演技上手
「____________旅路には気を着けな、嬢ちゃん達。最近、職を失った奴らが盗賊になりがちでな、うちらも対処にはあたっちゃあいるが全てを掃除出来る訳じゃねぇ。次の街に着いたら神聖国兵派遣所にでも行って護衛でも雇いなよ。」
『神聖国兵派遣所』は元冒険者を中心とした神聖国兵で組織された部署である。総括は十解スヴィプダグ•グローアが担当し、副総括として「蒼髪」が立場についている。
「そうさせて貰います。旅商人として護身の術を身に付けているとはいえ、限界がありますからね。」
検問を越え、ランドグリーズがいるであろう元クラキ国領へと足を踏み入れる事に成功する三人組。
「偽物ではなく本物の商人証明書......おぬし、いつも思うのじゃが用意周到でありんすな。それにわっちらの分まであると来た。」
「この時の為に準備をしてきたからね。出来る事は全部やるよ。」
今現在は休息も兼ね荷馬車で移動しているのだが、人がいない場所ではフェンリル(狼体)に騎乗し、移動している。十解殺しは時間との勝負である以上、急がなければならない。
(朝方に鍛冶士を殺害し、今は午後だ。パリィ娘なるものを今日中に始末したとなると一日に十解二名の殺害に成功した事になるな。)
恐ろしい事だ。十解はラグナロクの再来二体を封じ込め、大陸を制覇した猛者と聞いている。
(だが........隙をつけばこうも易々と葬れるものなのだな。)
フェンリルは人間の脆さについて熟考する。
「__________パリィ娘であるランドグリーズはいい盾役になると思うんだけど、傀儡にした方がいいかな?」
スクルドがそんな事を言い出す。
「うーん、やめて上げよう。流石に可哀想だよ。出来れば、戦士として戦わせて満足する形で死なせて上げたい。それか放置。だって十解として日も浅いし、神聖国で特に何をしている訳でもないしさ。」
事実、資料では元クラキ国の復興作業、そしてヴァルハラ学園再開に精を出している事くらいしか情報はなかった。
「そっか......なら傀儡にするのはやめておくよ。だけど殺さない選択はない。少しでも危険分子となる要素があるのなら芽を摘んでおくべきだ。」
スクルドの声色は冷たかった。
「...........命を摘む事は決定したな。さて、こ奴らの処遇はどうする?」
馬車を囲む武装をした集団。検問の神聖国兵が言っていた盗賊たちだろう。取り囲まれて馬車は進ませる事は出来ない
『お、いい女達じゃねぇか!』『当たりを引いたな。』『金目のもんもありそうだし、暫くは遊べそうだぜ!』『痛い目見たくなきゃ大人しくしてな。』『大丈夫、優しくしてやるからよぉ。』
定番の常套句を並べ、近付いてくる盗賊たち。
「ふぅ.......手を出すな。ここはわっちが暴れる。」
フェンリルは牙を見せ、ニィと嗤う。闘争心、破壊心を随分と抑えていたおかげで渇きが限界に近かった。
「ガルゥ♪」ザヴァ
盗賊の一人の背後に回り込み心臓を抉り出す。そして近くにいたもう一人の盗賊の口にその心臓をぶちこみ、そのまま肉体を左右に裂いた。
「........フェンリルちゃんって意外とグロテスクな戦い方するんだね。めっちゃ笑ってるし、ちょっと引くなー。」
スクルドの横で観戦するブリュンヒルデは引いた様子でフェンリルの戦闘へ目を向ける。
「そこがいいとは思わないかい。私はゾンビものが大好物だからね。こういった血肉が舞う光景は好ましいと思うよ。あぁ、ポップコーンが恋しい。」
逆に光悦とした様子でフェンリルの戦いぶりを鑑賞するスクルド。
「はぁああああああ♡」
絶頂に達したと言わんばかりに光悦とした表情を見せ、頬を紅く染める狼娘。
「何あれ!?狼耳がフェンリルから出てるんだけど!ちょー可愛いんだけどぉ!!?しかも尻尾も!!?」
「ブリュンヒルデちゃん?ちょ、なにっ、うわあああっ」
人間形態であるフェンリルの頭から狼耳が生え、お尻にはもふもふとしが大きな尻尾が突き出る。ブリュンヒルデは興奮のあまり、スクルドの肩を掴み、前後に強く振る。
「____________全然足りんせん。」
手に付いた血を振り払い賢者モードになるフェンリル。
「デザートは後にとって置いた方がいいだろう?特に新しく入った桜髪のヴァリちゃんは君好みに強いから楽しみにしているといい。」




