今後の計画
「神聖国の情勢は磐石なものとなった。平和を脅かす反抗勢力も全て撃滅した。後は治安と政治政策の見直し程度だろう。」
十解ハーラルは書類へと目を通しながら、元クラキ国の王城へと足を踏み入れる。その背後には多くの部下がハーラルの警護と称し後を付いていた。
「_________ハーラル・ホールファグレか。我が城に何の用だ。」
クリームヒルトは尊大に玉座に座り、ハーラルの来訪を迎え入れる。
「当然の訪問、すまない。近くに寄ったので顔を出そうと思ってね。」
部下達を玉間から出るように指示を出すハーラル。
「それだけではないのだろう?言って見ろ。」
ハーラルはクリームヒルトへと近付き耳打ちをする。
「___________元アルフヘイム領で聖女の姿が確認された。」
クリームヒルトはハーラルの言葉を聞き、立ち上がる。
(やはり.......あの女は生きていた。)
聖女は簡単に死ぬような玉ではない。クリームヒルトは悪女のように深い笑みを見せ歩き始める。
「ハーラル、私は奴を探しに行く。この事はジークフリートやあの道化師には伝えるな。」
クリームヒルトは自馬へと跨がり、アルフヘイム領を目指す。ハーラルはその姿を城内のバルコニーから見届けると、腰にさすダーインスレイヴを鞘から抜いた。
「__________隠れているつもりかい?」
快晴であった空は曇天となり、ハーラルに影がさす。
「噂以上だね、ハーラル殿下。」
クスクスと笑いながら姿を現す女魔術師。隣には異様な雰囲気を纏わせた銀髪の少女もいた。
「城にいた兵達はどうしたんだい?単純な戦闘力では僕を上回る神聖国兵もいた筈だ。」
城駐する神聖国兵の中には隠密を見破る程の戦士もいた筈だとハーラルは質問を投げる。
「それに答える義務はないよ、ダーインスレイヴ使い。」
スクルドは圧倒的魔力による重圧をハーラルへと浴びせる。
「ぐぐッ!!!?貴様ッ、何者だッ!!!」
(この女、普通ではないッ!)
重圧で身体が押し潰される。だが、即座にハーラルは覚醒能力を使いその場から城外へと離脱する。
(狙いはなんだ。この城に来たという事はクリームヒルトの殺害?...........いいや、違う。)
.........魔剣ダーインスレイヴの奪取か。それ以外に自分を襲う理由はない。
「ふふ、そうだね。君の考える通りダーインスレイヴが目的だよ。だけどそれ以上に君の命を奪いに来たんだ。死ぬ覚悟は出来たかい?」
背後から声が掛かる。ハーラルは即座に振り返るが首を捕まれ宙へと持ち上げられる。
「がはっ、くそっ、」
(ようやく世界が平穏になり始めたんだ!こんな場所で、危険分子を野放しにしたまま倒されてなるものかッ!!)
ダーインスレイヴを発動させようと握る手に力を入れる。しかしダーインスレイヴは一向に発動しない。
「ぐっ、があああああああああああ!!!!」
何故だと視線をダーインスレイヴへと向けると両手が抉り取られたように消失していた。
「もぐもぐ........ペッ」カランからん
首を絞める女魔術師の背後にいる銀髪の少女が咀嚼音を鳴り響かせると何かを吐き出した。
「..........僕の......ダーインスレイヴ..........」
吐き出されたのは魔剣ダーインスレイヴであった。
「うん、取れる行動はそれしかないね。」
覚醒能力の『頭髪支配』で切断部をきつく締める事で止血し、逆にスクルドの首を絞め上げる。
(この女......首をへし折る程の出力を出している筈なのに.....くっ、まだだっ.....まだ勝機がなくなった訳じゃないッ!!)
髪を伸ばし、ダーインスレイヴを回収しようと試みる。
「戯け者。それはもうお主のものではありんせん。」
銀髪の少女が手刀で髪を両断する。
「君はダーインスレイヴがなければ戦闘センスがない弱者なんだ。勇気や覚悟があろうとも仲間を犠牲にする程の精神面もないくせに無駄に足掻くなよ。」
「わっちらが姿を現した際、または気配を感じた時点でダーインスレイヴを発動させなかったお主の負けでありんす。」
ハーラルは最後の言葉を残す事も後悔を感じる時間すらもないままに両者に殺された。
「君を見ていると反吐が出るのさ、ヴェストフォルの王子。世界蛇に祖国を殺されたのは君と、君の国が弱かったからだ。他国を滅びた言い訳に使ってくれるなよ。」
五大国が冷戦状態を維持してきたツケをヴェストフォルが払っただけである。
「お主、本当に十解だけを殺すつもりなのじゃな。」
ハーラルの遺体を跡形もなく消し去った後、城を去るために二人で城内を歩いているのだが城駐する兵達は眠りにつくだけで命に別状はなかった。
「無駄な殺生はしないだけだよ。それに戦闘の痕跡も全て修復したから兵達は何が起きたのか理解しない。」
世界から消えたのはハーラル•フォールファグレだけである。そして兵達の記憶もルーン魔術で改竄し、ハーラルが城から去った疑似の記憶も植え付けた。故にクリームヒルト•グンテルが帰還したとしても疑問を抱くことはないだろう。
「私は別に平和を破壊したい訳じゃないんだよ、フェンリルちゃん。スキールニル王と死ぬまでラブラブ出来れば満足なんだ。その為には世界が混沌ではなく正常に回っていなければならない。」
故に十解以外の人間には極力手は出さないようにしている。
「だから私が死ぬまではラグナロクの再来はしないでね。三三三との愛の時間を邪魔されるのが一番イヤなの。」
スクルドの威圧に冷や汗を見せるフェンリル。
「分かっておる。お主が寿命を終え、契約が切れるまでは大人しくしているでありんす。それと顔が近い。」ぐぐぐ
スクルドの顔を手で押し返す。
「そう___________ならいいけどさ。」




