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戦士としての幸福

「げぇ、フェンリルの奴なにしてんのよぉ!」


目茶苦茶目立つ破壊行動に溜め息を吐く。神聖国兵や住人達が何事かと集まり始めているし、最早誤魔化しは効かないだろう。


「ちょっとちょっと、ブリュンヒルデちゃん!どうなってるの!」


スクルドがカーテンから飛び出すように空間から姿を現す。


「久々の戦いで舞い上がってるのかなぁ........蒼髪と肉弾戦しながら遊んでるっぽい?」


スクルドは頭を抑える。


「もぅ!せっかく郊外に桜髪ちゃんとの戦闘に耐えられるフィールドを構築してさぁ、かつ十解上位陣に悟られない為の結界も下準備してたのに、この街全体に結界を回しちゃったよ!!」


スクルドはイライラした様子で叫ぶ。


「それってつまり.........」


結界を旧ヴァナヘイム王都に回した。それが意味することは単純明快である。


「うん________________皆殺し。この街の人間は綺麗に一人残らず殺しますよってこと。」






「ぐぅ!!!!」

(この小さな身体の何処にこれ程のパワーがあるってンだ!!)


魔力で底上げしている訳でも、覚醒能力を使用している素振りも見せていない。


「もっと力まぬか、小僧。これではわっちが楽しめん。」


ダガーナイフを振るう。その一撃一撃は重く、合わせて受け流すだけで精一杯であった。


(この娘.......)


「s」級冒険者であった蒼髪は決して弱くない。寧ろヴァルハラでも十本の指に入る実力者だろう。赤髪に負けた理由としては油断と慢心、そして武闘大会による規制が大きく弱体化に繋がっていた為である。戦場で戦っていた場合、赤髪に覚醒能力を発動させる間もなく瞬殺出来たことだろう。


(だが、この俺が純粋な肉弾戦で防戦に回るしかない出来ないなんてな。)


フェンリルを名乗る銀髪の少女は戦士としても異次元であった。


「_____________飽きたな。」


ダガーナイフを二本、手元から離し、二振りの大剣による一撃を素手で掴む。


「なん.....だと!?」


蒼髪は一瞬驚いた表情を見せるが、即座に蹴りをフェンリルの腹部へと喰らわせる。


「軽いぞ、小僧。あぁ、いい忘れていた_________」


だが、フェンリルは一切動じず、ニヤリと嗤った。


「____________そちの仲間である赤髪はわっちが喰らった。」


こめかみに血管が浮かぶ。


「そうかよ.........ならてめぇは絶対に殺さなきゃあなぁ!!!」


そして大剣を握る手に更なる力を掛ける。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


フェンリルの手に切り傷ができ始める。


「お?お?」


わざとらしく驚いたように蒼髪を見つめるフェンリル。


「がんばれ↑ファイト↑やったね!ファイト↑強いぞ!ファイト↑えいえいおー!!!」


そして挑発をするように甘い声で応援歌を口にする。


「うるせえええええええええええぇえええええ!!!!!」


両腕を引き裂く。フェンリルは「おろ?」と嬉しそうに両腕の斬れ具合を確認するが蒼髪の次なる攻撃が顔面目掛け迫っていた。


「奥義_______________蒼天斬ッ!!!!!」


狂い回廊に続き、双大剣使いの二ある覚醒能力の一つ『蒼天斬』。斬撃が回転を生み圧倒的な貫通力と破壊力を生み出す双大剣使いの必殺の一撃。


「はぁ........はぁ......」


その一撃はフェンリルの上半身を完全に消失させ、彼女の背後にあった幾つもの建物を貫通し、破壊して見せた。


「..........人に使う技じゃねぇが、余裕なんて見せてたら死んでた。」


大剣を地面に突き刺し、荒く呼吸をする。




「奥義_____________狂い回廊。」



突如として蒼髪の視界が地面へと落ちる。


(何が起きた.......なんで俺は地面と接吻してる?それに狂い回廊は俺の覚醒能力だろ?)


疑問だけが頭に浮かぶ。


「ふむ。痛みは麻痺して感じておらんでありんすな。」


殺した筈の少女の声。そして彼女が履くブーツの音。それが近付いてくる。


「その体勢で死ぬのは.......流石に可哀想よな。」

「くっ、なにを.........」


そして優しく持ち上げられ、大岩の元まで運ばれ座らせられる。


「そら、最後くらい空を見上げ死にたかろう。」


身体を確認すると、どうやら四肢を切り落とされたらしい。


(あぁ......この出血量.........俺は死ぬな。)


痛みは感じない。血を流し過ぎたようだ。


「..............なぁ、なんで俺の覚醒技を使えた?」


そういう類いの能力なのか。


「わっちも双剣使っておるし、出来るか試して見たところ案外と出来たという話なだけじゃな。」


にっししと笑いながら軽く答えるフェンリルに蒼髪はあははと笑うことしかできなかった。


「ラグナロクの再来ってのは本当に化物........なんだな.........すぅーはぁ...........」


蒼髪は嬉しそうに空へと視線を向ける。既に日は夕暮れ時で淡淡い空。生まれ故郷であるヴァナヘイムの下で死ねる。


「............そして戦士として...........死ねる........」


家族はもうこの世にいない。恋人も親友であったものも全て冥界へと旅立っていった。


「神聖国王やグローアには悪い事をしたとは思っちゃあいる.......せっかく拾って貰った恩義を返せねぇーで俺は先に逝くんだからな..........でもよ___________」


未練は何もない。冒険者なんてものはいつ死ぬかわかったものではないのだから。それがただ、今だったって話なだけで。


「________________最後に全力で戦えた。」


蒼髪の意識が途切れる。


(それで俺は...........満足だ__________________________)


既に息はなく、満足気な表情をしながら蒼髪は死んだのである。

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