フェンリルは思う
スコーネの女王を名乗る女魔術士スクルドは奇妙な女だ。ラグナロクより生き延び、平然とこの世界で闊歩している。
(不思議な奴よ。大神オーディンを喰い殺した最凶の銀狼に畏怖を感じさせた。あの眼の奥にあるどす黒い闇は人間が内包して良いものではない。)
見たところ、オーディンの残した職業適性とやらの影響も出ていないと見える。どちらかと言えば我らラグナロクの再来に近い異質の能力を持ち合わせているのだろう。
(神代の魔術師とはここまで強大であったかと疑問には思うが.........)
この人間擬きが仲間であったことを心から安心している自分がいる。
「スレイプニルの鎖を解いた恩もある。それに不思議とスクルドや聖女と過ごす日々も悪くない。」
全てが初めての感覚だ。悪逆非道な父ロキとは違いわっちを対等な立場、肩を並べられる仲間として接してくれている。
「フェンリルちゃん、チョロすぎない?それ即堕ちヒロインだよ。もし君を解放していたのが神聖国王(主人公)だったら絶対にずっとも宣言とか凄い重い家族発言する獣耳系ヒロインになってたでしょ。」
「即堕ちヒロ?獣耳......スクルドよ、お主は何を言っておるのじゃ?わっちの知らぬ言葉ばかり話ようて。わっちにも理解できるように話なんし。」
時折このように訳の分からない言葉でわっちを馬鹿にしてくるが、そこまで悪い奴ではないことは理解している。
「簡潔に要約すると、次はフェンリルちゃんが私たちに力を見せる番だよって話。」
「絶対に違うとは思うが、まぁ良い。フェンリルの名が伊達ではないことをお主らに知らしめる良い機会だ。標的は誰だ。剣帝か?」
この牙の力を漸くこの者達に見せつける事が出来る。人間の小娘の身体の姿でいるためか、若干二人には舐められている節があるからな。
「剣帝は単身では駄目だよ、フェンリルちゃん。殺されちゃうもん。だから、あの子は私が魔術でちょいちょいして仲間に引き入れちゃいます。」
「仲間に引き入れる........?洗脳か。」
「ま、そういうことになるかな。だから、フェンリルちゃんの最初の相手は元s級冒険者の蒼髪くん。そして十解の一人であるルーンの赤鬼ことソルくんの相手をして貰います。」
二人を叩けばいいとスクルドは言う。両者共に英雄の領域に立っているという。
「この時代の英雄程度であるのでだろう。ならばわっちの敵ではありんせん。先の鍛治士や盾使いが戦闘体勢でわっちに向かってきたとしても指一つで殺せた。その程度の相手が何匹束になろうと喰らい殺してくれるわ。」
スクルドは微笑を浮かべながら、フェンリルへと後ろから抱きつく。
「おうおう、勇ましいね。フェンリルちゃんの活躍に大きく期待させて貰うよ。」
「馴れ馴れしいな、お主は。」
「そろそろ私との関係も良好だと思ってね。」
二人でじゃれついているとブリュンヒルデが戻って来た。
「__________あれ、二人ってそう言う関係なの?てっきりスクルドはスキールニル王一択だと思ってたんだけどなぁ。」
スクルドはクスリと笑い、椅子へと座る。
「もちろんスキールニル一択さ。私には彼しか見えていない。だけど、友愛と恋愛は別物だろう。君と覇王のようにね。」
「..........スクルドってちょっと怖いよね、そう言うところ。絶対にスキールニル王に引かれてると思うよ。」
「鏡を見て言えとはこう言う時に使うのだろうね。」
フェンリルは思う。この二人は似た者同士であることを。




