをこの女魔術は破壊しようとしている。目的は神聖国の破壊か。それとも他に目的があるのか。


(聖女が加担する理由は分かるが、銀狼が何故、人間に味方をする。)


疑問ばかりが浮かぶ。


「_____________スレイプニルの鎖を破壊し、ルーンの契約を結んだんだ。互いに攻撃は出来ない。」


女魔術士は自分の表情を読み取ったのか、そう独白をする。


「うわ、凄いね。叩いてもぜんぜん起きないよ、フェンリル。」


ブリュンヒルデはフェンリルを起こそうと頬を叩いていた。しかし、中々と起きない事に驚きの表情を見せる。


(ラグナロクの獣である以上、覚醒能力を全開で発動しなければ技には掛からない。だから暫くは目を覚まさない。)


ロキは即座にヴァナヘイムの炎を利用し姿を眩ませようとする。

(............見ている。確実にあの女魔術は自分を見ている。)


燃え盛る建物を気配を消しながら移動をしているのだが、女魔術師からの視線が消えない。聖女の「ロキぃいいい!!」と言う怒りの叫び声が聞こえるに彼女が自分を見失った事は確かであろう。


(あれ程の魔術師が大陸にまだ存在していたとは.........一体何者なんだ。僕の精神干渉が弾かれた。聖女のように聖光を纏っているわけでも、聖者のように状態異常を無効にしている訳でもない........)


トゥーレに戻り、事の報告を急がなければならない。











「何処に逃げようとヴァナヘイムの中にいる間は視えているよ。」


その為の結界だ。そして結界を抜けたとしても、外には数多の召喚獣が監視網を敷いている。直ぐに何処から出て、何処の方角に向かおうとしているのかも丸見えって訳さ。


「ロキぃいいいいいい!!!絶対に見つけて殺してやるんだからぁあああああああ!!!!」


未だに怒りを見せながら叫び声を上げるブリュンヒルデに溜め息を吐きつつ、彼女の元へと駆け寄る。


「あぁもう、いい加減に叫び終えただろう!?フェンリルちゃんを背負って行くよ、ブリュンヒルデちゃん!」

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