表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
326/381

盾使いの後悔

「________王都の復興作業もあと少し、か。」


神聖国との戦いでクラキ国は敗れ、大陸統一の為、国土を剥奪されてしまった。そして大国間の国境は取り払われ、一つの国として機能し始めていた。


(神聖国との戦争は一日にも満たない。けれど鮮烈に国民の記憶には焼き付いている。)


だが、時が立つにつれその記憶は忘れ去られて行くのだろう。



「___________戦争の傷はもう癒えたんだね。」



見知った声が後ろから掛けられる。


(この声は..........)


その声は戦争で共に戦った七英雄のものだ。彼女は道化師ロキとの戦いで死んでしまったと戦死者リストには名が載っていた。


「.............聖女殿。生きていて........下さったのですね......」


振り替えれば苦笑を浮かべた聖女が手を振っていた。


「良かった.........良かった..........」


ランドグリーズは彼女へと駆けより、聖女の手を強く握り跪く。


「何度.....後悔したことか.......何度、神に懺悔したことか.........」


涙を浮かべ、ただ聖女に対し謝罪の言葉を口にする。


「当方は道化師の操り人形となり、聖女殿に刃を振るった。敵ではなく味方に刃を向けたのだ。すまない...........心の底よりお詫び申し上げる。聖女殿を守る役目を........当方は果たせなかった。」


涙を流すランドグリーズ。ブリュンヒルデは彼女を強く抱きしめる。


「今こうしてブリュンヒルデは生きてる。だから謝らなくていいよ。」


仲間を守る筈の盾が仲間を傷付け、あまつさえ死なせてしまった。


「何も出来なかった.......当方は何も.........出来なかったのですっ..........聖女殿。」


あの頃から変わらない。ランドグリーズという女は必要とされない出来損ないなのだ。


(________没落した男爵家の次女として生を受け、ヴァルキュリアの一人であるランドグリーズの名を与えられた。)


幼少の頃、父は蒸発し、母は自殺。姉は売婦として生計を立て、自分を十四になるまで育ててくれた。


(..........けれど、実の姉も病気で他界してしまった。当方に残されたものはヴァルハラ学園への推薦状だけだった。)


天啓より授かった『パリィ』という稀少な職業適性。その職業適性のおかげでヴァルハラ学園への切符を手にしたのだ。


(もし、当方がこの職業適性を持ち合わせていなかったら...........道端での垂れ死ぬか、娼館で働いていたことだろうよ。)


学園に入園してからは努力の毎日であった。


(ろくに戦った事がない小娘は盾を手にがむしゃらに研鑽するしかないだろう?)


覚醒能力も修得し、一角の戦士には戦えるようにはなったと自信を持って言える。


「自信はついていた。ついていたんだ。だけど、世界蛇の強さに恐れをなしてしまった。クラキ国王都の宿屋で毛布にくるまる惨めな自分を許して欲しい。仲間が死んでいく恐怖を許して欲しい。」


そんな自分を引っ張り出すように聖女は宿屋に現れた。


「__________ランドグリーズちゃん!力を貸して!」

「え、なに、へ!?」


薄着のまま外へと連れ出される。恥ずかしさのあまり、きゃああと生娘のように叫んでしまったのは......忘れたい記憶だ。


「嘘だろ!?」「アルフヘイムが落ちるなんてヤバイんじゃねぇか?」「次は......俺達の番、だよな」「いや、俺達には勇者と聖女様がいるだろ!」「た、確かにっ!!」


久しぶりに外に出た。そして初めてクラキ国が危機にあることを知る。


「__________神聖国と戦うよ!」


聖女ブリュンヒルデの言葉に現実に戻される。


「と、当方は....」


戦えないと口にしようとした刹那、聖女は自分へと振り向きこう言ったんだ。


「______戦える。だってクラキ国にはランドグリーズちゃんみたいな強い戦士が必要だもん。この国を守れる盾は貴方しかいないんだよ?」


当方は必要とされている。その言葉にどれ程救われた事か。


(当方は意気揚々と先陣した訳だが........結果は国を守れず大敗した。何が盾か。何が当方の力が必要だ。当方が赴いた事で当方は当方の恩人を自ら傷付け、死へ至らしめてしまった。)


そして、現在は敵国であった神聖国の将をしている。笑える話だろう?



「聖女殿.........当方はいつも思うんだ。何故、当方はこうも無様に生きてられるのだろうと。」



聖女殿はただ何とも言えない微笑を浮かべるだけ。そして歩き去って行ってしまった。当方は呼び止めるでもなく、ただ彼女が歩き去っていく姿を目にすることしか出来なかった。



「__________そんなに死に急ぎたいなら、手伝って上げようか。」



背中に伝わる冷たい感触。そして妖艶な声が耳を突く。


「ぐふ..........誰、だ」


刺された。この当方が気配に気付けずに。そんな馬鹿な事があるか。


「感傷に浸りすぎて感覚が鈍ったようだね。まぁ、クラキ国の盾を名乗るには実力不足だったって事だよ。そもそも何故、君のような未熟者が十解を名乗っているのかも疑問だったんだ。肉壁以外に使い道がないだろうにね。それとも神聖国王に実力ではなく女として気に入られていたか......まぁ、今はどうだって良いことかな。」


麻痺毒が塗られた短剣。動けない。


「何故..........当方を狙った.....」

「何故もなにも十解という肩書き以外に君を襲う理由はないだろう。」


短剣をぐりぐりと動かす。痛みに嗚咽が漏れる。


(あぁ........当方は死ぬのだな.........)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ